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最終選考 2



「よし!剣士の試練だな!」


会場は熱気に包まれ、剣士の試練の場は血に飢えていた。一人だけ…


「じゃあ試練は俺に一太刀でも与えれば合格!」


他のメンバーと相談もせずアレンは勝手に決め、大声で叫んだ。一次通過した冒険者達の熱気は一気に冷めた。それもそのはず、アレンは4年前の武道大会を無傷で優勝したり、王国の騎士団長とも互角に殺りあったりしている。そんな奴に一太刀なんて浴びせられるわけがない。


「え…それをするのかい?それだと合格者はゼロになっちゃうんじゃないか?」

「そうか?」


アレンは少ない脳味噌をフル活用させる。そして、何か良いことが思いついたのか手をポンとさせた


「じゃあ俺は目隠しをする!」


そう言って、服をビリっと破いて、目隠し代わりにそれを巻いた。


「じゃあ始めぇ!」


アレンは叫んだ。


それならイケると思った数人の冒険者が我先にと飛び出して行った。とても静かに。


「ん!?誰も来ないのか!?」


アレンは残念そうに項垂れた。実際はコッソリ近づいている。が、それにアレンは気づいていなかった。


「ったく、しゃーねぇな」


アレンは剣を構えた。


(囲め囲め)

(おう!)


その間にもだんだんと着実に包囲されていく。


(行くぞ!)


冒険者達は一気にアレンに詰め寄った。


が、それが仇となる。


「『斬竜巻(ハリケーン)』」


アレンは回転して、斬撃の竜巻を起こした。それは近くにいた者全員がその竜巻の餌食となった。そして、その竜巻は前方に走っていった。


「誰も攻撃してこないからこっちこらやってやったぞ!」


アレンが叫んだが、冒険者達はそれどころではなかった。アレンの斬撃の竜巻が自身の方に近づいてきているのだ。逃げようとするも怖くて、腰が抜けてる奴でさえいる。


本当、冒険者全員病院送りにする気か!俺は内心溜め息をついた。


「あ〜リル頼む」


風の神獣フェンリルが颯爽と駆けて、竜巻の前まで来る。そして、前脚に魔力を込めて『風狼爪(ウィングクロー)』を繰り出し、竜巻を相殺する。強大な力と力のぶつかり合いに衝撃波が生じた。


「ん?なんだ?」


竜巻の音が聞こえなくなったアレンは不思議がる。


その間に俺はアレンに近づいて、俺お手製のハリセンでアレンの頭をしばく。


「んなぁ!誰だ!」

「俺だよ」


俺はアレンの目隠しを取った。


「なーんだジークか、何のようだ?」

「アレンは真剣禁止、斬竜巻みたいな広範囲に迷惑がかかるの禁止、これは試験さんだからさ、オッケ〜?」


俺は持ってきておいた竹刀をアレンに手渡した。


「あ、それと、アレンとは別に君達が試練考えてね、それぞれの試練にどれか一つクリアした人が採用ってことで。あと、期待のルーキーとかいたら採用していいから」


俺は戻っきたフェンリルに乗って、次の問題の場所へと走った。









「おい、見たか?今の!絶対ジークさんだぞ!御面つけてなから素顔は分からなかったけど、あのアレンさんを普通に叩いてたぞ!」


さっき偽者だと罵られた人がただ御面を付けただけで本物だと判定される…本当にコイツラの目節穴じゃないか…?


「おいおい、アレンさん竹刀だぞ!これならイケるんじゃないか?目隠ししたままだし」

「おぉ!いこう!!」 


冒険者達はまた躍起して、アレンと対峙した。


「ん…なんとなく分かってきたぜ」


アレンが独り言のように呟いた。その瞬間姿が消えた。


そして、何かスリープの魔法でも放たれたのかと思うくらい、バッタバッタと人が倒れていく。いや、アレンだ。アレンが竹刀で頭をシバいているのだ。


「『朱雀』!」


一人の冒険者が斬りかかるが、アレンは避けるどころか、竹刀で縦の斬撃を横から薙ぎ払う。


「余裕余裕」


冒険者達は残っている者で一斉にかかるも、一太刀も浴びせることは出来ずに、遂に全員…いや一人を除いて倒れた。


「ん〜、あと一人ってとこか?」


アレンは相手が居るであろう、所に竹刀を向ける。そして、殺意を感じ取って構えを取る。


両者同時に走り出した。


「『桜吹雪』」


静かな声と共に二人が交差する。


「……クッソ」


アレンが苦い言葉を漏らした。


「……真剣抜いちゃった!!」


アレンの手には竹刀はなく、代わりにお気に入りの真剣二本を持っていた。それは、何故か。竹刀ではただでは済まないという無意識的な危険察知により、真剣で攻撃を受けたのだ。


「あぁ、もうお前合格!一太刀も浴びせられてないけどいいわ!」


アレンは悔しそうに地面を蹴って叫んだ。


「いや、まだする。目隠しを取れ」


「え…お前女なの?」


相手が発した声は確実に女性の声だった。


アレンは目隠しをとり、初めて相手を見た。


長い黒髪を後ろで縛り、黒い目、着物を着ている。立ち姿は凛としていて、敬意を表する程だった。


「東の奴か…名前は?」

「トウグウ・アヤナ」

「いいぜ、その名前覚えたぞ」


アレンは構えた。その場に緊張が走る。ーー大技が来る


しかし、それはアヤナも同様だった。鞘に手を掛け、集中する。抜刀の構えだ。


最早、起きている冒険者はいないが、二人を見守っているクザンとザルツは世紀の一戦であると確信する。


武と武の撃ち合い。たった一撃で決まる。その重々しい雰囲気が全体に伸し掛かる。


「なぁ、お前なら勝てるか?あの女」


ザルツが少し冷や汗をかいて、クザンに尋ねた。


「ザルツには無理だろうね」

「ふんっ、言ってろ」


もう二人の呼吸音が聴こえるくらい辺りが鎮まりかえる。


(あの実力……僕でも五分五分といったところかな。でも、それはアレンだって同じ…さぁ、どうなるかな)






いざ、決着の時!





「『龍戮』!」

「奥義『龍昇華』」




その光景は二つの龍が交差するようなものだった。


コンマ秒後には地面が割れ、空が割れた。衝撃波は凄まじく、寝ている冒険者は吹き飛ばされていく。



何かがくるくると回ってクザンの元に飛来してくる。それはクザンの足元に落ち刺さった。刀の刃先だった。

 

「強かったぜ」


アレンは呟いて、剣を鞘に戻した。


それと同時位にアヤナが倒れた。



()()()()()()()



「あれ…しっかり斬っちゃった」



アレンからただならぬ量の冷や汗が溢れた。





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