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プロローグ


痛い。苦しい。息ができない。

ハッハッと浅い息を繰り返し女の子は胸を掴みながら涙を流し横たわる。


どの漫画でも小説でも、いじめを行なっている人間はいじめられた人が自殺しても、なんの反省もなく、堂々と生きていて、私が死んでも何の意味もない事位理解している。


でも、それでも、本当に少し擦り傷程度でも奴らの心に傷を負わせることが出来たなら。


そう考えて女は痛く、苦しい身体に鞭を打ち、顔を微笑ませた。



………



「おはようございます。ユノ様」


「ん……」


かけられた声に目を開ける。そこには全身傷だらけの天使がいた。

いたる所に傷跡を付け片目には眼帯ではなく包帯を巻いている。

金髪の髪に青い瞳。髪の毛はかなり短く刈り上げられているが、華奢な身体と声からして女であることは間違いないだろう。


「えっ誰?」


私の言葉に、女は目を見開いて怯えた様子で扉の横へと歩いていき動かなくなった。

あの、と声をかけると、肩を震わし目を伏せる彼女にユノは彼女への質問を諦め部屋を見渡した。


豪華な調度品が並ぶ部屋に天蓋付きのベッド、すぐ近くにあるドレッサーが目に入り、そこへと移動するとすかさず天使がよってきてブラシを手に取り私の髪をといていく。

そんな女の行動が気にもならない位にユノは鏡を見て呆然としていた。

(この女は誰だ)と。

薄い青色の髪に深紅の瞳。リップも何もしていない桃色の唇。筋の通った鼻筋。

ユノは別にブスと言われる人間ではなかったが、美人でも可愛くもなかった。

鏡にうつる自分の姿が信じられなく思わず手を上げると鏡の中の人間も手を上げた。

(本当にこれが私なの)

夢…?と思いつつ頬を抓るという何とも古典的な事を試してみるもきちんと痛みがあり呆然とした。


自分の奇怪な行動をもろともせず、私の身支度を整えた天使は定位置なのだろうか、ドアの横へとまた佇んだ。


私は一度死んだはず、死んだのにこの子は誰だ。

なんで私が動かせるの?戸惑いながらグーパーグーパーと自分の手を見つめる。

乗っ取った?身体を?と言うことは今までのこの子はどうなる?

もしかして前の私は死んでいなく、この子が前の私と入れ替わっていたらと血の気が引いていく。

どうしよう。自殺するべき?

そうしたら元の体に戻れる?と、自問自答を繰り返した所コンコンとノックの音が響いた。


考えていた事が中断され現状が理解できずにドアを見つめていると、またコンコンとノックの音が聞こえ、入ってもよろしいでしょうか?の声に、どうぞ。と応える。

男がドアを開き一歩だけ部屋に入ると朝食の準備が整っていますと頭を下げた。



「うわぁ……」


テーブルに並ぶ豪華な食事に思わず声が漏れた。

身体をビクリと震わせシェフらしき人にお気にめされないでしょうか?と声をかけられた。

とんでもないです。と返すと目を見開いて固まった。

その様子に頭でクエスチョンを浮かべながらも綺麗なタキシードを着こなした男性が引いてくれた椅子に腰をかける。


手近にあったサラダを口に含むと、思わず美味しいと声が漏れた。

その言葉に、たまたま視界に入ったシェフと私を呼びに来た男と天使は驚いた目で私を凝視した。

目が合うとすぐに反らし、何もない場所を姿勢正しく見つめる。

美味しい食事を食べに食べて、食べて食べて……。

お腹いっぱいになってきた。

長いテーブルに端から端まで食事が並んでいる。

椅子はいくつか置いてあるがテーブルセットが置いていない事から食べる人間が自分しか居ないと予測される。


ある程度、手を付けたところで皆さんも食べませんか?と聞いたところ、恐ろしいとでもいった様に頭を振られてしまった。

豪華な食事に、部屋の調度品、控えている人々から「こちら側のユノは」かなりのお嬢様みたいだ。


そう。ユノはゆのであった。

自殺する前の名前は倉野柚乃。

このこは何ユノなんだろうか。容姿からしてユノ何何になるか。

名前を呼ばれても違和感なく反応できるから良かった。


かなりの量を平らげたが、かなりの量の食事にユノは限界を迎え下げてもらった。

食事を残すのは、とても心苦しいが、しょうがない。



一度部屋に戻り屋敷を散策しようと天使に一人になりたいと声をかけ、広いお屋敷の中を歩き回る。

どこに何があるのかを把握する為だ。事情を説明して案内をしてもらう事も少しだけ考えたが、自分が今までのユノで無いことを伝えるのは何故かはわからないが、とても憚られた。

たまにすれ違う人は驚いた顔をしすぐに頭を下げ、私が通り過ぎるのを待つ。


なんか、こういうの英国映画みたいなので見たことあるような無いような…?、いやアンビリーバボーの再現PVとかかな。なんて考えていると。


「いや〜。本日のユノ様には全く震えが止まらなかったよ」

「食事に手を付け美味しい。ていったんだろ?聞いたよ」

「どういう風の吹き回しだろうな」

自分の話題が聞こえてきて、そっと近づく。

どうやら中庭ぽい。芋の皮むきをしているようだ。

近くに見えるドアからちらりと厨房が見えるから、料理人の作業場なんだろう。


「終いには皆さんもいかがですか?だとよ」

「食っとけばよかったじゃないか」

「馬鹿!んな事したら処刑されるだろ」

「それもそうだな」


処刑!?!?物騒な言葉に思わず身じろぎしてしまい、音がカタンッとなった。

びっくりして両手で口を塞ぎそこにしゃがみこむ。

男たちには音が聞こえてなかったようで、話を続けている様子にホッと方を撫で下ろす。

別にバレたところで、気まずくなるのは向こうだろうが処刑という言葉を聞いてしまった以上、私に聞かれたと思うと男性達がどうにかなりそうな気がした。


「そういえばさ」

思いついたような声にユノは再度耳を澄ませた。


「今日は実刑の日だからユノ様機嫌がよかったんじゃゃないか?」

「そうか…今日か」

先程の声とは打って変わって、かなりトーンが低くなる。


「何をしでかしたんだっけアイツは」

「お嬢様の残飯を食ったんだよ」

「残飯をくって処刑か」


「残飯をたべて処刑…?」

ユノの呟きと男の自称気味に言い放った言葉が重なった。

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