ついに邪神発見! か?
「へい、買取よろしくぅ!」
「毎日ありがとうございます。査定しますので少々お待ちください。」
ヌーチカに来ておよそ一月ほど、俺は『冒険者』という仕事に就いて、街の外の地理を把握しながら、色んな素材や食材を納品する日々を送っている。
冒険者ってのは、魔物を倒したり、俺みたいに色んな物を納品したり、それ以外にも色々とあるが、まあ便利屋とかお助けマンって感じの仕事。
初めて冒険者組合に入った時は何故か組合中が静かになって、俺の動向を緊張して見守られたり、街中でなんとなく下にも置かれない扱いを受けてたり、もしかして俺って貴族かなんかだと思われてる?
まあ服装がこの一張羅しか無いしね、仕方ないと言えば仕方ないんだけど、ちょっと落ち着かないよね。
「ところで、新しい情報なんかはあったりします?」
「お喜び下さい、上級組合員のパーティが、それらしき祠を見つけたと報告がありました!」
「おおっ! 流石上級! それって案内とか頼めるんですかね?」
俺が冒険者になった主目的、邪神の封印場所の探索。自分で行ければ良かったんだけど、組合でのランクによっては推奨されない場所も多く、こうやって定期的に進捗伺いをしていたのだが、ついにその本懐を達成する事ができたようだ。
詳しく聞くと、場所はここから北にある深い森の中、街からは歩いて数日といった深部にあったようで、なるほど上級じゃないと無理だろうなって所。
「今日は一日休みを取るそうなので、明日お願いできる様に伝えておきますね。」
「あざまぁす! よーし、ようやく一人目が…っと。」
思わず失言して受付さんを見ると、何も聞いてませんよ、っとジェスチャーで示された。よかった。
まあこの街の人って大体こんな感じだけど。
やっぱり元々邪神を祀ってた街だけあって、そこら辺が緩いのかもしれない。
「じゃあ明日お願いします、情報料は報酬から取っといて下さい。」
「ありがとうございます。では、残りの報酬がこちらです。」
渡されたお金を持って組合から出る。時間はまだ夕方と言ったところ。なんか食べるか迷う時間帯だな。
まあ食わなくても生きていけるんだけど。
結局串焼きを買って食べながら、封印について考える。
街にある教会や、上級組合員の魔法使いたちに話を聞くと、封印ってのは、もうなんかめっちゃ封印されてるって分かるものらしい。
封印している手段さえ判れば、割と簡単に解けるらしい。ただし封印をかけた者と同じ以上の力があればだけど。
まあ、あるでしょ、神だし。
そんなこんなで次の日。数日分の食糧やら寝袋やらをデッカいリュックサックに詰めて、のっしのっしと北の門へ。
待ち合わせの時間よりはやや早めに着いたのだが、既に待っている四人の強そうなパーティ、仕事意識高いなぁと感心したのだが、もしかしたら貴族を待たせるとはウンタラカンタラがあるのかもしれない。なんかすみません。
「すみません、お待たせしたみたいで。」
「いえ、此方が受けた依頼ですのでお気になさらず。パーティのリーダーを務めています、カールスと申します。」
「あ、これはどうも。エンディランスと申します。」
お互いに挨拶して、他の人の紹介も受ける。
弓と短剣を使う、スカウトのジャジャさん、獣人の男。双剣使いの小人族、パーティの紅一点、アタッカーのダナさん、女性。魔法使いでありながら神官でもある、魔族のジュナイブバルトナー、通称ジュナイさん。
そしてリーダーでタンクの、人間であるカールスさん。
四人はなんと、このヌーチカの最高ランクパーティとのこと。なんか俺の道楽に付き合わせてしまって申し訳ないね。
そんな事を伝えたら、外から来た人がどんな事をするのか気になって、むしろ楽しみにしていたらしい。
暗くなる前に野営地に向かおうと、早速出発する。俺の歩く速さに合わせようか聞かれたけどモーマンタイ。俺基本的に疲れないから。
ほんと、いい人ばっかだなこの街。
俺が邪神を解放しようとしていると知ったら、この人たちも敵に回ってしまうのかもしれない。
それは、やだなぁ。
でもさ、下心アリアリだけどさ、やるって決めちゃってるんだよね。
それに、希望的な考えだけど、ちゃんと事情を説明したら、仲間に、なんてのは無理だと思うけど、見逃してくれるかもしれない。
だから俺は簡単には諦めない。邪神も仲間も全部とる。欲張りだって? いいだろ、だってこちとら神様なんだから。