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ドラゴンプラネット RE:turn players  作者: 級長
chapter1 暴走プロトタイプ
13/23

番外 バレンタインがバースデー 二回目

 お馴染みの誕生日イベント。今回は長篠高校での話だ。

 正直もっと本編進んでいると思ったよ。

 今年もこの季節がやってきた。VD。終わりを告げる評決の日、ヴァーディティクトデイではない。アーマードコアの新作待ってます。

 バレンタインデーだ。同時に、俺の誕生日でもある。

「あ、あの……」

「んん?」

 俺は廊下で見知らぬ女子に声かけられ、ただ困惑していた。上履きの色見たら先輩じゃねぇか! 一体なんだというのだ?

「こ、これを……」

「ん、ああ、ありがとな」

 小さな包みを渡すなり、その女子はさっさといなくなってしまった。これで何回目だ? 下駄箱に突っ込まずに手渡ししてくるのは中学からの進歩だとは思うが。

「またチョコか……」

 何というかモテるのは相変わらずだな。アルビノ込みなのが不服だが。まったく、こんな日の下に出るのも一苦労の男、どこがいいんだ?

「あら、よくおモテになること」

「夏恋か」

 この様子を見ていた奴がいた。夏恋だ。何の様だか。チョコならもう腐る程あるぞ。

「言ってくれるな。あいつら、アルビノの物珍しさに浮かれてんだよ」

「あら、いつもの目敏さが無いわね。凍結でもしたの?」

「そういうお前は氷点下でキレが増してんな」

 夏恋の毒舌は相変わらずか。なんというか、もう癖なのかそれ? 必要無くなったと思うんだが、俺には何故か継続してんだよこれ。

 俺は俺で寒い中の通学は命がけだ。マイナスに達した外気を吸い過ぎると肺炎で入院コースだし。

「あんた、別に黒っぽくても今の状況は変わらないと思うけど」

「そうかぁ?」

 夏恋のフォローは有難いが、とてもそうは思えない。弟の順という参考資料が今年は見れたが、あれはもうあいつの愛嬌込みだぞ。俺だったらああはならん。

「この一年、活躍したじゃない。私のことも、煉那のことも。あんた、仮面ライダーの俳優が次回作の冬映画に出るくらいには見違えたんじゃない?」

「まぁ、色々あったな……」

 たしかにこの一年、結構あったないろんなこと。もう俺最終フォームに直接変身出来そうだよ。

「ま、大変な一年だったけどありがとう。これ、誕生日のお祝い」

「お、ありがとう!」

 つい声が出てしまう。バレンタインと被る都合、家族以外からは誕生日を祝われる確率が低いんだ俺は。

「な、なによそんな元気になって」

「バレンタインに浮かれて忘れられがちなんだよなー」

 夏恋がくれたのは小さな包み。一体なんだろなー。まぁ何でも嬉しいけどね。中には、なんか高価そうな化粧箱。ウッソだろお前、理架でさえ消耗品なのに。

「き、金属アレルギーについて聞かれたのはこれか……」

 中身は貴金属のブレスレット。高校生がクラスメイトの誕プレにアクセサリーってお前……。なんか夏恋にしては無理やりな展開でアレルギーの話になって、金属アレルギーについて聞かれたっけ。アレルギーといえば食べ物か花粉の話になるだろうになぜ金属? とは思ったが。

 俺はこう見えてアレルギーは花粉すらないんだ。

「あ、今私のこと重い女だと思ったでしょ」

「ギクッ!」

「それただのアクセサリーじゃないから」

 俺の考えは夏恋にお見通しってわけか。ただのアクセサリーじゃないって言われても嫌な予感しか……あれ? このブレスレット、説明書が入ってる。

 いや、パンフとかじゃなくて取り扱い説明書だ。

「それはアプリと提携して健康を管理してくれるやつなの。いちいち体温とか血圧測らなくていいでしょ?」

「スゲーの来たな」

 なんだ。ただの便利家電か。そうだな、ちょうど健康管理に色々測るの面倒だったんだ。これは便利。

「それじゃ、これ使って長生きするのね」

 夏恋はそう言うと、即座に立ち去ってしまう。とりあえず俺はこのブレスレットを左腕に付けておく。アプリのダウンロードなら、またゆっくりやるか。外だと通信制限がキツイし。


「まったく、どうやって帰ったものか」

 放課後、教室に帰った俺は机いっぱいのチョコを見て途方にくれていた。まさか鞄にも入らないとは。基本的にバレンタインだからといってチョコを持ち運ぶ袋など用意しない。そんだけ準備してチョコ無かったら恥ずかしい奴だし。

 机に山盛りのチョコは、どう考えても通学用の鞄に入らない。今持ってる教科書全てを置き用具しても無理か。

「義理含めるとヤベーイ数だな」

 クラスの女子もドンドコドンと義理チョコをくれたので困る。

「あ、直江くん。まだいたんだ」

 そんな俺のところにやって来たのは藤井佐奈氏。何かアニメっぽい絵のついた紙袋を手にしている。まさかそれに入れていけと?

