緊急招集
「君達に集まってもらったのは他でもない。君達にやって欲しいことがあるんだ!」
大きな部屋に円形に机が並べられた会議室。そこで俺は静かに言い放った。
この場には俺とクランで実力の高い8つのパーティーのリーダーと『ジーズラ』のメンバー、クランの幹部4人、そして仕事終えて少し機嫌の悪いシュナのの計20人が集まっている。
まず、一人ずつ紹介していこう。
俺の右隣に座っているのがアレン・バーデン。『ジーズラ』の二刀流の剣士で兎に角戦闘馬鹿。なんでも斬りたくなってしまうというもう一種の病気だ。
その隣がルナ・テルテラ。『ジーズラ』の盗賊。兎に角一匹狼で常に一人で行動。ダンジョンに潜った時は直ぐに一人で先走って、ひょっこり戻ってきて罠を伝え、またどこかに行く。
その隣がイシス・シラス。『ジーズラ』の回復士。ギャル。趣味はナースのコスプレでそのままダンジョンとかに行くことが多い。本拠地内にある医療機関の最高責任者(心配)。よく、その部下から文句が届く。
その隣はジン・ジュラモ。『ジーズラ』のタンク…なのかな?常に鋼鐵の鎧を身に纏っている。無口。……無口。あと、めっちゃイケメン。無口。
その隣がイヴ・ミレナス。『ジーズラ』の魔術師。ド派手な魔法が大好きで、超大迷惑。確かだが、俺と同様にシュナにお金を管理されている。超博打大好き。
その隣がアン・ペペロン。No.3のパーティー『笑う魔女』のリーダー。イヴを敵視しており、よく喧嘩する。イヴとは対称的でしっかり者。
その隣にクザン・ハーバード。No.2のパーティー『美天剣』のリーダー。イケメンで女子から人気絶大。なのにめっちゃ優しい。キザかと思ったらもうとても誠実で大好き。ただ、たまに「こんなに貰っても困るよ」と言って女子から貰ったお菓子を分けてくる時は死ぬ程腹が立つ。
その隣はアンティ・ペパ。幹部。クランのお菓子屋『ペパぺぱ』のパティシエ。小さいが作るお菓子は絶品。前に隣国にお菓子を買いに行くので躍起したとき、死ぬほど拗ねられた。
その隣はジル・ド・ラン。幹部。鍛冶屋の棟梁。通称おっさん。色々と面倒くさいジジィ。酒豪だが、嫁が怖くてたまにしか飲まない。
その隣はセリナ・ハナバナ。No.9のパーティー『白の癒し』のリーダー。パーティーメンバー全員が回復士という異例のパーティー。セリナはイシスの弟子だが、全くイシスを尊敬していない。
その隣はディー・アニュイ。No.5パーティー『白百合』のリーダー。言いたいことがあるだろうが先にちょっとディーの説明を。ディーは超自己中で、自分が世界一可愛いと自負している。も〜う面倒くさい。一応言っとくが可愛いのは事実だ。性格が全て台無しにしてるが…。さぁそして、問題なのがパーティー名…これを言うと怒られるのでやっぱり言わないでおこう。
その隣はカルロ・パッチ。幹部。商人の総括。よく飯を奢ってくれる。良い人。
その隣はシュルツ・ミーン。No.6パーティー『弓彗星』のリーダー。これまたパーティー全員が弓使いという特異なパーティー。いぶし銀でカッコイイ。
その隣はザルツ・ベルディア。No.4パーティー『極獄朱羅』のリーダー。餌あげようか?というとブチギレられる。野盗集団と何ら変わらず、結構残虐。確か、この集団も事務員が辞める一因だとも言ってた。ほ〜んの少しだけだそうだが…。
その隣はキリル。No.7パーティー『暗殺戮』のリーダー。真っ黒のマントを頭から被り、白黒のお面つけているというなんとも奇妙な暗殺集団。キリルの素顔を知っているのは恐らく俺とシュナくらいだろう。
その隣はリュー・スメン。No.8のパーティー『大魔獣乱』のリーダー。パーティー全員が獣人や竜人といった異種族。リューは竜人で、妹がいるのだが、滅茶苦茶溺愛している。落ち込んでるときは、だいたい妹に嫌われたとき。
そしてその隣はアンナ・ヨル。酒屋の女将。なんかババァ臭く聞こえるが、24歳。シュナの親友という点だけで幹部。結構豪快。
そしてその隣がシュナ、俺ともどってくる。全員パーティーの名前がダサイとかはあんまり言わないでくれ。
「ジークそれはなんだ!俺と決闘か!?」
アレンが喜々としてガッツポーズをする。これだから戦闘馬鹿は面倒くさい。
「うん、違うし、一生しないから」
「ちぇ」
急に冷めたアレンはつまらなさそうに椅子をガタガタとさせる。子供か!
「それでーー」
「それより、ジークなんかゲッソリしてない?」
俺の話を遮ってイヴが尋ねてきた。
「……まぁ………色々あったんだ…」
まぁ平たく言えば絞りとられたっていうのかな。シュナの方をチラリと見るが全く目を合わせない。元はと言えば君のせいだからね?
「それで、まぁ今回伝えたいことは、明日の新メンバー募集について。取り敢えず、最終選考は君達が決める。人数は全部で30人程度って言ってるけど気にしなくていいから。てことで明日は宜しく」
「おい、お前は何もしねぇのかよ」
ここで声を荒げたのはザルツだ。
「安心して、行くから」
気が向けば、だけど…。
「でも、俺ぁパスだ。面倒く…」
だんッ!
という音がザルツの言葉の途中に鳴り響いた。音源は俺の隣からだった。
「ゴチャゴチャ言わないで来なさい。決定事項だから。解散っ!」
早く帰って休みたい一心のシュナは吐き捨てるように言って、帰っていった。
取り残された俺達は誰も声を上げず、暫くの間茫然としている。一応このクランにはちょっとした暗黙のルールがある。
それは『シュナの機嫌が悪い時は全て素直に従う』だ。
「ヨーシ明日ガンバルゾー」
俺はかなり棒読みに声を上げた。
「「「オー」」」
乾いた心許ない声が会議内を駆け巡った。