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調査団の決起は終わり、ようやくダンジョンの調査に向かった。


場所はレベル1(五段階評価)つまり新人など軽く行ける場所にあった。


「で、でけぇーっ!」


ケビンはダンジョンの扉に思わず感嘆を漏らした。


ダンジョンはまず扉が待ち構えている。洞窟であったり、いつ建てられたか分からない塔の最上階など至るところに扉は存在する。


しかし、今回のような10m以上の高さと禍禍しい雰囲気をもたらす扉はまだ確認されていない。こんな初心者向けの場所に出来ているのだからきっと新しく出来たのであろう。


「みな、心してかかれ」


隊長はゆっくりと扉を開けた。


中は別に至って普通であった。罠も一般的なものばかりで、大した脅威でもない。


「今のところレベル1といったところか」


ダンジョンは十段階評価である。レベル1~3は初心者が攻略する程度だ。


「敵がいるな。気をつけろ」


索敵の人が呼びかける。直ぐに敵が現れた。緑肌の細った身体つきのゴブリンだ。


それらは一瞬で葬り去って、俺達は先に進んだ。


「コアルームか」


隊長が扉の前で呟いた。


コアルームとはダンジョンのいわばセーブポイントのようなところである。ここから次の階層までいけ、次の階層のコアルームからここに帰って来ることが出来る。ただし、一度攻略でもしない限り浅い階層から離れた深い階層へ行くことは出来ない。そして、だいたいコアルー厶の前には階層主がいることが多い。


「よし、『探索』を使え」


隊長の命令の下、調査団のメンバーが呪文を唱えた。


『探索』この魔法はコアルームで使える魔法で、このダンジョンの階層が分かるものだ。


「は……っは……はっ…分かりました…が、」

「どうした?」

「いえ、この…階層……100…まであります」

「なんだと!?間違いではないのか!?」

「はい」


階層100階か。普通ダンジョンの平均は3くらい、多くても10だ。これは確かに異常だ。


「ふむ、となると次の階層が気になるな。皆良いだろうか?」


はい、絶対に嫌です。という願いは虚しくも敗れ、次の階層へと進むことになった。しかし、次の階層もどうってことはなく難なくクリアできた。そして、十階層で問題が起きた。


「……気をつけろ、さっきまでとは雰囲気が異なる」


隊長は愚か、その他のメンバーでさえ緊張が走り渡った。先程までとは打って変わって禍々しい雰囲気がひしめき合っている。それを俺以外感じ取っているようだ。


(……ただちょっと暗いとしかわからんけど…)


まぁ、ちょっと警戒しておくか。取り敢えず退路確認!


「進むぞ」


幸いなことなのだろうか、一匹の魔物と出逢わずに少しひらげた場所にでた。


コアルームの前の階層主エリアではなさそうだ。


「……気をつけろ!来るぞ!」


索敵に引っ掛かったのか一人が叫んだ。同時に魔物がウジャウジャと湧き出てきた。


「か、囲まれた…」


ここは罠であったのだろうか。あっという間に俺達は魔物で囲まれてしまっていた。


(え…やばくね)


「戦闘態勢!取り敢えず先程のコアルームまで戻るぞ!」


作戦はあくまでも退却だ。隊長が叫んだのと同時位に狼の魔物が突っかかってきた。


「へっ、こりゃ、ちとやべぇな」


ケビンが大剣を振るって、全てを薙ぎ払った。


「助かる」

「あぁ、俺が退路を開く!他は援護!戦えないやつは内に!」


ケビンは退路方向に大剣を振るって魔物達を一掃していく。


「『フレア』」


周囲から襲ってくる魔物相手にはコルンの魔法で一掃する。


「流石は『レッドキャット』と『ブルードッグ』のでも期待の者達だ。強さのレベルが違う。これならいける!」


周りもケビンやコルンの力に勇気が湧いたのか躍起になって戦っている。


「……っち、簡単な相手だけじゃないよな」


順調に進んでいたケビンだが、途中で足を止めた。


眼の前には巨大な身体を持つ大鬼(オーガ)がいた。オーガは個体ランクBであるため、Aランクのケビンにとっては簡単な相手である。しかし、周りには雑魚といってもCランク級の魔物もいるため、凄まじいパワーを交わしながら、他も交わしながらはケビン出会ったってきつい。でもそれはケビンだけならの話である。


「『フレアショット』」


炎の魔法がオーガ以外の魔物を正確に消していく。あとは簡単に倒せる。ケビンはサクッとオーガの首を刎ね倒した。


「サンキュー」

「ん、そいつ任せた」


コルンは真っ直ぐ指差した。その先には先程のオーガより二周りほど大きいオーガの上位種オーガキングがいた。個体ランクはA。まず、普通はAランク及びSランクの冒険者がパーティーを組んで倒す相手だ。


