他人の恋路は蜜の味
当作品以外にもGW用にいろいろ更新中!
『マグロでホームラン! を魔法って言い張るのやめてください』
クロマグロ転生からのハイファンタジー青春熱血学園モノ。20万字。
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『この世界のガチャ運は俺にだけ厳しい~ハズレとポンコツと【☆☆☆☆☆☆☆】(レジェンドレア)な冒険者生活~』
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「ギヨ様はアゼル様のことがお好きなのですか?」
ざわっ。
その日、ウサミミロリ王妃――義姉上がおっしゃった言葉は玉座の間を揺らした。
この場に、当のアゼルパインはいない。
玉座ではGクラス冒険者――邪竜王ギヨメルゼートが、いつもどおりに横柄に座り、義姉上の頭をシュッシュと撫でている。
本来ならば打ち首ものの不敬ではある。
が『この国の王妃に対し、不敬だ』などという者はいない。
むしろ王たるヴルムト――兄上ですらそれを当然としているくらいだ。
「冒険者とはいったい何なのだ……」
というのは配下になって間もない魔王パルパの言葉。
そんなこと知るかバカ。
一瞬、沈黙した玉座の間で、もう一度レアメアが尋ねる。
「ギヨ様はアゼル様のことがお好きなのですよね?」
(おお……。なんと恐ろしいことをお尋ねになるのだ)
フルシェは震撼した。
この暴君――ギヨメルゼートが、それを認めずに否定するのではないかと。
だが、
「そ、それはどういう!?」
予想に反して、珍しく言葉に詰まるギヨメルゼート。
顔をちょっと赤くして「そ、そうだな! 余が全力で殴れる相手という意味で好きだぞ!」などと誤魔化そうとする。
が、今日の義姉上はちょっと違った。
いつもより強引な口調で「ギヨ様! そのような意味ではございません!!」と言って、言葉を続ける。
「アゼル様を愛されておられるんですか、ということです!」
「愛ぃぃっ!?」
ぼんっ! とギヨメルゼートの顔が真っ赤に染まる。
魔力を暴走させなかったことが不思議なほどの動揺っぷりである。
ここに当の勇者アゼルパインがいなかったことが幸いしたのだろうか。
そんなギヨメルゼートの反応をさして気にした様子もなく、レアメアが頬を押さえる。
「だって、一緒に転生されたんですよね!?
死ぬ間際に『来世も離さない』だなんて……きゃーっ! 昨日読んだお話みたいで素敵です!」
「お、おい。勘違いするな!? 確かにあやつと共に転生はしたが!」
あたふた。
珍しく……本当に珍しくギヨメルゼートが動転してる。
だが、どうということはない。
(中学生並みの恋愛だな……)
本当に他愛もない。
言ってしまえば、好きな男の子にちょっかいを出すとかいう、そういうレベルの話なのだ。
もっとも、それが国家レベルの災害になりかねないのが、この暴君の暴君たるゆえんではあるのだが。
同席していた元魔王のパルパがツンツンとフルシェの袖を引っ張る。
「(……アゼル殿とギヨ殿は殺し合いをするほどの宿敵ではないのか?)」
フルシェは肩をすくめた。
どうやら魔族の恋愛観とは、人間種族と違うらしい。
「パルパ殿、あれは『殺し合い』でも『殺し愛』だ。
命をかけて、愛を確かめあっておるのだよ」
「に、人間とはずいぶんと物騒なことをするのだな!?」
これだから魔族は困る。
見たらわかるではないか。ふふん。
「……フルシェ、お前もずいぶんと連中に毒されておるぞ」
なぜか兄上にツッコまれた。
――ともあれ。
「なるほど!」
義姉上が手をパンっと叩く。とても嬉しそうに。
それもそのはず。女にとって、他人の恋愛話ほど楽しいものはないのである。
「いいでしょう! わたくしにお任せください!」
「お、おい。レアメア?」
彼女はどうやら、言質をとることは諦めて実力行使に出ることにしたらしい。
有無を言わせずに、王妃としての威厳を発揮し、あちこちに命令をしだす。
「さあ、そこの侍女。これからわたしが言うものを用意するのです。
フルシェ様とパルパ様はわたしと一緒に作戦立案を!」
昨日読んだお話とはいったいなんだったのだろう……。
よく見ると、徹夜で読んだのか目の下にクマ。
徹夜明けのハイテンションがなせる業であった。
フルシェとパルパが口をつぐんでいると、何か勘違いしたらしい。
メッと言わんばかりに、レアメアがふたりに指を突きつけてくる。
「……確かにこれはミッション・インポッシブル。
ですが、『鬼の戦姫』と『暁の魔王』が力を合わせれば不可能なことなどありませぬ!」
ぐぐっとレアメアが拳を掲げ、玉座で力強く宣言する。
「そう。ギヨメルゼート様の魅力を、アゼル様に見せつけてやるのです!!」
――デート大作戦、開始!




