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イラスト付きレベル番外2 今日も彼女はがんばります

またも名無しの雛菊さんにイラストを描いてもらえました。

添えてある文章なんて飾りです。


なお、名無しの雛菊さんの小説家になろうアカウントはこちら

http://mypage.syosetu.com/591993/

挿絵(By みてみん)



「…………右から来ます。

 左にはかけました」

 迫るモンスターを相手にしながら声を出していく。

 自分がやった事だけではない。

 見た事も一緒に伝えていく。

 そうしないとトオルが判断をできなくなる。

 他の誰かも状況を把握出来ずに混乱に陥るかもしれない。

 声を出すのは苦手だが、そうは言ってられなかった。

 今でも得意とは言い難いが、出来ないとは言えない。

 やらないなど論外だった。

 今でも、必要とされる言葉以外を口にする事は難しいが。

 どうにかこなせるのは、言うべき言葉が決まり切ったものばかりだからだろう。

 右から来る、左から来る、魔術を使った…………。

 細かく分けていけば更に増えるが、基本的にはその程度で済む。

 三代サツキにとって、それがありがたかった。



 喋る事もそうだが、人が相手というのは苦手だった。

 生まれ育った環境のため…………ではない。

 町に出て来るまで生活していた村では、それなりに大事にされていた。

 お嬢様のようにというわけではなかったが、村の者も同年代の子供達もごく普通に接してくれていた。

 特にレンとは子供の頃からずっと一緒で、何も無くてもいつも行動を共にしていたようなものだった。

 それでも他人と一緒だとどうしても緊張してしまう。

 初対面の相手ともなると、もう駄目だった。

 もう生まれつきの性分というしかない。

 そんなサツキにとって、トオルの言葉は実にありがたいものだった。



『右から来るとか、左から来るとか。

 そんな感じでいいから。

 見て気づいた事をとにかく口にしていってほしいんだ』

 とにかく声を出していこう、と言い出した時の事である。

 会話が苦手なサツキは、声を出すのも苦手だった。

 そもそも、何を言えばよいのか、どういう時に何を口にすれば良いのかも分からない。

 サツキに限った話しではないかもしれないが、初めての事なのでやり方が分からない。

 トオルもそこは考えていたようで、

『だったら』

と思うところを口にしていった。

 それを聞いて納得出来た。

 なるほど、そういう事が必要なのだなと。

 また、やる事が分かればそれほど難しくもない。

 するべき事が分かっていれば、それほど悩まないでもよい。

 次のモンスター退治から、サツキは頑張って声を出すようにしていった。

 誤算だったのは、発言回数が多くなった事だろうか。

 一団の中で、最も後ろにいる事が多いので、自然と全体を見渡す位置に立つ。

 結果として、気づく事も増えていき、それを報せる事が多くなる。

 魔術の使用の他にも、それがサツキの仕事として多くなっていった。



(それにしても……)

 いつもいつも思う。

(本当に色々思いつくんですね)

 トオルの提案は、それほど重要とも大事とも思えない事も多い。

 だが、やってみると「なるほど、そういう事か」と納得するものも多い。

 今回のように声を出していく事もその一つだった。

 そんなに必要なのかと思っていたが、やってみると確かに違いが分かる。

 サツキが声を出すと、トオルはそれを聞いて他の皆に指示を出していくようになる。

 他の皆から声が上がっても同じだった

 その結果を一番よく見る事になったのもサツキである。

 全体の動きを以前から見ていたので、差を比べる事が出来る。

 今までなら見逃してきた、手が回らなくなっていた部分にもすぐに人が入るようになっている。

 モンスターがあふれてる穴は順次退治され、倒されたモンスターが穴の中に放置される事も減っていった。

 一つ一つの作業にかかる時間はさほど変わってない。

 だが、それらの繋ぎ目が途切れる事がなくなった。

 声を掛け合うようになるだけで、それだけの違いがはっきりとした。



(思い切りもいいし)

 魔術を使う際に用いる触媒の事でもそう思う。

 倒した妖ネズミの素材を触媒にする事を躊躇わなかった。

 考えはしたのだろうけど、採取したものを使ってくれと言われた時には驚いた。

 普通、少しでも稼ぎを増やす為に出し惜しみするものだと思っていたのだが。

『それで効率が上がるならかまわないよ』

 あっさりと言い放つトオルに、サツキは目を丸くしたものだった。

 おかげでサツキの使える魔術の威力などにも幅が出てきた。

 触媒を使わなかったら、効果が出るかどうかもあやしいものである。

 それが、ほぼ確実にモンスターに魔術をかけられるようになった。

 同時に、魔術を使う際の精神的消耗なども軽減出来るようになった。

 同じ威力を出すなら、消耗する精神の代わりに触媒を用いる事も出来る。

 おかげでサツキの使える魔術の回数は格段に増加した。

 その結果、とれる素材の数は大きく増加していく。

 トオルの言う効率というのはこういう事なのかと思った。



 そもそもとして、サツキのような者を一団に迎え入れようというだけで普通ではなかった。

 魔術を使えるとはいえ、威力もろくに出せ無い半人前以前の状態だった。

 それを自覚しているサツキも、トオルの出してた戦闘補助の解体作業を目的にしていた。

 少しでも稼ぎの良い仕事を求めて。

 それが、『試しにやってみよう』という言葉で魔術を使う事になるとは。

 それ以降、魔術師として一団に参加する事になるとは予想外であった。

 おかげでレベルも上がり、使える魔術の幅も更に拡がった。

 忙しく、稼ぎも思うように増加はしない。

 それでも、周旋屋からまわされてくる仕事をやってた頃より充実している。



(がんばらないとね)

 巡ってきた幸運に報いるためにもやるべき事をしっかりやっていきたかった。

「右のに魔術をかけました。

 正面からも来てるのでお願いします」

 言いながら、ひしめくモンスターに杖を向ける。

 魔術の発動にあわせ、首から下げた発動体に魔力が集まっていく。

 そこから杖の先の発動体にて魔力が変換され、求める形になっていく。

 狙った方向に魔力が飛んでいき、効果をあらわしていく。

 騒がしかったモンスターが次々と眠りに落ちていった。

 直接的な殺傷力のある魔術は使えない。

 しかし、ここではそれはほとんど必要とされない。

 だからサツキにも活躍の機会があった。

 それを逃したくなかった。

 自分がいられるこの場所を。

「正面のモンスター、眠らせました」

 トオルと他の皆に告げながら、周囲の様子を伺っていく。

 どこに処理待ちのモンスターがいるのか、どこの穴が空いて使用可能になっているのか。

 それらも気づく限り口にしていく。

 この一団の一員の仕事として。



 気づけば手持ちの触媒を使いきってしまっている。

 だが、傍らには採取したばかりの素材が置かれている。

 解体の誰かが持ってきてくれたのだろう。

 それを用いて新たに魔術を発動させていく。

「正面、いきます」

 声をかけて杖を突き出した。

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