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とある国の子供たちのエチュード  作者: 梁瀬モモ
ネクサス・ノクターン
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ブラッド・ノクターン

あれから数日が経った。

あの日もあの後結局また教会へ行った。次の日も、その次の日も。

けれどあの1回以来泊まった日はなかった。


最近サホは両親…主に父親からの虐待は受けていないらしい。

怪我の色も薄くなったし、治った傷だってある。


「今日は来ないのかなぁ」


朝の9時ちょっと過ぎ、いつもだったら玄関を開けて二階の私の部屋に来るのに。

横目でサホの部屋を見ても、今日はカーテンも窓もしまっていて中の様子が分からない。

絶対カーテンは閉めないって約束したのに。


「ちょっと行って様子を見に行こう…。イヤな予感がする」


心のどこかで、今までの平穏な数日間を一変させる“何か”が起こってしまう、もしくは起こっているのではないかと思いはじめた。

急ぎ足で支度をして、万が一の為に家にあった小さなナイフを持って家を出る。


「サ、サホ~…」


インターホンのない彼の家、ドアをノックしても応答はない。

ドアに耳を当て、中から音がしないか、耳に全神経を集中させる。


「いた…ぃ…、とうさん…やめて…」


サホの声だ。


バン、と勢いよくドアを開ける。鍵はかかっていなかった。

玄関に立つと薄暗い廊下の奥の部屋、ガラス戸に2人の影が見えた。


「サホ!!!!」


土足のままだが仕方が無い、今はそれどころじゃない、そう直感で感じた。

ガラス戸を体当たりで思い切り壊す。

ガシャーン、音と共に、サホのお父さんであろう人に私が体当たりをし、3人とも部屋に散らばる。


「ミツル…?駄目だ!!逃げて!!ミツル!!」


いてててて…、とよろける。幸いガラスによる怪我はなかった。

サホの声で顔を上げると、其処には割れた酒瓶を持ったサホの父親と、頭から血を流し片目を閉じたサホ。

折角治った傷が、また、増えた。


「サホ!!逃げて!!」


ポケットから、私の手のひらくらいの大きさのナイフを取り出し、構える。

使った事もない、初めて今日手にするモノ。


「駄目だ!!父さん!ミツルに怪我させないで!父さん!!」


よろよろ、と、酒に酔っているのか、サホの声は届いてないようだ。

私の方に割れた酒瓶を向け、ゆっくりだが近付いてくる。


「~~~~!!!」


声にならない唸り声と共に、酒瓶がふるわれる。

意外にも私は冷静で、避け、サホの手を取る。


「逃げるよ」

「…うん!」


ぎゅ、とサホが私の手を握り返す。

ナイフを口にくわえ、空いた手でサホの靴を取って外へ出る。


「もうちょっと、警察、行けば…っ」


はぁ、はぁ、と息を切らせながら2人で走る。

時折後ろを見ると、私たちが走った赤い足跡が残っていた。


「…ここまでくれば、大丈夫」


サホに靴を渡し。サホはそれを履く。


「警察に行こう、…お母さんは」


サホの顔を見ると、サホ本人かどうか分からないくらい赤くなっていたり腫れあがっていたりした。


「き、君達どうしたんだい!!」


偶然通りかかった警察官に私たちは見つかり、保護された。

サホは病院へ、私はその付き添い。あと交番で家であったことを話した。

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