表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の明日  作者: クソクラエス
3/3

 翌る日の朝七時。彼は病院の入口に古い乗用車一台を停めて待っていた。

 歩行することに差し支えがなかった私は、渡された服で身を包み、彼のところへと向かった。天気は晴天。久しぶりの直射日光が身に痛い。

「さあ乗ってくれ」

 彼は後部座席のドアを開けてくれた。私は小さなその扉をくぐり、クッションの独特な匂いのする車内へと入った。

 彼はドアを閉めると、運転席に座り車を走らせた。

 しばらく外の景色を見ているが、特に何かを思い出すということはなかった。

「今日はいい天気だな」

「そうですね」

 素っ気なく返す私に彼は何とも反応しなかった。

「そういえば、お仕事は何をされていたんですか?」

「君ずっと敬語だね。別にそんなかしこまらなくてもいいんだよ」

「いえ、こちらの方が話しやすいので」

「そうか、ならいいんだ。で、仕事の話だっけ?仕事はね…………学者だったんだよ」

「学者ですか」

 なるほど。それなら残っている財産も多いわけだ。

「そう。でもそんな大したもんじゃない。実際僕の作ったモノで、人の生きるための役に立つなようなモノなんて殆どないんだから」

「学者先生なのにモノをお作りになるのですね」

「そういう類の学者なんだよ」

 彼は交差点でハンドルをきりながらそう言った。

 少し大通りに出てきても、車の数は多くなかった。

「車、全然いないですね」

「戦争中だからね。鉄なんて全部兵器に使われるんだ」

「なのによく車なんて持てますね」

「待遇のいい身分だったからね」

 彼はそう返した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