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行方




「……ッ!本当だ…いない!まさか…」


隊長は慌てて来た道を戻ろうとする。が、他の人に抑えられる。


「今行って魔物にでも見つかったらどうするんですか!」

「それにあなたが行っても犠牲が増えるだけです!」

「……ぅグッ…クソっ!」


隊長は地面に拳を擦り付けた。


「ジークさん…無事なのかな」


アキトがポツリと呟いた。


「クランマスターだから大丈夫だと思うが…」

「う、うん…」


だんだん周りの雰囲気も悪くなっていく。一人死んだかもしれないという恐ろしさが全体を覆ってしまう。


「大丈夫よ」


シュナがポンッと肩を叩いた。


「ジークさんがあの程度で死ぬわけないからね」


シュナは優しい口調で言った。そこへ、キリルが戻ってきた。


「どうだった?」


誰にも聴かれないように小さな声で話す。


「……ジークの気配がない。」

「……そう」


キリルの御面の下がどのような表情をしているかは分からないが、きっとしょんぼりしているのだろう。正直、キリルでさえ居場所が分からないのであれば本当に、どこにいるか、生きているのかさへ分からない。


(……ッチ、どこいったのよジークさんは!)











「ーーーーッイテテテ」


俺は打った尻を摩りながら起き上がる。


「どこだ?ここは」


周りを見渡すが全く分からない。ただ、一つ理解出来るのは眼の前には巨大な扉があるってことだ。


そして、何故俺がこんなところにいるのかは、少し時間を遡らなければならない。



あれはコアルームで九階から十階に行ったその後からの話だ。


俺はいつも通り真っ先に逃げられるように一番後ろでゆっくりついていっていた。


そして、事件は直ぐに起こった。


皆が少し緊張もほぐれてきて、談笑も弾んできた頃に


カチッ



という音と共に自分の足が少し沈んだ。俺は咄嗟に理解した。


やっちゃったと。


ただ、幸いなことにも即死の罠ではなくただの落とし穴であった。


俺は叫ぶこともなく、絶望しながらただただ静かに落ちた。多分誰も気づいていないだろう。


落とし穴は予想よりも深かった。というか深過ぎた。


かなりの時間浮遊しており、俺は色々思いを馳せた。


もっとここに罠あるよ~とか言ってほしかった。多分言ってたんだろうけど、俺には伝わっていない。


それ以外は…特にないか。


俺は左手の小指のリングつまむ。これは風のリングだ。攻撃を与えるほど威力はないが、こういう時は役立つ。落下の衝撃を和らげてくれるんだ。


そして、急に開けて明るくなったところで俺は尻を強打した。


よし、回想はここで終了と。


でだ、今はここからどうするかだ。


俺はもう一度眼の前の扉を見た。


多分ここを抜ければコアルームがあるはずだ。そこまで行ければ俺は無事帰還できる、はず。


ただ、問題はここに階層主がいるかどうかである。だいたい、強い階層主は区切りが良いところにいる。たとへば10階層なら5階層とか。このダンジョンは100階層だから多分10階層ごとだろうな。


そこでだ、もう一つ階層主がいるかどうかを見分けるまぁ、なんというか長年の勘というかその…取り敢えず扉が豪華かどうかだ。


そして、今回のは……





めっちゃ豪華。うん、絶対いる気がする〜。


いや、待てよ。最近出来たんだからボスがまだいませんとかないかな。無理だよな。


そう言いながらも俺は扉に手を掛けた。


なぜならこっちの方が俺にとっては安全である可能性が高いからだ。


階層主の中にはガーディアンみたいなのもおり、近づくまで動かないのもいる。対して、外では徘徊している魔物がいてそれに見つかれば俺は即殺されてしまう。それなら入った方が良い。


(どうか…でませんように)


俺は祈るように扉を開けた。


扉の向こうには神秘的な光景が広がっていた。薄暗いようで、光る苔が辺りを照らしている。


そして、中央には純白に輝く一匹のドラゴンが眠っていた。


(………古代竜(エンシェントドラゴン)


俺は息を呑んだ。個体ランク不明。かつて、世界を滅ぼしたとも、世界が滅ぼされるのを救ったという対極的な伝説をもつドラゴン。


こんなやつがいるなんてこのダンジョンヤバくないか…。


しかし、やはり幸いなことに眠っている。コアルームは…分からん。多分あのドラゴンの後ろだろう。


俺は意を決してゆっくり前進する。


音を立てるな。音を立てるな。起きたら死だぞ。落ち着け、落ち着け。


気が付いた頃には俺はエンシェントドラゴンの後ろに立っていた。


おっしゃっー!ナイス俺!


俺はなおも慎重に前に進んだ。そして、また扉が見えた。


(コアルームだ)


俺は歓喜しそうになるがぐっと堪える。いらないことをしたら全て台無しだ。


俺は慎重にドアに手を掛けた。


後は一瞬だ。一瞬でドアの内に入ったら俺の勝ちだ。


「ふぅ〜〜」


俺は呼吸を整えた。


(いくぞ!)


俺は引手に力を入れーーー


ガンッ!!



鈍い音が響き渡った。


「アハハハー、そりゃ鍵かかってるよね…」


階層主も倒していないのに次の階層に行けるわけない。あーあ、どうしよう。


俺はゆっくりと振り返った。


エンシェントドラゴンはーーー


しっかり起きて俺を見つめていた。





ジーク死亡












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