プロローグ クラン
どうも。久し振りに新しい小説を書いてみました。と言っても、他の作品ずっと放置気味…、とりあえず見てくれたら嬉しいです(≧▽≦)
クラン
それは冒険者達の事務所のようなものである。
クランに加盟するとクラン宛の依頼や武器の製造、商品の取引が簡単に行われるようになる。
現在クランは世界に大小合わせて100以上もある。
ここ、東の大国ギルムガンドで有力視されているのが、古くから続く『赤猫男爵(通称レッドキャット)』と『青犬紅雪(通称ブルードッグ)』である。この二つは絶対的であり、常に入名希望者が絶えない。しかし、昨今急激に勢いを増しているクランがあった。圧倒的強さを誇り、睨み一つでsランクモンスターをも倒すと言われている男ジーク・コーズラが率いる『ジーズラ団』。発足は今から3年前。しかし、数々の強者を引き入れまたたく間に2強だったクランから3強にさせた、新星団だ。
そして、今日は『ジーズラ団』の新メンバー募集日。メンバー選考の会場には沢山の冒険者で溢れかえっていた。
「これより、ジーズラ団新メンバー選考会を始めたいと思います」
拡声器から声が会場全体に響き渡る。それに伴い、冒険者達が雄叫びという名の歓声をあげた。
「今回の募集では募集要項の通り、冒険者並びに鍛冶職を合計30人程度採る予定をしています」
30人、多いようにも考えられるが、会場に集まっている人の数は1000人以上。つまり、この中で入れるのは33人に1人だけだ。
「では、受付での指示通りお願いします」
こうして、1000人の冒険者の戦いの幕が切って落とされた。
「あ〜、気持ち悪い」
俺は人混みと熱気に酔って吐き気が止まらない。
なんでこんなところに来たんだろう。
「…あ、すみません、すみません」
ふらふらと歩いていたのであちこちで人とぶつかる。しかも、みんな屈強な人ばかりですげぇ睨んでくる。
「えっと…剣士の場所は…どこだ?」
受付で何か言われたが、それどころではなくて全く聞いてなかったのでイマイチ場所が分からない。
こうなったら剣士っぽい人を探して…
俺は周りを見渡す。
…………あ、いた。
俺は人混みを掻き分けてその人の元へ行く。
「…あ、あの〜……」
俺は剣…というよりは刀を持っている人を呼び止めた。
「ん?」
ポニーテールがふんわりと回った。黒い艷やかな髪に吸い込まれてしまいそうな黒くて大きな瞳。普通に見惚れてしまうほど整った顔立ちをしている。
「えっと…剣士の試練って…どこですか。」
「……ふふふ」
女性の剣士は何故か可笑しそうに笑った。
「えっと…」
「あぁ、すまない。ここが剣士の試練の場所だったものでな」
「…あ、……スミマセン…」
恥ずかしくて顔が赤くなる。
この人が列の一番後ろだから…ならんどくか…。
「私はシズカ。貴殿の名前は?」
「……えっと…ジークです」
フードを深く被った俺をシズカはじっと見つめた。俺は顔を隠すように少し俯く。すると、視界に黄色の水晶が見えた。
(D級冒険者か…)
「ジーク殿などっち派なのだ?」
「……どっち派、って?」
俺は首を捻る。
「元々ジーズラ団に加入しているパーティーに入る、或いは今回入れた人と組むかだな」
「あ…あぁそれは…考えてないかな」
この二つにそれぞれメリット、デメリットが存在する。まず既存のパーティーに参加するとなるとまずは、そのパーティーに入る資格があるかどうか。そして、仮に入れたとして、ついていけるかどうか。一つ目は簡単と言えば簡単だ。ただ、力さえ示せば良い。しかし、問題は2つ目。新人だからと言ってそのレベルに合わせてずっとダンジョンを攻略するわけではない。これはパーティーにもよるが、いきなりそのパーティーが挑むべきレベルについていかされることだってある。しかし、この二つがクリア満たされるのであれば、収入や安全面では安定していると言える。クラン内でも序列が上がれば、クエストの優位指名やクラン任務の参加、名指し任務と言った良いクエストを受けることができる。また、名の上がるパーティーには雑魚はいない。つまり、背中を容易く預けられるのだ。
