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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その5 そりゃまあ冒険者だからこういうのも仕事だけど

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レベル83-2 ようやく少し落ち着けそうと思っていたのですが

「家畜泥棒?」

 呼び出されたトモノリの部屋で不穏な言葉を聞いた。

 トモノリも苦い顔をしている。

「こんな時になあ……」

 収穫の向上も見込まれる秋に向かおうとしてる矢先だった。

 ようもやこのような事が起こるとは思ってもいなかったのだろう。



 悪人悪党と呼ばれる者達にも幾つか種類がある。

 盗賊と呼ばれる物を盗むものであっても、家屋に侵入する者や歩いてる者のポケットからかすめとる者がいる。

 襲いかかって暴行をふるい、殺害すらも辞さない強盗・追いはぎ。

 騙して相手から金をせびる詐欺師。

 手段は様々だが、他の誰かから資産財産を強奪するというのは変わらない。

 その中の一つが、家畜泥棒だった。



 文字通り家畜を奪っていくこの盗人は、農村や牧場にとって最悪の存在だった。

 特に財産と言えるような物のない農村の中で、金になり、奪われると困るものが家畜である。

 これらは単に食肉用として、売却するためだけにあるわけではない。

 畑仕事に用いる作業道具として、荷車を引く運搬手段として。

 現代日本における耕耘機や自動車のような役割を担っている。

 これらを奪われる事は、その分だけ生産力の低下を招いてしまう。

 牧場であれば、それこそ収入を失う事にもつながる。

 なので警戒は常にされ、家畜小屋の周囲には見張りが立てられる。

 村にとって家畜を失う事は大きな損害であるし、家畜泥棒は見逃せない悪でしかない。

 他に比べればという程度であっても、警戒が厳重になるのは自然な流れだった。



「それでも盗まれたんですか」

「そうだ」

 頭を抱えている。

「…………ただ盗まれただけじゃない」

「でしょうね。

 見張りはどうなったんですか?」

 家畜小屋まで見張りをかいくぐって接近できても、見つからずに家畜を連れ出す事は難しい。

 不可能と言って良い。

 となれば、邪魔になる存在が排除されるのは当然の流れである。

 家畜泥棒対処が難しいのはこういう所にもあった。

 決して許せる存在ではないが、対峙すれば命を賭ける事になってしまう。

 家畜が奪われた今回、見張りに立っていた者達もそういう運命をたどったのだろう。

「一人は矢を受けていたそうだ。

 胸に当たっててな。

 即死ではないが、肺が貫かれてたそうだ」

 あふれた血液が肺を満たし、窒息してしまったのだろう。

 ある意味、即死できなかった分だけ苦しみが長引いてしまったはずだ。

「それだけですか?」

「いや。

 見張りはもう一人いたんだが。

 そちらは体中を斬られていたそうだ。

 おそらく、相手は複数だったのだろう」

「…………それだけですか?

 番犬とかは」

「何本も矢が刺さっていたそうだ。

 頭も、叩き割られていたのだと」

「うわ……」

「それでも結構な騒ぎになったようでな。

 物音に気づいた村の者が総出で家畜小屋に向かって、全滅は防げた。

 だが、何頭かの家畜は奪われてしまった」

「追跡や捜索は…………」

「したい所だが、何せ手が足りない。

 能力もな。

 うちにいるのは、館の中の仕事をする使用人と、君が鍛えてくれた兵士くらいだ。

 追跡が出来る者はさすがにおらんよ」

 この規模の領主では仕方がない。

 小規模ながら兵隊を構えてるというだけでも奇跡である。

 治安・警備のための人材など、夢のまた夢。

 警戒をする事は出来ても、盗まれた物の追跡や、盗人の捜査などできるわけもない。

「じゃあ、泣き寝入りですか」

 普通ならそうなる。

 だが、

「いや、一応やるだけやってみるつもりだ。

 せめて一矢報いないとな」

 トモノリは少しばかり覇気を取り戻した顔をする。



「村にいる木こりが屋外や森に詳しい。

 残った足跡も追跡できるそうだ。

 彼と一緒に盗人共を追いかけてもらいたい」

「……俺達にですか?」

「君以上に腕の立つ者はいない」

 確かにその通りだろう。

 だが、だからと言って冒険者に頼むような事なのかと思う。

 警察が民間人を捜査に参加させるようなものだろう。

 いや、警察官として民間人を用いるといったところか。

(それでいいのかな……)

 他に適任者がいないのは分かってるが、だからといってそれは無いだろう、と思ってしまう。

 それでも、「分かりました」と答える。

 もし盗人がこの近くにいるなら放置しておけない。

 被害が再び出る可能性がある。

 どこまで太刀打ちできるか分からないが、やれる事はやりたかった。

「まあ、無理はしないでいい。

 途中で追跡が出来なくなったらそこまでで良い。

 もし相手が見つかっても、危険な連中だったら引き返してきてくれ。

 情報を中央に報告して、討伐を打診する」

 そう言ってくれて助かった。

 トオル達だけでどうにかしろと言われたら、全滅の可能性があった。

「でも、そう簡単に動いてくれますかね?」

「分からん。

 だが、最悪の場合、町の冒険者に依頼をかけてでも賊の討伐をする」

 トモノリの決意は固いようだった。

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