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募集




「どちらにいらしてたんですか」


ここはクラン『ジーズラ団』の本拠地、ジーズラタワーの最上階、ギルドマスターの部屋だ。タワーと言ってもビルみたいな感じだ。俺はギルドマスター専用の椅子(因みにこの椅子だけでうん億する)に座って、最高級の紅茶と御菓子を食べる。


秘書のシュナが睨んでなかったらもっと美味しくいただけるんだけどな。


キラキラとした金髪のボブで瞳は大きく、口はぷるんとしていて、とても美人だと評判の彼女。真面目でとてもよく働いてくれるので、仕事よく丸投げしている。今回の新メンバー募集だって全て任せた。


「ちょっと、そこまで」

「つまりサボりってわけですね」


シュナは嫌味であるかのように大量の資料をデスクに置いた。


「なにこれ…」

「今日の資料です。どうぞ、一次通過者をお決めください」


ぺらりと一枚めくって資料に目を通す。文字が多すぎで結局何がなんなのかよく分からない。もっと簡潔に書いてくれないかな。強い、弱い、普通、とかさ。


「よし、緊急招集しよう」

「駄目です。前も隣街にお菓子を買いに行ってもらうためだけに使ったでしょ。こんなことに使ってたらいざというときに集まりませんよ」


ぐうの音も出ない。でも前の時は兎に角緊急だったんだ。俺のお気に入りのお菓子屋『甘果』で期間限定のケーキがやってるいっていうから…。それにその時俺はどうしても家から出たくない「引き籠もり病」がでたから仕方ないじゃないか。


「仕方ない。え〜どうしよ。う〜ん。よし、剣士、弓使い、タンク、盗賊、魔術師、補助魔道士、回復士だっけ?え〜それぞれS〜Cから上位30人、D〜Fから上位5人が一次通過、鍛冶職についてはおっさんが見てたから、任せる。てなわけでそれで宜しく」

「無理です」


シュナは潔くキッパリ返事した。


「え、なんで…。」

「知ってます?弓使いは威力、命中率、距離、状況判断の4項目あるんですよ。それをどうやって上位を決めるんですか?冒険者でもない私が、決められるわけないじゃないですか。だいたい、試練内容考えてくれたら後はジークさんが通過者を決めるっていってたじゃないですか」


確かにそんなこと言ってたような言ってなかったような…。


「それに、もう私10日も残業で疲れてるんですよ!」

「…あ〜なら寝室で休憩でもしてきたら…」

「今日の夕方に結果を送ると決めたの誰でしたっけ!」

 

あ…なんかそんなこと決めたな。結果はなるはやの方が良いって感じで…。


「じゃ、じゃあボーナスあげるから。これで良い?」

「あのね、ジークさん。私どれ位稼いでるか知ってます?」

「……知らにゃい」


シュナは恐ろしい目をする。


「この仕事を辞めても、一生遊んで暮らせるくらいあるんですよ!というか、今から秘書やめましょうか!?」

「待て、早まるな。それだけはまじで勘弁」


もはやこのギルドはシュナありきで運用されている。辞職でもされたら一気にギルドは破滅するだろう。


「ん、待って、そういえばなんでそんなに金あるの?」


俺の口座に振り込まれる金額は一般家庭より少し多い位だ。まぁ当然何もせずにこれだけ貰えたら十分だと思っていたけど…


「そりゃあ私がジークさんの給料と同じだからですよ」

「え…横領?」


俺の言葉にカチンときたのか、シュナは物凄い形相で、胸ぐらを掴んできた。


「そりゃあ、私は、このギルドの運営、経理、雑用、議会の出席、揉め事の鎮圧、後輩の面倒とか、全部!一人で!やってるんですよ!」

「…おう…ありがとうございます」

「それに、ジークさんの金銭管理も私がやってますし!」

「えっと…そうだっけ?」

「はいっ!ジークさんの給料の殆どの使い道は私への借金です!だからいつも貰える給料が少いんです!」

「え…借金した覚えないんだけど」


またまたカチンときたのか、血管が浮かび上がって顔を真っ赤にする。


「この椅子は!机は!というかこのタワーは!一体!誰のお金ですかね!」

「クランの経理から…」

「そんなに潤ってませんよ!ただでさえ、このビルの各階の備品を豪勢にしたんですから、経理はそれで一杯一杯です!それでいいですか!このタワーは私が半分!後は『ジーズラ』のメンバー達が綺麗に5等分です!ジークさん以外のね!それに加えてこれらの備品!これらは全部私が立替えたんですからね!分かりましたか!」

「…はい…」


もう何にも言うことはないな。感謝だけしとこう。


「あ、なら事務員もうちょい雇おうか」


これでシュナの負担も減らせる。喜んで貰えるかと思ったが反応は真反対だった。


「それを私は2年前からずっと言ってましたよね!」

「そう…だっけ」

「そうです!」

「じゃあ今から雇おう」


怒りを鎮めるように堂々と言い張った。


「無理に決まってるじゃないですか!知ってます!?ここの事務員の数!」

「100人くらい?」


会場を見て回っていたがざっとそれくらいはいるだろう。


「何馬鹿げたこと言ってるんですか!3人ですよ3人!今回のあの人達はアルバイトです!」

「は、はぁー、なるほど、なら一層雇ったほうが」

「募集はずっとかけてますよ!でも集まらないんですよ!いや、募集初期の頃は結構集まったんですけど、全員辞めていったんですよ!ここがブラックすぎるって言って!」

「そ、そんなにブラックなのか?」

「ブラックに決まってるでしょ!私ここ4ヶ月くらい休みないですし!というか家すら帰ってないですし!」

「よし、なら慰安旅行でも行くか。計画立てと…」

「誰が立てるんですか…!」


おぉ…これは全然慰安にならないな…


「兎に角!……はぁ…もうやっぱり疲れた。ジークさんベッド借ります」


今までの疲労がどっときたのか、急に休憩すると言い出した。


もう、どうぞ休んで下さい精神で頭を下げてベッドルームに促した。


シュナは流れるようにそちらへと向かって消えたと思ったら、何故かまた戻ってきて俺の腕を掴んだ。


「……?どうした?」

「ジークさんも来るんですよ」

「え…休むんじゃ…」

「英気を養うんですよ!」


そして、俺は物凄い力で引っ張られて、ベッドルームに消えていった。






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