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虚栄都市ヌーチカ

 真っ白だけど不健康じゃない、キラキラ光る髪が綺麗。


 合う度に微笑んでくれるルビーの様な目がとても綺麗。


 しなやかに動く、均整の取れた体がとてもとても



「飽きねーな、エンさん。」


「えー? だって、めちゃくちゃ美人じゃない?」


「いやまあ、それはそうなんだがよ。」



 夜明けを待って、俺達は街へと帰っている。


 このまま放置するのも後味が悪いので、暗殺者達も俺が纏めて担いでいる。もうバレちゃってるし、神パワーを隠す必要も無いからね。


 それで、俺のポエミーなモノローグが何かというと、言うまでもなくソルティナの事。


 集団の後方でジュナイさんと話しながら歩く彼女は、イグラシアさんお墨付きなのも納得の超絶美少女だった。

 もう一つのお墨付きは、取り敢えず保留。お互いの事なんて同じ邪神だってことしか知らないし、焦る様なものでもないし。



「それよりエンさん、別に正体を隠すつもりとかは無いんだよな?」


「んー、まあバレちゃってるらしいし。街の人には色々お世話になってるし、俺みたいな()()でも有難がってくれてるんなら尚更ね。」


「まあ実は、教会の修繕とか、聖印の量産とか、既に始まってるんだけどな。」


「アクティブだねぇ。」



 行きに比べて帰りはスムーズだった、なんせ、何日か前に見た人達が道中を切り開いてくれていたんだから。

 皆んな揃って両方の拳を顔の前で揃えて、ソルティナと俺を拝んでいる。


 そんなこんなで、行き道の半分ほどの時間で森から出ると、森の外には何台かの馬車が待っていて、前に話を聞いたりした神官の人とか冒険者、更には街の偉い人っぽい人が膝をついて待っていた。



「お待ちしておりました、守護神様方。長らくの封印、我らでは解く事が叶わなかった事を詫びるとともに、復活を大変嬉しく思います。」


「ありがとう。長い間不在にしてしまって悪かったわ。」



 街長が物凄く下手に出て、ソルティナが当たり前のように受け取る。はー、なんかセレブリティ。



「それと、呼称は今の時代風にいきましょう。私達はもう守護神じゃ無いわ、あなた達も邪神と呼んで頂戴?」


「それは、いえ、分かりました。邪神様とお呼びします。大変申し訳ないことに、邪神様方のお姿を残した物が無く、不敬ながら名を教えて頂きたく存じます。」


「まあ、それは仕方ないわね。私は初の邪神ソルティナ。あなた達には塩の女神と言った方が分かりやすいかしら。」



 おお、あの! みたいな声が上がり、その場の全員が沸き立つ。

 何というか、カッコいいやりとりである。これが普通の距離感なのかな? 崇められるのとかって経験が無いから、フランクに接して欲しいってのは、まあ俺のわがままなんだろうね。


 取り敢えず、こんな魔物の出るような場所に長居するのもどうかと思い、立ってもらって街へと移動しましょうか。






 街に帰ると、それはもうとんでもない騒ぎだった。


 どこの祭りだって程の通りの賑わい。教会関係者は揃って咽び泣き、街の人たちは花弁を撒いたり歓声を上げたり。当たり前のように笑顔で手を振るソルティナにキャーキャーと声が上がる。

 それにならい、俺も取り敢えず手を振ってみる。野太い歓声、何故だ。


 まるでパレードの様相で俺達は広場のステージに案内され、みんなを見渡せるような高いお立ち台へ。


 一緒に上がった街長とジュナイさん、それぞれが手を挙げると、歓声は収まっていき、やがて静かになった。



「諸君、既に知っての通り良きことがあった!」



 朗らかに語る街長、その顔はとてもいい笑顔で、目には涙も浮かんでいる。



「かつてこの街におわした五柱の女神様、その中の一柱、塩の女神ソルティナ様がお帰りになられたのだ!」



 わあっと上がる歓声。それを鎮めながらジュナイさんが引き継ぐ。



「それを成してくれたのが、皆も良く知る事でありましょう、新たなる神、エンデュランス様です。神の帰還はこの街にとっての悲願でした、我々はその献身に、更なる忠誠と信仰をもって応えねばなりません。」



 盛り上がるジュナイさんと人々、いや、嬉しいけど、ちょっと重い。まあ、大分嬉しいが勝ってるんだけど。



「もし良ければ、街の者に声を掛けて下さいませんか?」



 突然話を振られて、思わず自分を指差す。残念ながら割と頭真っ白で、何も思いつきません。

 そんな俺の腕をポンポンと叩いて、先に行ってあげる、とソルティナ。

 太陽に照らされて美しく広がる白髪に、俺もみんなも息を呑む。



「私がソルティナよ、私達が居なくなった後の街を、百年以上も守ってくれてありがとう。それに、私が戻った事をこんなにも喜んでくれて、私も嬉しいわ。

 もうあの頃から生きている人は殆ど居ないだろうけど、ここにいた女神のうち、戻ったのはまだ私一人。

 けど安心して? 他の姉妹も、母様も、すぐにこのエンデュランスが起こしてきてくれるから。皆んなも待っていてくれると嬉しいわ!」



 沸き上がる歓声の中、ソルティナに腕を引かれた俺はステージの最前へ。

 大きく鳴り渡る拍手の音、知り合い達が手を振ってくれて、冒険者の皆が武器を掲げる。

 皆が笑顔だ。こういうの見せられたら、なんかこう、熱くなっちゃうよね!


 右手を空に突き出して、拳を掲げる。



「俺に任せろ! 俺は、五柱の邪神の封印を解くためにここに来た! だけど俺一人じゃ大したことは出来ないんだ、だから、手を貸してくれ、この街の女神を、この街の力で取り戻そう!」



 この日一番の歓声、誰もが手を上げ、足を踏み鳴らし、街の名前を連呼する。



「虚栄都市、ヌーチカを蘇らせるぞ!!」


 

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