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封印の祠にて

 野営地から野営地へと向かい、旅は早くも四日目の朝。

 道中には魔物も出てくるんだけど、俺より先にジャジャさんが気付いて矢で追い払ったり、ダナさんがささっと出て行って倒して帰ってきたり。俺も街の外で少しは魔物を倒したんだけど、それとは全然違う。前世で知ってるよりも遥かにでかいクマやらよく分からない生き物やらをさっくり倒すこのパーティは、文字通りヌーチカ最強のパーティなのだろうと思う。


 途中で出会った他のパーティの人たちも、どことなく悔しそうな顔でこっちを見ている辺り、彼らの実力を認めると共に、負けてられないって気持ちがあるのかもね。向上心が凄いんだと思う。多分ね。



「とても順調なので、明日の朝には到着すると思いますよ。」



 他の人らが段々と言葉が砕けてくる中で、一人だけお堅い口調のジュナイさんがそう教えてくれる。この人、俺が見てない時にこっそり拝んでいるみたいなポーズをとってるんだけど、もしかして邪神崇拝者だったりするのかな?

 だとしたら話すのはジュナイさんからが良いのかもしれない。


 往路での野営最終日、俺はこっそりと抜け出して祠に向かう。実は、場所は既に感じ取れている。

 これで別れるかも知れないと思うと少し悲しいけど、いや、上手く説得出来るはず、と気持ちを持ち直して神パワー全力で森を駆けていく。


 森の少し拓けた所にそれはあった。


 俺の倍くらいの高さの大岩と、それを囲むような祭壇風の建物。

 入り口のバリケードをバリっと剥がして中に入る。さてさて封印はどれかなっと大岩に近付くと、あからさまに埋め込まれてる白銀に輝く大きな剣。


 多分これに間違い無いだろうと手を伸ばしかけて、すぐさま横に飛び退いた。

 大岩に当たり甲高い音を立てて何本ものナイフが床に落ちる。



「ちっ、外したか。」


「いきなり物騒だね、こんな夜中に何のよう?」



 その声がカールスさん達の物じゃない事にホッとしながら振り向くと、全身黒尽くめの人が十人ほど。


 これ明らかに暗殺者とかそういうのでしょ、と思いながら、もしかしてつけられてた? と思い至る。


 ジャジャさんが気付かなかったあたり、かなりの手練れだろう。絶対絶命、なんて言葉が出てくるが、こんな奴らに負ける訳ないとも思うあたり、俺も中々傲慢になってきたなぁと少し笑ってしまう。



「邪魔しないなら命は取らないよ、それとも、君達だけで俺に勝つつもり?」


「強がりを。我らの武器には神の加護が宿っている、貴様の命運は既に尽きた。」



 まあ、そうなるよね。


 飛んできたナイフを手の甲で弾く、少し痛い。神の加護ってのは本当らしいけど、こんなんじゃ死なないよ、俺。


 背後に回っていた一人を裏拳で吹っ飛ばし、振り下ろされる剣の合間を抜けてリーダー格の男に詰め寄る。何驚いてんの、相手は邪神なんだから、これくらいはするでしょ?


 抜き打ちにされた光る剣に、エンドオブアビス(神パワー)を纏った右手を合わせる。力が拮抗したのか剣が崩れることは無く、逆に俺の方が傷を負った。こんなのすぐ治るけどな!

 さらに振られる剣を高く飛んで避けて、飛んでくるナイフを打ち落とし、俺は大岩の前に立つ。



「これはあれだね、ジリ貧になるやつかもね。」


「ふ、少々驚かせてもらったが、貴様に戦闘経験が少ないのは分かっている。光の神の名の下に、滅せよ、邪神!」


「だからこっちもさっさと進めちゃおう。」



 走り寄る暗殺者を無視して、神パワーで無理矢理に大岩を砕きながら、その中の大剣を掴む。

 無茶苦茶重たい泥の中から、足を引っこ抜くような抵抗感。そういうのも全部ひっくるめて神パワーで押し切り、横薙ぎに剣を振るう。


 闇オーラみたいなものが剣から放たれて、前線の暗殺者達を押し倒す。

 白かった剣は凶々しい感じの赤黒い色に変わり、引っこ抜いた俺自身がちょっと引くような力に満ち溢れていた。こわ。



「なぁにこれぇ…。」


「クソ! 封印が解かれたぞ! 絶対に奴を殺せ!」



 どうやら正解を引いたらしく、大岩から少しずつ邪神の力が増しているのを感じる。

 つまりは、ここを守り切れば俺の勝利である。


 さっきよりも激しい攻撃を、前世の身長程もある剣で受ける。こんな馬鹿でかい剣を片手で振り回せる力に感謝しつつ、なんとかぶっ倒す方法を考える。

 殺せばすぐなんだろうけどね、前も言ったけど胸焼けしそうなのでNG。


 相手もそれを察知したのか、刺し違えんばかりに肉薄してくる。目が怖いよ目が、めっちゃ血走ってんじゃん。



「…二人、報告に戻れ。他はここで死ぬ事と心得ろ。」



 小声でそう言ったのを聞いて、やばいと思って追いかけようとするも、ほんとの命懸けで足止めされてはそれも上手くいかない。

 その一瞬で二人が抜けて、外へと飛び出していく。俺の姿も目的も全て知られてしまった以上、最早殺してでも、って時に、出て行った二人が吹き飛んでくる。



「隠し事とは、酷いじゃないかエンさん。」


「カールスさん…。」



 ゆっくりと祠に入ってくる四人の強そうなパーティ。暗殺者達に鋭い視線を向けながら、カールスさん達は、不敵に笑った。

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