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ドラゴンプラネット RE:turn players  作者: 級長
chapter1 暴走プロトタイプ
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番外 バレンタインがバースデー

 本日、2月14日はリメイク前から設定のあった直江遊人の誕生日!

 これは遊人が中学生だった時の話。

「げー、なにこれイジメ?」

 俺は下駄箱を開けて溜息をつく。冬には静電気を纏う鉄の下駄箱には、ギッシリとチョコが詰まっていたのだ。

 ラブレターの時はそんなに困らなかったが、食い物となると話は別だ。いくらビジュアルが他の男子と違って線も細くて中性的(当クラス女子比)とはいえ、靴は匂うものだ。そんな匂いに学年の終わりまで付き合ってくれた下駄箱もだいぶ匂う。

 んなとこに食い物を突っ込むなと言いたいね。ラッピングも凝っている。なら尚更、手渡しせねば。

 俺はチョコレートを回収しながら、学ランのポケットに入れておく。この量は、どうしたものか。


 中学時代、俺はハッキリ言えば『モテた』。というのも客観的に見てビジュアルは悪い方じゃないしな。肌が弱いから、この時期から洗顔フォームで丹念に洗ってたのもあって清潔感も同世代の男子がニキビだらけ脂だらけの中一線を画していただろう。

 肌が丈夫な連中はともかく、俺は肌荒れが地獄の痛みだからな。痛みが引くと騙されて塩水で傷を洗って潮風で乾かしている因幡の白兎をリアル体験出来るレベルだ。

 モテた理由はそれだけじゃない。ビジュアルは悪い方じゃない、なんて言うがそれでもアイドルとかには劣るし。非常に気にくわないことだが、アルビノであることも理由の一つらしい。なんでも肌の白さとか他と違う雰囲気とかがいいんだとよ。くっだらねー。


 教室に入ると、俺は机を確認する。去年一昨年の経験から、ここにもあることはわかっている。やっぱり、下駄箱には入り切らなかったのか、クラスの女子は下駄箱を他のクラスの女子に明け渡したからなのか、机にも入ってやがる。

 机にも入っていたチョコを、俺は教科書類と入れ替わりに投入して観察していく。置き勉はしない派だ。通学に持ってくダンベルみたいなもんだからな、教科書ってのは。運動しないのに、ここで体鍛えんでどないすんねん。

「ん? これはクッキー?」

 中には他の女子との差別化のためか、チョコクッキーもある。とはいえ大半は市販のチョコを溶かしたもの。いや、それすら『何を溶かした』かで差が出るな。

 板チョコを溶かすのは不正解だ。製菓用に湯煎するためのチョコが売られている理由を考えてみろ。板チョコはあれで完成なのだ。あれを食べた時の口どけや味を計算している。

 だから板チョコを溶かして固めるのはただ悪戯に品質を劣化させているに過ぎない。そこは食べて差を楽しむとするか。

 バレンタインという催しは気にくわないが、手作りの品を多く楽しめるのはいい。その質が良かれ悪かれ、こう燃え上がる何かがあるな。

 一ヶ月後を楽しみにしておれ、女子の諸君。


 実は今日、2月14日は俺、直江遊人の誕生日だ。アルビノだからか病弱だからか両親に捨てられた俺は、産まれたその日くらい喜ばれたんだろうか。

 この日は病院でも、渚や婦長が祝ってくれた。姉ちゃんちに引き取られてからはお袋さんや爺さん、姉ちゃんにも祝って貰えた。

 誕生日を祝って貰うってのは、産まれたことを喜ばれているんだろう。だから俺は、今日はバレンタインの贈り物じゃなくて誕生日のプレゼントが欲しいんだ。

 と、そんな事を思いながら図書室へ入る。俺は文芸部に所属している。とはいえ、この部は運動も出来なきゃ吹奏楽や合唱もからっきしな奴らの避難所みたいなもんだがな。

「あ、直江先輩」

 本棚に囲まれ、長机とパイプ椅子が並ぶその部屋には後輩の女子が一人いた。

 ショートヘアに眼鏡と実に図書室が似合っているがその中身はゴリゴリの理系。真田理架とは奴のことだ。

 読んでる本も科学雑誌のニュートンだし。

「今日はお誕生日でしたね。ご用意してますよ」

 理架はわかっている。俺がバレンタインよりも誕生日を祝って欲しいと思っていることを。いい後輩だ全く。

「はい、15歳のお誕生日、おめでとうございます」

「おお、ありがとう」

 ラッピングされた袋にはハンドクリームが入っていた。うーん、わかってる。

「先輩を見ていますと、子供の時、僅かな間だけ友達だった男の子を思い出しますね」

「ああ、前に言ってたアルビノの男の子か」

 理架が俺を気にするのは、過去の出来事が原因だと聞いている。母親のお見舞いに来ている間、その僅かな間だけ一緒に遊んでいたという年下らしき男の子。そいつも俺と同じアルビノだったそうだ。

 母親が亡くなって病院に行くこともなくなったため、そいつの行方はもうわからないらしい。大きくなって病院に確認したら退院したってことで連絡先もわからないときている。

「あの子がどうしているのか心配ですけど、直江先輩を見ていると、きっと大丈夫って思えるんです」

「そうだな。俺もそいつに会ってみたいぜ」

 俺も入院してて、本人の病気とか親のお見舞いとかで付き合う友達が取っ替え引っ替えだった時期はある。クラス替えよりも頻繁なため、俺もあまり一人ひとりに執着はしなかったが、向こうからは理架みたいに引きずる程の存在になっているんだろうか。

「俺も入院してた時の友達でも探して、連絡してみるか」

「それがいいですよ。元気な姿を、皆さんに見せてください」

 俺は理架に言われて、そうしようと思った。もう元服だって越えたし、二十歳まで待つのは遅い気がするし、ちょうどいい時期かな。

 実はこのリメイク版、地味に吸血姫事件(リメイク前でいう切り裂き魔事件)が起きたタイミングで登場しているキャラクターがリメイク前より結構減っているのだ。

 今回登場した後輩の真田理架はともかく、お見舞いパートにはもう一人クラスメイトもいたし、お見舞い中に遊人の姉も理架の父親も出てたし、このタイミングでは既に中学時代の担任も出てたし。

 結構削減して今回のメインは遊人、夏恋、煉那、佐奈であることが強調されただろう。

 リメイク前は主人公が三人交代制で一年じっくりやっていたが、今回は主人公が遊人固定。三人目の主人公(真田理架)までお預けだった吸血姫事件の真相も大きく前倒しになり、二人目の主人公がメイン張ってた『サイバーガールズ編』以前に解決する予定。

 これから五年以上前のリメイク前を読む人も読んだ人もいないだろうけど一応、リメイク前との比較をば。

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