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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど
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レベル85-2 対応できるものなら苦労はありません

「で、どーすんだよ兄貴」

 皆が集まってる食堂でサトシが口を開いた。

 集まってる冒険者達も、声こそ出さないが何かを問いたげにトオルを見つめている。

 総勢十五人。

 トオルの一団に所属している者達ばかりである。

 モンスター退治を志望した者達の中で、冒険者になった者達は例外なくトオルの仲間となっていた。

 他に冒険者の一団がなかった為でもあるし、トモノリの領内で活動するならその方が都合が良かったからだ。

 なんだかんだでトオルの下が居心地が良いというのも大きい。

 その彼らが、トオルの言葉を、考えを待っている。

「…………」

 視線を受けるトオルは、口を引き結び、目をこらす。

 どうにかしたいとは思うが、解決策があるわけではない。

 解体など補助作業をする者達を除いた戦闘可能な者達が、全部で十数人。

 対して小鬼は、一百を軽く越える数。

 それもまた、全てが戦闘員ではないようだが、数における劣勢は認めるしかない。

「どうにもなんねえだろ」

 そう言うしかなかった。

 軍略の天才でもあれば、打開する策を思いつくかもしれないが、トオルにそんな才能はない。

 また、一人で数十人を相手に出来る無双の英雄でもない。

 決して無能でも無力でも無くなったが、そこそこ腕の立つ戦士でしかない。

 相手が小鬼なら、一度に二匹。

 上手くいけば三匹は相手に出来るかもしれない。

 だが、今回の戦力差はその程度ではない。

 ここにいる全員の力を持ってしてもそれは変わらない。

 二倍三倍の敵を相手にするのが限界とトオルは見定めていた。

 サツキによる魔術の援護があっても、戦闘技術のレベルだけでいえばトオルを越えたサトシがいても。

「どうすっかな」

 弱気ともとれる言葉に、居並ぶ誰もが不安を抱いた。



 基本、トオルの一団のやり方は、



その一、敵を受け止める防御設備を作っておく。

その二、そこに敵を引きつける。

その三、防御設備を盾にして敵を安全に倒していく。



 これで成り立っている。

 その為、事前の準備にどうしても時間がかかる。

 大量のモンスターを倒すにはそうするしかない。

 なので、何の準備もしてない、通常の遭遇戦では勝率が極端に落ちてしまう。

 通常の戦闘結果に並ぶだけではあるので、トオル達が弱いというわけではない。

 ただ、その場合には損害が格段に上昇してしまう。

 参考になる資料があるわけではないが、おそらく怪我人が一人か二人は出る事が予想された。

 同数の敵を相手にした場合に。

 敵を全滅させるか、そこまでいかないまでも潰走させる事はできるにしても。

 今回の場合、それではまずい。

 十数人のうち、戦闘できるのが半分。

 およそ八人ほどで戦わねばならない。

 話しに聞く小鬼の強さを参考にして考えた場合、おそらく二倍三倍の敵なら撃退出来るだろう。

 つまり、十数匹から二十五匹程度を相手にするのがせいぜいである。

 それではどうにもならない。

 あの数を撃退するためには、それでは全然足りない。

 もっと大きな戦果が必要だった。

(どうするよ)

 悩んで迷って、考えて。

 答えを探している時間はない。

 今この瞬間にも決断を出さなければ、あの集団が押し寄せてくる。

 そうなるかどうかも分からない。

 もしかしたら、もっと別の方向に移動する可能性もある。

 この近くから別のどこかへと。

 ただの希望的観測であり、そうなってほしいという願望でしかないのも分かっている。

 そんなものに期待するわけにはいかない事も。



(やるとしたら……)

 どうにかして陣地を作るしかない。

 それも出来るだけ早く、簡単に。

 それでいて、それなりの防御力があるような。

 普通に考えれば、そんな事は無理だ。

 しかもそれを、村や領内からそれなりに離れた、敵との間に作らねばならない。

 でなければ、村に被害が及ぶ。

 今年の収穫を楽しみにしてる村人達の事を考えれば、村の近くでの戦闘などできない。

 それに適した場所があるかどうか。

 あったとしても、すぐに陣地を作れるかどうか。

 敵に気づかれずに。

 ある程度急ごしらえでいい、何ヶ月も何年も立てこもれるような設備である必要はない。

 敵を撃退する、少なくとも村に攻め込めないよう圧力をかけられればよい。

 そんな物で良い。

 だが、それでもかなり手間がかかる。

 資材は気づかれないように運ぶ必要がある。

 構築は、音を立てずに行う必要がある。

(どうやってやるんだ)



 村から小鬼の集団に至る道筋を思い出す。

 浮かんでくる記憶の中に、それらしき場所はいくらかある。

 そこならば、さほど手間もかからずに立てこもれる場所を作れるだろう。

 構造自体は簡単なものでも良かった。

 相手の突進を防げて、矢や石を遮る事ができれば。

 その程度の頑丈さがあればよい。

 ただ、何日かそこで張り込む必要はある。

 夜を過ごし、雨をしのげる程度の準備もしておきたい。

 簡単でいいとは言っても、そう考えるとやっぱり難しい。

 それを作る、材料と人手も用意できるかどうか。

(でもまあ)

 とにかくやるしかない。

「…………やってみるか」

 トオルの声に、居合わせた仲間がこわばった表情を少しだけゆるめた。

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