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第39話 エピローグ ~さよならの向う側~
あれは初恋だったのか何だったのか、いまでもよく分からない。
あの人はフラっと現れて、そしてフラっと消えていった。優しそうな顔をして、まだ小学生だった私の言うことを真剣に聞いてくれたあの人。
たった半月ほどの出会いなのに、今でもあの時のことを思い出す。たぶん私の本心を本気で聞いてくれた初めての大人の人。私が年上の男性を好きになったのはあの人のせいかも知れない。
結局私が二十歳になってもあの人は現れなかった。今でも日本のどこかで私のことを見ていてくれているのだろうか。そんなことは私の自惚れ。あの時の少女がいまの私になっているなんて、あの人が知っているはずも無い。
私は久しぶりにあの場所を訪れた。あの頃と変わらずにお堂があって、あの頃と同じようにお地蔵さんが並んでいる。
その裏に一枚の紙を置いて、私はそっと手を合わせた。
――お兄ちゃん、またいつか会ってみたいです モモエ。
< 転生したら三億円事件の犯人だった 了 >