次に新たなパーティーを創るならだ。デメリットははっきり言って弱い、経験不足という点だ。メリットと言えば、仲間に気軽に自分の意見を通せるといったところだろうか。既存のパーティーでは元々のしきたりというものが絶対である。が、パーティーを創るということはそういったルールを最初から作れるのだ。
「ジズカ…はどっち派…?」
「私は断然参加する派だ。と言っても私が入りたいのは、クラン序列No.3 キキ・クリナスが率いる『笑う魔女』クラン序列No.1今じゃそれぞれが自由に活動を行っているジーク・コーズラ率いる『ジーズラ』のどちらかだ。その二つのどちらかに入れなかったら私が新しいパーティーを創るつもりなのだ」
「へ、へぇ〜」
意気揚々と話しているシズカに圧倒されれたが、その意志は本物のようだ。
「あ、次私の番だな」
シズカは背を向けて、幕の中に入っていく。俺は監視の目を忍んで、スルリと幕の中に入った。
シズカが受付の人と話をしているが見えた。
(なんだ、あれは?)
だだっ広い会場の中心に大きな岩の塊がある。いや、あれは…ゴーレムか?
シズカが受付とはなし終え、会場に歩いていると、ゴーレムがようやく動き出した。
(凄い巨体だな…推定Bランクといったところか?)
D級冒険者にBランクのゴーレムは何分キツイ気がする。
シズカはゴーレムの前まで来ると抜刀の体勢をとる。
先に仕掛けたのはゴーレムだった。薙ぎ払うように腕を回す。シズカは直ぐに抜刀し、腕に斬りかかるが、硬くて刃が通らず、力負けして吹き飛んだ。
結界が張ってあったのか、シズカは途中のなにもないところでぶつかり倒れた。
「やるなぁ、デカブツ」
シズカは立ち上がった。見ているこっちはかなり血が出ているシズカが心配で仕方ない。
シズカは鞘を捨てて、刀に何やら魔力を注ぐ。
瞬間空気がピリついた。
ゴーレムはそんなことは気にせず殴りかかった。
シズカは正面から向かっていき、拳が当たる直前で宙を舞った。そして、
「『獄中一閃』」
滑らかな剣技がゴーレムの腕を切り落とした。
(それでも…意味ないな)
ゴーレムは魔素体、則ち魔力があれば簡単に腕くらい修復する。
案の定ゴーレムは腕が生えてくる。
「そうこなくちゃな」
シズカは怒って連打してくる拳を綺麗に躱し、さらには腕を踏み台にして一気にゴーレムの間合いに入った。
「行くぞ!『朱雀』!」
ゴーレムの胴体を斬りつける。
「くっ、硬いっ」
ゴーレムを斬りつけたのは良かったが、腕とは違い胴体はもっと強靭だったようで、斬りつけたのは大きな痕が残るだけで核は壊れていなかった。しかも、運の悪いことに、衝撃に耐えられなかった刀が根元から折れ、使い物にならなくなった。
ゴーレムはまた、体を修復してシズカに襲いかかる。
「そこまで!」
ここの管理者の声が響き渡り、それと同時にゴーレムは動かなくなった。
「では、今日の試練はここまでです。結果は夕方位には発送されますので、合格であればまた明日来てください」
「あ、ああ」
シズカは斬れなかったことが不満だったのか、すこし機嫌が悪そうだ。今回は見送ることにしよう。
「次の方は…」
受付の人がコッソリと中を見ていた俺と目が合う。
「……ども」
「失格です」
やはり中を見てはいけなかったようだ。