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いきなり面倒事



「ジークさん。ちょっといいですか?」

「ん?」


ゆったりと平和な朝。いつも通りシュナと朝食を取っている。こんな生活がいつまでも続けばいいのに。


「先程ギルドから連絡があって、新しいダンジョンが発見されたそうです」

「ふ〜ん」

「それで調査団を派遣するから高レベルの冒険者を数名よこせと」

「へぇ〜。で、なんでそれを俺に?」


いつもそういうことは勝手にシュナがやってくれている。今回も適当に見繕ってやってくれると思いきやどうやら違うらしい。


俺は久しぶりに浅蜊を入れた味噌汁を飲む。出しが効いててとても旨い。


「ジークさん行ってくれませんか?」

「ブーーッ!!」


せっかくの浅蜊の味噌汁が吹き出た。


「ゴホッゴホッ、え、なんだって?」

「だからこの調査団、ジークさんに行って貰いたいんですよ」

「いや、いるだろ他にも」


『美天剣』とか、なんなら『ジーズラ団』とかでもいるだろ。昨日いたんだし。


「まず、ジークさんが考えているそのへんの人達はいませんよ。無理に戻らせたんですから昨日からもう出てます。」

「まじ〜?」


確かに最終選考のためにちょっと前から招集はした。まさかそれがダンジョン攻略の途中だったとは…悪いことしたな。


「それで?他全員も?」

「残っているのは『極獄修羅』だけですが…これは、面倒事しか起こさないので来るなと言われてます」

「うそ〜ん」


もうアイツらだるいし首にしようかな。正直迷惑しか掛けてないし…


「他は…?」

「もう残りは新人か、ランク的に厳しい面々のみです」

「………よし、無視しよう」


ギルドから依頼が来ていたなんて知りませんでした〜といって逃げよう


「そうなると、害虫駆除が回ってきますよ」

「うぐっ…」


害虫駆除とは、超絶面倒な依頼+報酬が少ない、いわば余り物のクエストである。しかも、ペナルティには余りに余った全てのクエストをそのクランがしなければならなくなるのだ。


「どうせなら新人を連れて行ってきてくださいよ」

「……あのな、今リル達もいないんだよ」


アイツら昨日が終わったら直ぐに修行だのなんだの言って何処かへ消えやがった。ドライだけは呼び出せばすぐ来れるのだが、特性的にダンジョンには向いていないのであまり意味がない。


「……ひとついいか?」

「はい?」

「『暗殺勠』っているか?」

「………」


シュナはしれっと目を逸らした。


「その反応!いるんだな!いるんだな!よしっ!」

「駄目です!あんな殺人集団普通に駄目です!指名手配とかもいるんですよ!」

「いや、大丈夫大丈夫」


シュナは『暗殺勠』を毛嫌いする傾向がある。特にリーダーとかよく敵視?睨みつけている。


「あんまり差別とか良くないぞ」

「そ、そんなんじゃないですから!」


俺は指をパチンと鳴らした。


数秒後、白黒の笑っている御面が現れた。


「お?キリルだけか?」

「チッ」


シュナの顔が一気に不機嫌になった。


「……そうかも」

「まぁ、キリル一人で十分過ぎるからな。良かった居てくれて」

「……そう」


よし、じゃあ新ダンジョン行くか〜〜!











「ーーーで、なんでシュナまで来るんだよ」

「いいじゃないですか、別に」


シュナは特に戦闘服に着替えたわけでもなく俺についてきた。まぁ戦闘服なんてないけどね。俺?俺はフル装備よ。金に金をかけて(多分ほとんどシュナが)超豪華な装備だからな。防御は万全なはず。


