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追悼する神様  作者: 夜風翔
2/2

Ⅰ、少年ベル:①朝

いよいよ主人公の登場です。

彼の抱えたものとは…。

 (…起きて、ねぇ…。ベル…?先行っちゃうよ?)

(またあいつか…)

「ハル、うるさい…」

「ベル…!」

(ベルはーやーくぅ…)

「うるさいってば…」

「「………」」

「…ふぅ。…ベル!!」

「はぁぁぁい!!」

 耳元に届いた怒声で、俺は飛び起きた。

 反射的に、元気のよい返事をしつつ。

「あんた何時だと思ってんの!?いい加減起きろ!」

 ぼやけた先に、人型のシルエットが立っている。

「…ハル…?」

「……」

 だんだん視界がはっきりしてくると、目の前の人物が「母」だとわかる。

 見ると、母に先ほど怒鳴った面影は無い。代わりに悲しげな影を落としていた。

「…飯、早く食べて行きな」

 母はそれだけ言い残して、俺の部屋を出て行った。

 俺は、一人になった自分の部屋を眺める。

 …どうってことない殺伐とした部屋。最低限の勉強机、椅子、クローゼット。半分も埋まっていない、学校の教科書ばかりの本棚。そして、俺の寝ているベッド。

「あぁ、そうか…」

そうだった。あいつは今、病院か。

 ギシッという音とともに、俺はゆっくりとベッドを離れる。


 学校、行かなきゃ…。


 ベッドに置いてあるデジタル時計を見て、時間を確認する。

「七時五十分か」

 少し、急がないといけない。

 俺はクローゼットを開ける。素早く制服を着て、今日使う教材を学校鞄にしまう。

 鞄を持ってドアの前まできたところで、そういえば今日は「集団清掃」だったなと思い出す。体操服が必要だ。体操服は、机の横にあった。ここからじゃ、届かない。

 俺は辺りを見回してから、右手を体操服に伸ばす。もちろん、届かない。

 だが、俺が息を吸って力を込めると体操服はふわりと浮き、吸い込まれるように右手に収まった。

 俺は再度周囲をきょろきょろして、誰も見ていないのを確認してから部屋を出る。


 朝食は、俺の好物のだし巻き玉子だった。母特製の、「甘くない」玉子焼き。

 母は、台所で洗い物をしている。俺がリビングに現れても、気づいているだろうに何もしてこなかった。

 それが、母なりの気遣いなのだ。

 静かに、椅子に腰かける。

 俺は、母と二人ぼっちのこの家で、小さくいただきますと呟いた。

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