アドバイス・ファンタジア
「私と契約するの、ミシェル。貴方のお父さんみたいに」
父さんみたいに?どういうこと?無意識に僕は考えることをやめた。
駄目だ、考えちゃダメ、幼い脳は本能的に拒絶した。
「だ、めだよ。僕、駄目だ、そんな、それは僕の力じゃない」
「そうよ、でも貴方のお父さんも、そのお父さんだってそうしてきたの」
ベッドから軽やかに降りた天使はツン、と僕の心臓のあたりを人差し指で触れた。
ドクン、と心臓が鳴る。
彼女の記憶だろうか、僕に似た少年達と何か話しているように見える。
あれは…父さん?父さんだ、今僕に見えているのは、何だ?
「ねぇ、気は変わった?それともショック受けちゃった?」
指を離されると、僕は抜け殻のようにその場に座り込んだ。
今僕の目の前で起こっている出来事は本当に現実なのか?夢なんじゃないか?
「な、泣かないでよ。貴方のお父さんに頼まれた事なんだから」
「な…、いてない、触るな…っ」
泣いた僕を困った様に撫でようとする妖精の手を乱暴に払う。
嫌だと泣きじゃくる僕の声を聞きつけてか、メイドたちがコンコン、と部屋のドアをノックをする。
「ミシェル様…、ミシェル様、どうなさいましたか」
「…明日、また来るわ。それまでに答えを決めておくのよ」
「どこに…行くの…」
「今日の事は全部夢よ。忘れなさい」
ぽん、と最後に頭を撫でられ、僕の意識はゆっくりと遠ざかった。
最後に、妖精が悲しそうな表情をして窓から飛び降りた。ほぼ同時にメイドが部屋に入ってくる。
抱き起こされた僕は何も喋る事はなかった。




