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在り方


ユノ様のご様子がおかしい。

主人よりユノのお世話を任されている。リクトはユノのここ数日の様子を思い返した。


ユノ様の大変わがままな態度にはリクトも頭悩ませていた。頭悩ませていたなんて柔らかい表現では正直済まない程に。である。


自分よりも美しい姿もみすぼらしい姿も嫌うユノは女性の付き人、リアンへの当たりがかなり厳しい。

自分の前では行ったことはないが、ユノがリアンへ刃物を振るう姿は何度か物陰から目にしていた。

それでも止めないのは気に入られている自分が目撃したとなれば、ユノがリアンへの仕打ちがもっと酷くなると判断しての事だった。


ユノはリクトを気に入っていた。リクトはイケメンである。それはリクト自身も自負している。

綺麗な女は気に入らないが綺麗な男は好きだったのだ。

リクトの前に付いていた人間はイケメンではないという理由で嬲り殺されるか、辞めるかであった。

なぜ辞めるではなく殺される人間がいたのかについては、リクト自身もそうだが、行くあてがないから。

下級の人間にこのミリタリー家を出て、やっていける物なんて居ない。

ここで死ぬか、外で死ぬか、最後はかわらないのだ。



そんなお嬢様が、処刑を見送ったのは、本当にびっくりした。

それに加え、許可を取ることねとの捨て台詞つきである。

許可を取れば食べてもいいと捉えられるその言葉に、処刑人の男は振り回されていた様子だった。

それもそうだろう。許可なんて降りる訳はない。お嬢様の気紛れに、付き合わせれている。

許可を取ろうとすれば、不敬だとまた処刑室へと連れて行かれるかもしれない。そう考えて当たり前だと思った。


しかし、実際は違った。

処刑を行わなかった晩の事、お嬢様は処刑人の男に残飯を投げつけたのだ。それは文字通り、顔面へと投げつけた。

許可を取らずに食べたかったほど飢えていたのでしょう?美味しく召し上がれ。そう言い放ったお嬢様はなんとも言えない表情をされていた。

終いには、今まで私が何を食べたいかわからないのだったら色々な食事を用意するのが貴方の仕事でしょ?とシェフに作らせていた、たくさんの料理。

勿論、食べきれるわけはないし、食べきれないものはゴミ箱いきだった料理に、こんなに用意して私への嫌がらせかしら?と料理を減らさせていた。

言い返す事のできないシェフの代わりに、不躾にも今までお嬢様がどんな食事の気分でも良いように用意していた事を伝えると、そんなの忘れたわ。の一言だった。



それだけでない。リアンへもあたらなくなっていた。

リアンは髪を伸ばすことが許されなかった。天然パーマのお嬢様はストレートのリアンの髪を気に入らなかったのだ。

何日かに一度、お嬢様自身でリアンの髪の毛を刈っていたが、それがなくなった。

リアンからお嬢様に問うた所、私の手を煩わせるの?と言われ、自分で行ったところ、その髪を見たお嬢様に、私がやらなかったからって当て付け?と言われ、髪の毛を伸ばすことを許された。


そう、許された。この言葉がしっくりきた。

ユノ様の態度は今までと変わらず高圧的である事は、間違いないしわがままも今まで通り。


それでもリクトの目には、料理を余らせない為に少なくさせた。

リアンへの髪を伸ばす様に、嫌味を言った。

そうとしか考えられなかったのである。


書斎で本を読みあさり、疲れたのか机に突っ伏して眠るユノ様の首に手を当てる。

少し力を入れたら、簡単にこの女を殺せるだろう。

何度も何度も何度も何度も頭の中でユノを手にかけた。

もちろん、手にかけるなんて容易い事。

それでも今までそれをしなかったのは、ユノが死んだとなれば主人に自分が殺されてしまう。

それがわかっていたからだ。

幸いにもリクトはユノにも主人にも気に入られている。

余程ユノの機嫌を損なわなければリクトに被害は及ぶことにない。


「んぅ……」

ユノの言葉に、リクトは首に当てた手を素早く引いた。

ゆっくり頭をあげ、目を瞬きさせながら自分が当てていた首の部分に手を当てる。

その仕草に、心臓が痛いほどに脈打った。殺そうとしていたと誤解されればただでは済まない。

誤解……ですらない。力は込めなかったものの、確かに悪意がそこにはあったのだ。


ユノがリクトの手を掴み、今まで自分が当てていた首に手を添えた。

バレた。バレている。リクトが首に手を当てていたことを。

「ユノ様」自分でも分かるくらいに、声が震えた。こんなの認めていると同意だ。寝ているユノ様に、危害を加えようとしたことを。

リクトへ呼ばれた事など気にも止めず、ユノはリクトの手を首からそのまま、自分の頭へと乗せる。

そして左右にずらした。

リクトは理解できずに、ただユノの行動を呆然と眺めた。




……


「貴方に触れられるのは心地良いわ」

そう伝えると、目を見開くリクトに笑い、いつの間にか寝てしまったなと、寝る前に開いてた本を手に取った。


ユノはリクトが好きみたいだ。

ライクではなくラブで。柚乃ではなくユノが、リクトに触れられると煩く心臓が脈打つのだ。

柚乃の時に、一度だって恋はした事がなかったが、これが好きだという感情だと、なぜだかすぐにわかった。


そっと、手が添えられていた首元へと自分の手を当てると、あからさまに肩を震わせるリクトの姿が見えた。

大方、私の事を殺そうとでもしたのだろう。もしかしたら頭の中では何度も殺されているかもしれない。


首に当てた熱が、頭へと伝わる。

自分に危害を加えようとした行動な事には間違いないはずなのに、心臓が脈打ってうるさい。


ユノは、うるさい心臓に静まれ静まれと念じながらろくに進まない本に目を通すふりだけした。



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