「佐奈か。それ何?」

「はい誕プレ」

「おう」

 流れる様に渡された紙袋。まさかこれが誕生日プレゼント。あ! よく見たらこの紙袋、墨炎が書いてある。

「これは……」

「誕生日記念の合同誌。今度のドラプラオンリーでも販売するよ!」

 なんと俺の合同誌。いや待てなんで一プレイヤーの合同誌なんか出るんだ。ラディリスとかティアみたいなトッププレイヤーならともかくさぁ。

「おいおい、よく人集まったな。いや、待て待てピクシブランキングで上位来る様な人ばっかだぞ?」

 そのメンツも豪華なのなんの。何故だ。

「ノベルティもあるよ」

「おー、凄い」

 オマケにアクリルキーホルダーにラバーストラップ、クリアファイルや缶バッチと盛りだくさん。これ凄いとしか言えんな。しかしなんでこんな企画が進んだんだ?

「多分イベントには来れないだろうし、委託も売ってくれるところ岡崎に無いからここで渡すね」

「それはいいんだが、なんで俺の墨炎なんだ?」

 知名度のあるプレイヤーではないだろう、俺。そもそもオンゲの同人誌って自キャラかNPCでやるものだぞ? 他人のキャラでネタになった奴ってブロントさんくらいじゃないか?

「ほら、プロトタイプ騒動以降、いろいろあったじゃない」

「まぁあったけどさぁ。あれ別に俺でなくても解決出来たぞ?」

 確かにこの一年、ドラゴンプラネットオンラインを揺るがす事件に関わっては来たが、戦力的な貢献は微妙なところ。下手するとおいしいところだけ持ってった感半端なかったな。

「そこがいいんじゃない。自分で無くてもなんとか出来ることにこそ立ち上がるのが。あと可愛いし」

「そこかー」

 うん、やっぱ可愛いは正義だったか。リアルが男だと知られているのでアイドル扱いまで行かなかったのはゲームの進行に悪影響無くて逆に良かった。


 さて、佐奈から紙袋を貰ったはいいが、結局この紙袋もいっぱい入っているので使えない。本当にどうしたものか。あれ? そういえば去年どうしてたっけ?

「おーい、遊人。いるか?」

 途方に暮れていると、煉那が教室に入ってきた。手には大きなビニール袋とブラックサンダーが一個だけ。チロルと並んで一目で義理と分かるチョコ、いいよね。日が短い冬は、もうこの時間に夕暮れとなっていた。

 夕焼けに照らされた彼女は、出会った時より大人びたかもしれない。髪が伸びたせいなのか、以前よりいろいろな顔を見せてくれるからなのか。

「何してんだ?」

「義理配り。どうせこんなこったろうと思ってね。最後に回した甲斐あったよ」

 予想通り、義理チョコを配っていたのか。運動部のマネージャーがやりそうだがこいつはエースストライカーか。煉那は袋ごとチョコをくれる。袋はスーパーの大袋ってくらいには大きく、貰ったチョコを全て入れられそうだ。

 これに貰ったの入れろってか。ナイスアシストだ。

「神かよ」

「もらうことわかってんのに準備無い方がどうかと思うぞ?」

 そうは言いましてもね。

「いや、初めから貰う気満々ってのも恥ずかしいし」

「ビニールなら畳んで鞄の底に突っ込んどけばそもそも見つからないし、バレてもいつぞやの買い物のやつで押し通せるぞ」

 天才かよ。そうか俺は即座にあっと察してしまうから考えたことも無かった。普通は分からんかそういうの。

「んで、誕プレな。文科系の男が何貰って喜ぶか私わかんねーから期待すんなよ?」

 そしてスッと差し出される誕生日プレゼント。何の飾り気も無い紙袋にはルーズリーフの紙やシャーペンの芯、消しゴムが入っていた。学生が絶対使うやつだ。不要にならない消耗品とか最適解かよ。

「おーありがたい」

「さて、用事も終わったし帰るか」

 そのまま何の後腐れもなく煉那は俺に背を向けて教室を立ち去ろうとした。だが、俺は聞かねばならないことがあった。

「煉那」

「ん?」

 振り向いた彼女は不意を突かれたのか、力の抜けた、無防備な表情を俺に見せる。目をいつもよりハッキリ開き、惚けたように口を開く。

「どうした?」

「ん、ああ!」

 俺は一瞬、一年も一緒にいるのに初めて見た表情に見惚れてしまった。そうだ、聞こうとしたことがあったんだ。

「煉那の誕生日っていつ?」

「え? 7月20日だけど?」

 そうか、これでお返しができるな。欲を言えば早い内に聞いておきゃ去年祝えたんだがな。

「んじゃ、お返し期待しとけよ」

「あー、そういうことか。いいよ、こんなのでお返しとか悪いから」

 煉那はバツが悪そうに顔を背けて頭をかく。なんかかわいい。

「そう改まるな。文房具をお返ししてやるよ」

「な、ああ……はは、そう、だな」

 そこで少し意地悪してやる。煉那は少し笑って顔を赤くした。それを確認した俺は先に教室を出る。これ以上見ていると、顔がにやけるのを隠せそうにない。

Q:なんで長篠高校は岡崎市矢作町にあるのに長篠(現在の愛知県新城市)っていうの?

A:最初は学校の名前なんて適当だったんです。主要キャラが戦国武将の苗字を取っていることから学校名は戦いの名前にしようと。

 流石にそれではマズイけど今更学校の名前を変えるのもあれなので劇中では

 『創設者の式神白楼が現在の新城市に作った「長篠塾」がベースで、学校の規模を大きくするため矢作に移転。その時に長篠高校となった』

 とされています。ちなみにこの移転で創設者に敬意を示した名前になった場合は『白楼高校』となります。私の作品で主人公が在籍する学校は長篠か白楼であることが多いと思いますが、基本は同じ学校なんですね。

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