表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

オッケー。クールに行こう。

9時前はまだ夕方だからぁ!!(寝坊)

 オッケー。クールに行こう。さっきまでのが夢じゃないのなら、ここは異世界で、俺は邪神になっている。

 イグラシアさんの言う通りなら、邪神は封印とやらをされていて、早い話が世界的に見てかなり『悪い』ポジションに付いている。光の神様が方向転換してない限り、それは変わらないと思う。


 ん? つまりこの人達、俺を封印しに来た感じ?



「滅せよ! 邪悪なる物よ!」


「あぶなぁい! 何すんだバカ! 刃物を振り回しちゃいけません!」


 

 バックステップゥ!!

 蛍光灯ばりに光る剣を振り下ろしてきたニイちゃんから距離を開けて、自分の状態を確認する。なるほど、何というかこう、パワーが溢れている感じがするぞ。さっきの剣も随分ゆっくりに見えたしな。


 改めて囲んでいる人達を見回す。おお、まさに異世界。まるでRPGゲームのような人々。何となく宗教の偉い人が着てるような服を着た人が多めかな?


 建物はよく見れば洋風の教会のような感じだ。もしかしてここが邪神を祀ってた教会だったりするのかな、と思考を飛ばす。

 ちなみにだが、俺の体、邪神ボディにはあらかじめこの世界の一般的な教養は詰め込まれているらしく、ここがヌーチカと言う街のすぐそばで、その辺り一帯が暗黒大地と呼ばれている事まで知っていた。勉強要らず、マジ高評価。


 さて、話を眼前に戻そう。


 俺の出方を見ているのか、あるいは警戒しているのか、光る剣を持ったニイちゃん一行を先頭に、じわりじわりと包囲をすすめている。

 これはあれだね。お話でなんとかなるって段階を超えてるね。


 つまりこの人達を何とかしてここから逃げ出さないと、俺の異世界生活は数分で幕を閉じてしまうって事だ。

 よっしゃ、ほな神様パワー見せたるわ。


 イグラシアさんを含む全ての神には、一つだけ飛び抜けた能力がある。それは権能と言われるもので、神様が神様たる所以。

 そして俺の権能は、『終』。つまりは終わらせる事だ。正直こんなヤバヤバな能力を与えないで欲しかった、だってこれ悪用すれば、簡単に人の命を終わらせることができる力なのだ。


 たとえ命の危険があっても、殺して終わり、なんて胸が焼けそうな事をしたい筈もなく。そもそも、神様と人間では基本的なスペックが違いすぎて、それじゃ弱いものいじめになってしまう。いじめカッコ悪い。


 ですので、ここは一つ、この建物の役割を「終わらせる」事で煙に巻いて逃げましょうそうしましょう。


 右手にパワーを溜めましてー、



「くっ、なんだこの力は…!」



 あっ、そういうのいいんで。パワーを床に向かって叩きつける!



「エンドオブアビス!」



 建物と言う状態を維持できなくなった教会は、大きな揺れと共にその形を崩し、崩落する天井により、辺りは土煙で見えなくなる。

 退却! と聞こえたので、多分あっちも大丈夫だろう。念のため近くで隠れといて、後で様子を見にこようと思う。


 俺はウンウンと頷いて、とりあえず何処かで身を隠そうと走り去った。









 ーー 正教会の聖女 ーー



「まんまと逃げられてしまいましたね。どう致しますか、聖女様。」


 教会騎士の一人がわたくしにどうするかを尋ねる。

 そんな事、荒事の経験のないわたくしに聞かれても困る、立場だけでこの場の最高指揮官にされたわたくしに、的確な指示など出せるわけがないでしょうに。


「近くからは悪しきものの気配を感じる事が出来ません。恐らく、既に離れてしまっているのかと。」


「そうですか…。分かりました、では撤収する方向で宜しいでしょうか?」


「ええ、流石にヌーチカでは休めませんし、ここまでの強行軍を考えると、早めに撤退するのが良いかと。」


「了解しました、皆に伝えます。」


 去っていく騎士を眺めながら、軽く溜息。


 光の神、ピューリア様から啓示を受け、本来なら十日掛かる距離を七日で移動し、着いたのが元邪教の総本山たるヌーチカ。

 新たなる邪神が生まれるとのお言葉に、教会の最高戦力はもちろん、邪神すら斬ることの出来る聖剣を用意してこれに挑んだが、結果は見ての通り。


 廃協会を探索中に突然現れた邪神は、何というかこう、些か気の抜ける言葉を発し、それに虚を突かれたわたくし達は、まんまと逃走の為の一手を許してしまったのだ。


 度し難い事に、この責任はわたくしではない誰かが負う事になるだろう。神に身を捧げてはいても、こういう正教会の権力体制には嫌気がさす。


 それにしても、聖女としての能力、邪悪を感知する能力に先程の邪神が掛からなかった事が気にかかる。

 何かしら防ぐ能力を持っているのか、それとも。


「いけませんね、こんな事を考えてしまっては。」


 邪神は世を乱す、不倶戴天の敵なのですから。


 けれど、そう思ってなお、あの邪神の事が妙に気になってしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