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第6話 再開と依頼

羽衣との会話(成立していたかは定かではない)はあの後すぐに終わった。

僕は愛する自分の家に戻り、自室の愛するベッドで横たわっていた。

「はあぁぁぁぁ……」

どうしてこうなってしまったのだろか。

早くも後悔している。

だがそれしかなかったように感じられる、僕の選ぶべき道は。

恩人である縛さんに迷惑をかけるわけにもいかないし、自分を守るためにもすべきことだった。

何回目の後悔だろうか、僕は行動してからそれを悔いることがよくある。

やってから後悔しろなんて言葉を先輩からよく聞いていたけれど、そんなのは嘘だ。

やらずに後悔したほうがダメージは絶対に少ない。


羽衣愛。活発な女の子でぱっと見かわいくて暴力なんて無縁な言葉のように思われるけれど、その中身は戦闘狂である。

暴力を愛していた。

マヤカシを知っているということも、僕にとっての悩みの種になっている。

重要人物であるのだが、なぜそんな人と戦うことになってしまったのか。

このままでは絶対に負けてしまうだろう。ボコボコにされる。

ボコボコですめばいいけれど。

僕はベッドから起き上がった。すでにあれから3時間以上経っている。

喉が渇いたから何か飲み物を取ってこようかな。

部屋から出ようとしたその時、玄関のチャイムが鳴った。

誰か来たのだろうか。

今この家には自分しかいないので、応対するために玄関に向かう。

鍵を開け、扉を開く。


「こんにちは!」


少女がいた。羽衣ではない。

匂いを覚えたって言ってたし、僕の家を襲うことも出来るはずだが、戦闘狂であるあの子が奇襲をかけることはないだろう。

まあ羽衣であったときは僕は諦めるしかないのだけれど。

ただ、目の前にいる人物がなんでもない人かといわれるとそれは違うと言い切れる。

むしろ僕には都合が悪い。

何故ならその人物こそ僕の恩人にして、もう一つの悩みの種。

縛葉夏であった。



挨拶もそこそこに、適当な会話もそこそこにして、玄関だけで話を終わらせてしまおうとしたけれど、どうやら長い話があるということなので、リビングにあげることになってしまった。

僕の部屋に女の子を入れるという無謀なことはしなかった。

冷たいお茶を汲み縛さんに差し出す。最近すっかり暑くなってしまった。

外は夕方になっているけど、十分暑いだろうに彼女は汗を一つもかいていなかった。

ありがとうございます、と一言お礼を言ってから彼女はお茶を飲んだ。僕も一緒に喉に流し込む。

ふう、と息をついてから僕はさっそく本題に入ろうとした。


「あの、縛さん。一体どういう用件で訪れたのですか?」

「それはですね……あ、その前に」

「はい?」

「私のことは葉夏と呼んでください。あとタメ口でお願いしますね!」

「は、はい…じゃなくておう。分かったよ葉夏」

「えへへーありがとうございます。私の方が年下だからこっちの方がしっくりきますねー」

「じゃあ、僕のことも呼び捨てで良いよ。気にしないし」

「それは遠慮しときます」

「あ、うん」


縛さん、じゃなくて葉夏は僕に呼び捨てにされて実に嬉しそうだった。

別にそれはいいんだけれど、何故こっちを呼び捨てにしてくれないのだろうか。

丁寧語にアイデンティティーでも持っているのか。

葉夏は嬉しそうに話を続ける。


「それでは用件をお伝えしますが、私がある組織に入っていることは知っていますよね?」

「ああ」


どのようなものかは詳しく知らないが、初めて葉夏と会ったときに組織に所属していると聞いたな。

公園で遭遇した化け物、マヤカシを退治する組織だったか。

あの巨大なハンマーも独自で作ったんだから危ない集団には違いない。


「実は私、依頼を受けまして。異生物根絶機関『グリース』所属、縛葉夏と接触した一般人相模原宗之介を確保しろという依頼を」

「え…それって」

「はい!あなたのことです。宗之介さんっ!」


彼女は僕に周りを明るくさせるような笑顔を向ける。

一方僕は背筋が急激に寒くなっていくのを感じていた。

葉夏からは僕の暗い表情が見えるはずだ。

葉夏は一切気にしていないけれど。


今明らかになった組織、僕の確保という依頼、そして羽衣との対決。

僕の行く末は未だに、定かではなかった。

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