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とある国の子供たちのエチュード  作者: 梁瀬モモ
イノセント・エレジー
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リボーン・エレジー

朝、目が覚める。眩しい太陽の光と、元気のいい子供たちの声で。


「サホくん、おはよう。眠れたかしら」

「…おはようございます」


起こしにきてくれたのか、昨日僕をバス停まで迎えに来てくれた女性がベッドのそばに立っていた。

窓際の小さな棚に置かれた花瓶には、昨日この部屋に来た時とは違う花が生けられていた。


「ごめんなさいね、朝、うるさくって」


その人は少し申し訳なさそうに廊下で騒いでいる子供たちの方を見ながら言った。


「大丈夫です…あの」

「ああ、朝ご飯、この札を持って食堂に行ってね、そしたらもらえるから」


何を勘違いしたのか、昨日「先生」と呼ばれていた女性は僕に一枚の木の札を渡す。

忙しそうに僕の部屋から出ていくと、子供たちが先生に声を掛けるのが聞こえてくる。


「…海部…幸帆…」


自分の名前が書かれた木札をなぞる。木は彫られたばかりなのか、まだ木屑が少し残っていた。

あの家から出ても、この名前は変わらないのか。そう思うと胸がじんわりと締め付けられてしまう。


「ミツル、どうしてるかなぁ」


快晴の空を窓から眺めてぼんやりと呟く。

僕は、逃げたんだ。あの監獄の様な家から。


今は新しい生活に専念しよう、そう昨日バスの中で決めたのに。

ミツルの事だけが、頭から離れなかった。


僕は、どうやら児童保護施設にきたらしい。

暗かったけれど、昨日、門の所に看板があったのをみたからだ。


そしてあの人が、今日から僕の「母さん」で、「父さん」もいるらしい。

その人達がどんな人たちであれ、本当の僕の両親よりはまともな人なんだろう。


ベッドで寝たのは初めてだった。白い布団で寝るのも、何年振りだろうか。

ふかふかの白い、まるで綿の様。触れてしまえば消えてしまいそう。


床に足をつく、昨日、何日かぶりにお風呂に入った。

僕の家では水と赤い水しか出なかったけれど、此処は違った。

透明なお湯が出て、赤い水なんて出なかった。

汚れきっていた僕の服も、施設の先生が用意してくれた服に着替えた。


僕は生まれ変わった様に、綺麗になっていたのだ。

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