ようやく地上
「さてと、」
ダンジョンの外に出るともう辺りは暗くなっており、月明かりが照らしていた。
4日というあの暗い空間でずっと耐えていた俺にとってはそれでも眩しいくらいだ。
本当は戻ってエンシェントドラゴンと話でもして暇つぶししようかと考えたが、何分あんだけ触るなって言われていた神様を触ってしまったものだから、殺されるかもしれないと思ってしぶしぶやめておいたのだ。
「ドライ、ちょっときてくれ」
俺は何もないところに呼び掛けた。
「はい、何でしょう」
すると木からにゅるっとドライが現れた。ドライは木のある場所では自由に行き来することができるのだ。
「シュナとか帰ってるか見てきてくれるか」
「分かりました」
すぐにドライは消え、またちょっとすると戻ってきた。
「主様。シュナ様達はまだ帰っていないご様子です」
「……まじか」
正直もうとっくに帰っているものだと思っていたので驚いている。
もしかして、殺られた…?
いや、それはないはずだ。
あのキリルがいる。あいつが負けるなんてあり得ない。いや…もしかして……流石にないよな…でも次ってそろそろか?……まぁ大丈夫だろ…
「……どうしよう」
だからといって俺がどうにかできる問題ではない。はっきり言ってドライに頼んで誰か他の冒険者を連れてきて欲しいけど、主様なら一人でも大丈夫ですよねとか言われそうでちょっと怖い。一人でなんかでいったら、まず一階層で死んじゃうって。
あーあ、こんな時に丁度よく助けてくれるヒーローなんかいないかな。誰でもいいから来てくれ!神様お願い!
「ーーーーあれ?」
俺はまさかの突然の声に振り向いた。神様もしかして!
そこには
「ジークじゃん」
「ありゃ〜遅かったか〜」
『ジーズラ』のメンバーが揃っていた。
「お前ら……」
何で『ジーズラ』が…いや、そんなことより、神様
俺が願ってたのはコイツらではありません!!
誰でもいいとは言ったけど、これはないわ〜〜
「あーあ、で、なんでお前らが来たんだ?」
俺はちょっと呆れ顔で尋ねた。
「えぇ?そりゃあジークが久しぶりにダンジョン攻略してるっていうからに決まってるじゃん」
別に決まってませんけどー?
「そうか」
「でも遅かったんだよね〜」
「ん?あぁ、そうか」
俺がもう地上に戻ってきているから、もう終わったんだと思ったのか。
「いや、ちょっとな。もう一回行くことにしたから一緒に行こうぜ」
「お?いいのか?」
アレンが嬉しそうに剣を振り回す。危ないから本当にやめて欲しい。
「あぁ、シュナ達が行方不明でな」
「へ〜シュナが」
イシスがニンマリと笑った。イシスは結構シュナの事を敵対視することがあるからちょっと不安だ。
「ねね、早く行こー!早く私の魔法ぶっ放したい!」
イヴがもう杖に魔力を溜め込む。暴発しないと思うけど怖いからやめて欲しい。
「………」
ジンは何か喋ってほしい。それで、ルナは先一人で行こうとしないでほしい。あ〜もう!このパーティ面倒くさい!!
「ほら、行くぞ」
「うっしゃっー!」
「フフフッ」
「おりゃあーー!」
「…………」
「…………はぁ」
こうして俺はもう一度ダンジョンに戻ることになったのだ。ただ俺はやはりミスを犯してしまったのだ。あの時シュナ達を助けに行っといてと言うべきだったのだ。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は盛大に溜め息を吐いた。
現在3階層。ダンジョンに入って二日目の夜に差し掛かっていた。調査団のペースだと一日で7階層まで行けていたのだから正直遅すぎる。
理由はまず情報伝達の無さだ。ルナが基本、罠の居場所を調べる所謂盗賊の働きをするのだが、なにせどこに罠があるか教えてくれない。
さっきだってこんなことがあった。
「おい、ルナ。罠は大丈夫なのか?」
俺は全く罠にかからなかったので逆に不安になって尋ねた。
「…今のところジークの足元だけ」
カチッ
「ーーーえ?」
踏んだ足が少し沈んで瞬時に横から槍が突き刺してくる。それを何食わぬ顔で、アレンとルナが斬り刻んだ。
「おい、もうちょーーー」
「くっそーー!こんな罠つまんねぇ!」
俺が早く言わないルナを注意しようとしたがアレンが妙な事を叫んだ。いや、妙な事を言うってことは正常っていう証なんだけどね。
実はアレンはめっちゃ罠が好きなのだ。罠が好きとか変態だって?もちろん彼はぶっ飛んでる。修行だとかなんとか言ってわざと罠を踏んでいくので、本当に面倒くさい。
本当はイヴやイシスも昔罠とか大好きだったのだが、ある罠に酷い目にあってから全く興味を示さなくなった。あの罠だけは色々と感謝しかない。
(なぁ、ルナ。アレンにバレれると面倒くさいから俺だけに罠の場所を教えてくれ)
「分かった。これとこれとーー」
ルナはすぐに壁の何かを押したりや床を踏んづけ全ての罠を起動させる。
(だぁーー!!!作動させろってことじゃねぇよ!!)
結局全ての罠を作動させて来ているため大幅な時間ロスだったのだ。
やはりもう少し早く行きたい。一応これでもシュナ達のことが心配なのだ。死んでいることはないだろうが、かなりピンチのはずだ。
食料は基本一週間分以上持っていっているはずなのでそこは大丈夫だと思うが、精神的そろそろきている頃だろう。
晩飯は焚き火を囲んで魚を焼く。
普通ダンジョンではこんなことしないのだが、コイツらが持ってきたものは何故かたくさん取れたからという理由で魚だったのだ。
ダンジョンでの休憩スポットは普通安全なコアルームでするのだが俺達は休むと思った場所でする。
しかし、特に夜の見張りもせずに全員寝てしまう。
危険じゃないのかと訊かれたらめっちゃ危険と答えるが、コイツらにとっては危険がやってきたら起きれると分かっているからこんなことができるのだ。
「よーし、久しぶりにパーティーでダンジョン攻略だからなんか話そう!」
アレンが大声で叫ぶ。魔物が寄ってきそうなので本当にやめて欲しい。あと、ダンジョン攻略じゃなくて、シュナ達の救助だから。
「なんの話するの?」
「うーん、そうだな…うーむ…」
「じゃあ恋バナしよう♪」
アレンが唸っているとイシスが割り込んで提案した。
「おお、いいな!」
アレンは快く答えるが、いいのか?お前絶対話すことないだろ。てか、こっちだってあんまり話したくないし、普通に嫌だ。
「じゃあまずはジークからな」
アレンは俺を指差した。
ーーーーーーーまじかよ