「おおう…まぁ、任されたから仕方ねぇか」


ケビンはオーガキングに狙いを定め力を溜める。大剣は光輝いていく。周りの雑魚は全てコルンが捌き、ほとんどオーガキングと差しの状態にある。


「へっ、いくぜ『輝ー字(ジャスティス)斬り』!」


光の魔法を剣に纏い、さらに身体強化を使って筋力をも上げた一撃はオーガキングを真っ二つにした。


「す、すげぇ」


戦っている連中も思わず見惚れてしまうほどそれは凄い光景だった。個体ランクAを一人で倒すということはもはやケビンの実力はS級に届いているのかもしれない。


「へへっ、どんなもんだ!」

「ケビンッ!」


コルンが叫んだ。


「うん?…ッ!…あぁッグ!」


油断していたケビンは何者かの攻撃をまともに喰らってしまう。


「っち、油断した…」


よろけながらダメージを食らった左腕をおさえる。


「ケビンっ!後ろ!」

「ッんな!」


ケビンは直ぐに避けるものの、攻撃をまたもや喰らってしまう。


「クハッ……!」


ケビンはまた吹き飛ばされて起き上がらない。


「ケビンッ!ねぇ起きて!ケビンっ!」



コルンは叫ぶがあろうことかケビンそのまま気絶してしまっていた。


「おいおいなんだよあの魔物」


ケビンを攻撃したのは二足立ちをした狼だった。その名もフェルリル。個体ランクは脅威のS。フェンリルの弟分のようで素早さを活かした攻撃は死しか感じ取れない。


「ケビンッ!」


コルンは倒れたケビンの元へ駆け寄るがーー


「ーーーえ?」


途中、矢がコルンの腹部を貫通する。


直ぐ様確認をすると、そこにはソウルガイヤが弓を構えて待ち構えていた。ソウルガイヤの個体ランクはA。脆く倒しやすいものの、ソウルガイヤの持つ高い殺傷能力は多くの冒険者を葬ってきた。上級冒険者の死因の多くはソウルガイヤ系によるものが多い。


「コルンさん!」


誰かが叫んだのと同時にソウルガイヤからもう一発の矢が放たれた。


「あ…、や……」


コルンは手に力が入らず、魔法を放てない。


「………あ」


ーーーーーー死。




スパッ




「………セーフ」


先程まで余り目立たなかった、白黒の御面、つまりキリルがその矢を防いだのだ。


「あ…りがと…」

「……話さない方が良い」


キリルはコルンとケビンを担いた。


「……お前、後ろ行く」


キリルは隊長に向けて言葉を放った。


「…え?それはどういう…?」

「……いいから」


キリルはそう言って、後方、つまり、退路とは逆の方に進んで行く。


隊長は意味が分からなかったが、ここは冒険者を信じるしかなく


「全体!進路変更!後方に進む!」


直ぐ様号令を出した。


しかし、これは強力な魔物に背を向ける行為であって、とてつもなく危険であった。


(し、死ぬのか!?俺はここで!)


隊長は位置的に殿を務める場所である。昔はAランク一歩手前の冒険者であった。しかし、それではソウルガイヤやフェルリルには当然敵わない。むしろ一撃でしんでしまう。


ヒュッ、という音が後方から聞こえた。その瞬間死を意識した。


足が急に止まった。もう死ぬのだ。


「……何してる?早く走る」

「……えぇ?」


キリルはいつの間にか隊長の後ろを走っていて、矢を斬っていたのだ。


「……済まない、ありがとう」


隊長は涙を流した。ここで挫けてはいけないのだ。


「先頭はどうなってるんだ!大丈夫なのか!」



「………『バースト』」


溜めていたスズネの矢が放たれ、前方の的が一掃される。


「ナイス!ここを抜けるまでもう少し!」


先頭の敵はそこまで強くはなかった。キリルが、ほとんどを駆逐していたこともあるが、後方にいた強力な魔物がいなかったのだ。


「それにしても、凄いな、キリルさん。こんな時のためにこっちを攻撃していたなんて」


そう、キリルは後方(退路方面)に強力な魔物がいることに気づいていて、より弱い前方を攻撃していたのだ。


一同はそのまま大量の魔物の渦からようやく抜け出すことができた。


そして、そのまま走っていき、キリルのお陰もあったのか、魔物を撒くことに成功した。





「ふぇ〜〜疲れた」


一同は腰を降ろし体を休めた。絶体絶命のピンチから生きていたのだ。


「皆揃っているか」


隊長は周りを見渡した。幸いなことに怪我をした者は多くいるが全員揃っている。治癒師が重症者から順に治療していき、一番怪我が酷かったケビンもなんとか一命を取りとめた。


「良かった…」


隊長はマジックバッグから食料を取り出し配り出す。


一人一人に配り終えたが、二つだけ余ってしまった。一つは見回りに行っているキリルの分だが…


「ん?誰かもらってない者はいないか?」


「………あれ?」


不意にシュナが言葉を漏らした。







「ジークさんがいない」








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