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冬の女王と三人の旅人

作者: 御影石

久々に書いたので少し疲れました…

でもやっぱり書くっていいですね。

ーさて、始めましょうか


男がそう言うと、先ほどまで聞こえていた騒ぎ声が一切合切消えてシーンとなる。

男は旅人だ。旅先での面白い話を聞かせてくれる。

普通自分たちの国から出ない人々にとって、彼の話は刺激になる。聞き逃してなるものか。

音が消えると同時に音色が響く。

男の隣に座る少女の笛だ。


ーはてさて今日は、なんの話をしましょうか?

南の砂漠にいた心を持った魔獣の話?

北の大地に立つ巨像の伝説?

東の海の上での神獣と美女の恋物語?

それともそれとも西の密林でおこった戦争とそれにまつわる英雄譚?

いえいえ今日はとっておきとっておきの話をしましょう。


そう言うと男は、話始めた。

雪の女王と三人の旅人の話を


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


これはとある国のお話

その国には四人の女王さまがいた。

一人目は、表情豊かな春を司る春の女王

二人目は、元気な夏を司る夏の女王

三人目は、知性的な秋を司る秋の女王

四人目は、無表情で無口な冬の女王

彼女ら四人は、女王と言っても権力はなかった。

けれども、彼女ら四人は大事な仕事があった。

それは、国の真ん中にそびえる高い塔

そこに変わりばんこに住むことで季節を回す。

そんな大事な仕事があった。

ところがあるとき困ったことに、

冬の女王が出て来ない

なぜかと理由を聞くと

その年に生まれた氷の生き物、その生き物を殺したくないと言ってきた。

それを聞いた国の人々は、冬の女王の言うことだからと言うことで氷の生き物助ける方法色々色々考えた。

けれども、何1つ完璧な解決策はできなかった。

そして、国の人々は諦めて、冬の女王にも諦めるよう言った。

ところが冬の女王はこの氷の生き物がとても気に入ってしまっていてね。


「なら、冬は終わらせない」


そう言って塔の扉を閉めて中に引きこもってしまった。困ったのは国の人々、確かに冬でしか生きれない氷の生き物は可哀想だが、冬が永遠に続いてしまうと今度は自分たちが餓死してしまう。

これに困った王様は一つのおふれを出した。

内容はこうだ。


冬の女王を塔からだし、無事季節を回らせたものには、何でも好きな褒美を与えよう。

ただし冬の女王を殺したりしてはいけない。


このおふれは国中に広まった。

けれども、誰も冬の女王を塔の外へ出そうと挑戦するものはいなかった。

何故なら人々は知っていたからだ。

冬の女王は頑固で、一度決めたことは曲げない性格。

だから、何かしら解決策を見つけない限り塔の外へは出て来ない。


人々は諦めてこの長い長い冬をどう過ごそうかと考えた。そうしていると、一人の旅人がやってきた。

旅人は名の知れた武人で、その拳は大地を揺らし、蹴りは遠く一里先まで威力が届くとまで言われた男だった。

ところが、有名になったせいかそれとも元の性分か。

男は少し調子に乗っていてね、自分の力で、解決できないものはないと思っていた。

だから男はその国の現状を知るとすぐにこう言った。


「俺がその冬の女王を塔の外に出してやろう!

なになに俺にかかればこんな事お茶の子さいさいよ。

冬の女王を外に出した暁にはそうだなぁ。

女王を嫁にでももらうか!」


と取らぬ狸の皮算用をして、笑いながら塔へと向かった。塔に着くと男は、しまっていた扉を殴って壊し、

冬の女王の元へとついた。

そして、冬の女王にこう言った。


「お前が冬の女王か?お前を外へ出せって言われてるんで、出しに来た。お前がいますぐ塔から出るなら何もしないが、出ないって言うなら力付くで出すぜ?」

「うるさい。私は出る気などない。」


冬の女王がそう返すと男は、


「ああ、そうかよ!」


と言って女王を掴んで運ぼうとした。

するとどうだ。女王を掴んだ手から少しづつ体が氷に覆われていくじゃないか。

男は自慢の力で氷から抜け出そうとしたが、氷は壊されるたびにまとわりつく速さをあげた。そして遂には、顔以外の全てを氷が覆ってしまった。

そのあと男は塔から出され、氷の中で寒い思いをしながら一夜を過ごした。

次の日男は国の人に助けられると恥ずかしそうに去って言った


はてさて、こうしてるうちに蓄えている食料にも余裕がなくなって来た。これではいけないと考えるも、どうしても冬の女王を外に出す方法が見つからない。

そうしていると、一人の旅人がやって来た。

旅人は多くの国で指名手配された詐欺師だった。

彼は、詐欺師とわかっていても騙されると言われるほどの話術の持ち主だった。

そして今の国の現状を知るとこう言った。


「なるほど、どんな願いも聞くのですね?

