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とある国の子供たちのエチュード  作者: 梁瀬モモ
ネクサス・ノクターン
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ホーム・ノクターン

「もう!!なんど言ったら分かるの!!!」

「お前こそ!仕事から帰ってきた俺に対する態度か!!」


ああ、またか。音を立てないようにしないとね。

一体、数年前までのあの仲の良かった私のお父さんとお母さんは誰が連れ去ってしまったの?

花瓶が割れる音とか、椅子が倒れる音とか、朝も聞いた気がする。


「…あら、満、帰ってきてたの」

「おかえり、満」


2人が喧嘩している部屋のドアの前に立つ私を見るなり、2人の態度は豹変する。

普通の家の、普通の夫婦らしく、自分らの子供に「おかえり」と言う。

喧嘩で倒した椅子を何事もなかったかのように元の場所へと戻すお父さん。

夕飯の支度の途中だったのか、冷めた鍋を温め直すお母さん。


そう、これが“私の家族”


私は何も言わず、洗面所で手を洗って再び2人が喧嘩して居たリビングへと戻る。

お父さんも仕事着から楽な格好へと着替えていた。

今日はどっちも怪我しなかったのか、と床を見て思う。


「今日、綺麗な貝殻見つけたの。お父さんとお母さんにあげるね」


2人の機嫌を窺うように私は昼間浜辺で拾った貝殻をリビングのテーブルに置く。

ピンクの貝殻と、マリンブルーの貝殻。…まるで夫婦の様。

お父さんも、お母さんも、気に入ってくれたみたい。

あんなに怒っていたのに、2人とも顔を見合わせて笑っている。


「ふふ、ありがとう、満。…ほら、ご飯にしましょう」


お母さんに撫でられる。

お父さんも椅子に座ってお酒を飲んでる。

私もお母さんも椅子に座る。お母さんの作るご飯は美味しい。


ご飯を食べながら、今日何があったか聞かれて、それに答える。

海の事、夕焼けの事、貝殻の事、それと、綺麗な魚の事。


「そうかそうか、でも、あの岩場は危ないって言っただろう?…気をつけていくんだぞ?」


わしゃ、とお父さんに髪を撫でられる。

お父さんはやっぱりお父さん、お母さんと違って乱暴だもの。


さっきから、お母さんって呼んでるこの人は、本当のお母さんじゃない。

ちょっと前にお父さんがつれてきたから、お母さんって呼んでいる。

ちょっと前、といっても、4年位前だ。私の髪がまだ短かったから。

そして最近になって上手くいっていないらしい、すぐに喧嘩をする。


前のお母さんとの時は、全く喧嘩なんてしなかったのに。

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