プロローグ:邪神にスカウトされちゃいました
初の連載作品です。一日1ページ以上の更新を目指して行きますので、よろしくお願いします!
突然だが、命をかけた事はあるだろうか?
俺はある。まさに今だ。インストアナウ。
事の起こりはなんて事はない日常、歩道橋を上がって行くお姉さんが丈の短いスカートだったので、思わず少し後から歩道橋を上ろうと言う、まあ、なんとも下心溢れる若き血潮のなす、要するにエロガキムーブ。
見えそうでやっぱり見えないと言うロマンと冒険に溢れたその行いは、しかして足取り悪く歩くお姉さんが足を踏み外したのを見て様相を変える。この表現合ってる?
とっさに手すりを掴んだお姉さん。ところが掴みどころが悪かったのか、上半身が手摺りの外に投げ出されそうになる。
こりゃいかんと数段飛ばして階段を上がり、お姉さんの上半身を救い上げるように体を乗り出す。むむっ、でかい。
そんなアホな事を考えたバチでも当たったのか、今度は俺が放り出される。うそやん。
歩道橋にのこされ、驚いた表情のお姉さんを見ながら、俺はとっさに親指を立てる。ナイスオッパイ。
落下、激突、俺はしんだ。スイーツ。
いや、死んでは無かったらしい。俺を助けた『邪神』は確かにそう言ったのだ。
謎の空間、謎の女性。邪神と名乗ったその人は、真っ白な鎖に全身を雁字搦めにされている。
今現在、俺の魂は肉体を離れ、一時的に仮死状態になっているらしい。
「つまりこれは臨死体験みたいなもんですか。」
「そうなるね。私も驚いたよ、暇つぶしに色んな世界を覗いてたら、凄い思考回路で落ちてく君を見つけたんだから。そのクソ度胸と鋼メンタルに敬意を評して此処に招待した訳さ。」
「なるほど。ちなみに俺、どんな事考えてたんです?」
「オッパイ。」
「なるほど、実に俺ですね。」
「まあ、もし君が死んじゃってたら『転生』とか勧めたんだけど、生きてるしね。どうしよっか。」
「うーん、普通に体に戻して貰えると助かるんですけど。」
「そうしてあげても良いんだけど、君、この怪我でちょっと脳に障害が出てね? 戻ったら記憶喪失になるけど。」
「ええ…、それはまた何というか、ヤバいですね。」
「ヤバヤバだよね。だから私はこう提案しよう。」
拘束された中で居住まいを正し、彼女は告げる。
「その記憶だけを持って、此方の世界に来ないかい? 新しい肉体は与えてあげられる、けれど、私に出来るのは邪神を生む事だけだから、邪神としてだけども。」
「魅力的なのかどうなのか、判断に悩みますね。」
「私の他にも封印されてる邪神がいるんだけど、皆んな女の子だよ?」
「詳しく。」
「此方の世界では百年ほど前に光の神が一念発起してね、私とその子供達、五柱の邪神はまるっと封印されてしまったんだよね。」
「封印って、なんか悪い事したんですか?」
「どうだろう? 人間の自由さを説いたり、ちょっとした宗教団体を作ったりしたけど、どの程度で悪い事になるのかは分かんないなあ。」
「大分ファジーな感じなんですね。」
「光の神が凄い頑張ってる感あったから封印されてあげたんだけど、ちょっと飽きてきちゃってさ。君、私達を助けてくれないかな?」
「それって反社会勢力って事ですよね?」
「むしろその親玉だね、邪神だし。まあ君にもちゃんとメリットはあるはずだよ。」
「どんなです?」
「まず、イケメンになります。神は基本的に美形だからね。身体能力も凄いし、腹筋もバッキバキ。」
「憧れのシックスパック。」
「いえすいえす。そして君が助けるのは女の子、それも神なので美人ばかりです。素晴らしいね、ハーレムだよこれは。」
「ハーレム…。」
「お、もう一押しな感じ? じゃあ最後、全ての邪神を助け、私の封印を解いてくれたら。」
「く、くれたら?」
「オッパイを揉ませてあげます。」
「やります。」
「毎度ありぃ! では君の記憶を邪神にインストール! 次に気がついた時、君は此方の世界で邪神になっているだろう。ちなみに、元の体の方は気にしなくて良いよ、君が助けた彼女が面倒を見てくれるから。」
「本当ですか? それはありがたいです。両親に迷惑かけるなって思ってたんで。」
「ふふふ、そういうメンタルが気に入ったんだ。それじゃ、世界を楽しんでおいで。新しい私の子、最後の邪神、終焉を行く者、エンディランス。」
そう言って、とても優しく微笑む彼女がくれた名を刻む。そして気付いた、俺はまだ、彼女の名前を聞いていない。
「待って、名前、あなたの名前を聞いてない。」
「ああ。私は祖の邪神、生む者、イグラシア。此方の世界で逢えるのを楽しみに待っているよ。」
そうしていつしか俺の意識は闇に呑まれて、気がつくとボロボロの建物の中に立っていた。
周りに沢山の武器を突き付けられた状態で。
夜中に上げるのはこの一枚だけになるはず。次からは夕方くらいの更新になると思います。