合流3
リング・オーダー
ダンジョンの階層に一時間いると使用可能となり、使用するとその階層の全てが分かる。
罠や敵の数、魔物の種類、隠し通路などなど。
「………ん、ちょっとマズいな」
先程確認した際に、行方不明メンバーは発見出来たが、そこにS-ランクの魔物が近づいている。それも3匹。行方不明のメンバーも少しずつこちらへ動いてきているので確実といっていいほど鉢合わせるだろう。
「急ぐ?」
「あぁ、少しな」
ペースを少し上げて行くが、あと十分ほど掛かる。それまで耐えられればいいけど。
「な・・なんだと...」
隊長が言葉を漏らした。なぜなら、音のした方へ向かっている途中で魔物に出くわしたからだ。それも最悪の相手に。
キングワーム
ダンジョン内にのみ生息する極めて強力なワーム。魔法耐性が強くかつ地中に潜るので攻撃はあてにくい。鋭い無数の歯に噛まれるとたとえ金属の武器であったとしても粉々に砕かれる。弱点は腹の中から攻撃することだが、強力な胃液が内在しているため、この魔物に勝つ為には、一人を犠牲にするか、逃げるしかないとされている。
「俺がいこう」
隊長は静かに言い放った。
「だ....だめです!相手はあのキングワームですよ!」
「分かっている。だからこそだ。」
隊長はキングワ-ムに対して身構えた。
「さぁ、こいっ!」
ドガガガガッ
キングワームは一直線に突進してくるかと、思われたが、一切動いていなかった。
「.......?」
なぜ動いてこない....誰かに狙いを定めているのか、或いは怯えている?いや、待てっ!?
じゃあこの音はどこから!?
地面が大きく揺れる。
し、下からか!!
隊長はすぐにバックステップを踏んでその場から立ち退く。
「隊長!!!危ない...!」
トン
「.......なっ」
ぐしゃりと肉のひしゃげる音が響いた。右から三匹目のキングワ-ムが現れたのだ。
「う、嘘だろ........ユラン!!!」
隊長は叫んだ。あろうことか危険に気づいたユランが隊長をかばったのだ。
「す、すまない......私の為に......!!!」
「泣いてる暇はないです隊長!」
一人の男が叫んだ。
「まだ隊長にはやってもらわなきゃいけないことがあるんです!ユランはそれが分かってたから隊長をかばったんです!」
「そうです!まずは目の前の敵からやっていきましょう!」
フッ、俺もまだまだだな。こんな俺に信じてついてきてくれる奴らがいるなんてな。その期待に応えてやららねば。
「敵は三匹だ!一匹ずつやるぞ!」
「「おおっ!」」
しかし、キングワ-ムの強靱な皮膚に阻まれ、倒すどころかまともにダメージすら与えられず、犠牲が増えるばかりであった。
「隊長......コレはきついですね」
「あぁ、そうだな。今残ってるのもこれだけか?」
「こっちに来たのはそうですね」
残っているのは隊長を含め5人。しかし、ただ単に犠牲者を増やしているだけではなかった。
場所を少しずつ移動し、なんとか広く空けた場所に出ていた。これで左右の心配はなくなった。が、
「不味い!!」
五人が集まっている場所を囲んで三匹のキングワ-ムが同時に現れた。逃げ場がない!
「『炎よ、爆散せよ』」
声と共にキングワ-ムの口元に炎が爆発する。敵の攻撃がゆるんだ隙に、数人で五人を救助する。
「お前達っ!」
やってきたのは置いてきたメンバーたちだ。
「コルン殿ケビン殿、怪我はもう大丈夫なのか」
「あぁ、といっても万全ってわけじゃないが」
「私は大丈夫」
「それでもありがたい」
隊長はキングワームを見上げた。先ほどのコルンの魔法を食らってもまだ無傷のようだ。
「魔法障壁ね」
コルンはキングワ-ムを睨み付けた。
「『バースト』」
後方から鋭い矢が放たれる。それは一匹のキングワームに直撃し、強靱な皮膚に刺さった。が、大して効いていないようだ。
「嘘......」
スズネの矢でさえ致命傷になり得なかったのだ。今回は不意打ちで放てたが、次はきっと当たらないだろう。
「厄介ね」
キリルを負ぶったシュナも苦い顔をする。
キングワ-ムは再び地面に潜った。
「来るぞ!」
一匹はケビンの元へ、もう一匹はスズネ達の元へ
「『輝一字斬り』」
「『朱雀』!」
「おりゃあっ!」
ケビンは一人で、スズネの元にやってきたのは、アキトとシズカが、どちらも正面から受け止めようとするが、あまりの力に攻撃を受け流して、左右に転がりながら避けた。
「あれ、もう一匹は......」
コルンが周りを見渡す、そしてすぐに異変に気づいた。
「貴方たち!!そこにもう一匹いる!」
叫んだと同時にキングワームがスズネの目の前に現れた。
「あ.......ぁ」
スズネとユーリは腰を抜かしてしまい、戦意を失ってしまっている。
「仕方ないわね」
シュナがスズネ達とキングワームの間に割って入った。
「あ.....だめぇ....」
キングワームがシュナめがけて襲う。
「これだけはあんまり使いたくなかったんだけどね」
シュナはネックレスに触れて、キングワ-ムを見ーーー。
「どーーーーーん」
ーーーーた瞬間にキングワ-ムの巨体が宙に舞った。
「危なかったね!」
たった一振りでキングワ-ムを仕留めたのは他でもない
馬鹿力回復士イシスであった。