「それ、大丈夫なのか?」

「大丈夫です。それにソイツだっているでしょ」


シュナは俺の右隣にいるキリルを睨みながら言った。


「まぁ、落ち着けよ。取り敢えずそれだけはやっぱり危険だしなんかないの?」

「一応この服頑丈な作りなので大丈夫です」

「そうか…ならいいけど。てか、君達はちょっと落ち着けよ」


俺は後ろを振り返って呼びかける。


「え…あ、ハイ」

「大丈夫大丈夫、私なら出来る」

「わ、私は大丈夫だぞ」

「そ、そうだね」


あからさまにド緊張している四人は全員新しく『ジーズラ団』に入ったメンバーだ。上から順にアキト(剣士)、ユーリ(補助)、シズカ、スズネだ。


調査団についていくには最低でもBランク以上が必要であるため、普通新人が行けるようなところではないのだが、今回は特別に俺が行くことによって許可された。


「でも、あのジーク殿がクランマスターだったなんて…」


シズカが気まずそうにいった。


「ん?あ、まぁそうだな」


そういえば最初普通に接してたな。


「その…すまなかった。こっちに来たばかりで右も左も分からなかったのだ」

「別にいいよ。そんなこと気にしてないし。ん、ここかな?」


集合場所なのか、数人の騎士と冒険者らしき格好の者がガヤガヤ集まっていた。


「はぇ〜、ジークさんが来るんすね」


後ろから声を掛けられた。振り返るとそこにはガタイの良い青年と、物静かそうな魔法使いがいた。


「…………誰だっけ?」

「うぇ!?忘れたんすかっ!?」

「えぇ…コルンは知ってるんだけど…」


隣の魔法使いはコルン。『ブルードッグ』のメンバー。特に親しい訳ではないがそこそこ有名なやつなので知ってる。


「ほら、『レッドキャット』の」


シュナがフォローをしてくれる。


「あ〜あ、」

「やっと思い出したっすか?」

「ガビンね」

「ケビンっすよ!『レッドキャット』メンバーの!そこそこ活躍してるんすよ!」


そうだっけ?まぁ、いいや。


というか毎回こんな凄いメンツが来るんだな。普通こんなところに来ないでしょブルードッグやレッドキャットのような大手クランは。


予定時間になったのか、騎士団の団長と思われる人物が真ん中にやって来た。


「どうも、今回の調査団の隊長を務めるベベルハイムだ。非力な我々を護っていただくことを心から感謝する。今回のダンジョンは新たに発見されたが、どうも階層が多そうかつ、強力に見受けられる。事実、先に入った冒険者達全員の消息が絶っている」


……………………え?まじ?


ちょっとーっ!聞いてないんですけど!?そんなに危ないダンジョンの調査団なら俺来てないんですけど!?


俺はチラリとシュナを見た。睨むように


しかし、予想外のことにクールで有名なシュナが凄く冷や汗をかいている。シュナもチラッとこちらを向いてしまい、目があってしまって気まずい…じゃなくて。


(おい、どういうことだ?)

(えーっと…その…この資料本当はちょっと前に届いてたんですけど、選考とかで忙しくて今日の朝に寝ぼけて見てて…)


はぁ〜〜〜〜〜〜、寝ぼけてて難易度を確認しないとかある〜?普通もっと注意しとけとよ。


(で、でも、良かったじゃないですか!ジークさんも居ますし)


ホント、それが問題なの!


(それに、私が寝ぼけてたのだってジークさんのせいでもあるんですよ。夜が長かったですから)

(………まぁ、はい…)


確かに最終選考が終わってちょっと夜に盛り上がったけども、けどもよ……うん、確かにちょーっと浮かれてたな。でもこれは必要経費だ。


(それより、新人の子達はどうしますか?)

(そうだな…)


俺は4人を見る。レベルの高さに絶望してくれていると有り難いのだが。


「よし、気合を入れないとな」

「全力でサポートします」

「私だって!」

「……僕も、イケます」


(うーーん、行く気満々だーなんでー?)


どうしようかと頭を捻ったが、結局良い案も浮かばす、他が強いからなんとかなるだろと思ってそのままにしておいた。



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