ならば私が冬の女王を外に出して、私がこの国の王様となりましょう。」


そう言って塔へ向かった。

詐欺師は、直された扉を開けて、冬の女王の元へたどり着くとこう言った。


「あなたの生かしたいと言っている氷の生き物とはどんな生き物ですか?」


冬の女王は氷の生き物を指差した。

氷の生き物は小さなウサギだった。

透き通った氷でできた手のひらサイズのウサギ

そのウサギが跳ね回っているのを見た詐欺師は言った


「よかった」


この言葉に驚いた女王は、


「何が?」


と聞き返した。すると詐欺師は一つの箱を取り出してこう言った。


「この木箱には、氷を冷やす魔法がかかっています。

窮屈な思いをさせるでしょうが、この中にこの子を入れればこの子は死なないで済むでしょう。それにしてもこの子の大きさにあってよかった」


もちろんそんな魔法はかかっていないただの箱なのだが、女王はその言葉を信じてしまった。

そしてウサギを木箱に入れ塔の外へ出ようとした時だった。扉の向こうから声がする。耳をすますと、

何でも、男は詐欺師らしい。それに、木箱は、男が酒場から持って来たものらしい。

女王は木箱の匂いを嗅いだ。するとどうだ酒の匂いがするではないか。すぐに騙されたと気づいた女王は、詐欺師を凍らせこう言った。


「次に私を騙そうとしたら今度は国中が凍ると思え」


詐欺師は結局捕まって牢屋に入れられ死ぬのだが、

最後の最後死ぬ迄ずっと失敗したのは奴等のせいだと噂をしていた人々を罵っていたらしい。


そろそろほんとに備蓄も尽きて来た。

死んでしまいそうな子供もいるぞ。

もはや猶予はないのだ。冬の女王を殺してでも、季節を変えなければ!そう考えた人々は、女王を殺す準備を始める。そうしていると一人の旅人がやって来た。

旅人はその国出身の詩人で、特に名が売れているわけでもなければすごい特技があるわけでもなかった。

けれども詩人はこう言った。


「僕が、女王を外に連れ出そう。

別に褒美はいらない。ただただ僕のすることを止めないでほしい」


そう言ったことを聞いて、国王は驚きながらも了承した。そして、詩人は塔へと向かった。

塔は氷に囲まれていた。

詩人は塔の中へと踏み入ると女王の元へ急いだ。

そして女王に面と向かっていろんな話をした。

自分が今まで旅して来た国々そこで見たもの聞いたもの全てを面白おかしく話した。それこそ無表情無口な冬の女王が笑うくらいに、そして話が終わるとこう言った。


「僕と一緒に旅に出ないか?知っているかい?

世界にはこの国が春の時冬になる国もある

もちろん夏の時や秋の時だって冬になる国はあるんだ。そう言う国を、僕と一緒に旅しないか?」


そう言った。それを聞いた女王は、


「嘘じゃない?それにそれだとこの国に冬が訪れなくなる…」


そう言った。それを聞いて詩人はこう言う。


「このまま国にいても君は国の人に殺されるだけだ。知っているかい?もうみんな限界なんだ。それに、この国には一年ごとに訪ればいいじゃないか。

それに僕の行動を止めないでくれと言ってあるから止めようがないよ」


その言葉を聞いた。女王は、わかったと短くつぶやき旅支度をした。

そして、詩人は女王と一緒に塔を出た。

塔を出るとそこには、一面の銀世界とその上に立つ武装した人々がいた。

人々は詩人と女王の姿を見つけると、安堵した顔でホッとため息をついた。女王はその後人々に謝罪と別れを告げて、旅立つ。その横には詩人が、頭にはどこまでも透き通ったウサギがいた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふう、さておしまいだよ!」


旅人が声を出すと先ほどまで静かだった酒場に喧騒が戻る。耳をすますと、武人は誰それだ。や、詐欺師はあいつだ。いいや違うね彼奴だ。などと言った声が聞こえる。みんな、先程の旅人の話に出て来た人物を当てようとしているらしい。中には、女王と詩人の仲はどうなったのかと言った声もある。やはり皆、恋物語が好きなのだろうか?


「マスター、これとこれ頼む」


そう考えていると旅人が注文を入れて来た。

物語の余韻に浸かりたいものだな私も…

…そういえば

注文された品を作りながら旅人に聞く。


「先程の話…最後に出て来た詩人ってあなたじゃないですか?」


そう聞くと、冬にしか訪れない不思議な旅人は

少し笑って、


「さあ?どうでしょうね?」


そう言った。

その横で、フードを被った無表情な少女が

少し…笑った。


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