レベル78 仕事が終わればまた仕事というのはいかがなものでしょう
翌日から忙しくなった。
昼間はモンスター退治をしつつ、新人の教育を。
それが終わって帰ってくれば、トモノリに新人達の説明を。
誰がどのくらい出来るかを伝える事となった。
更に周旋屋への登録を希望する者がいるかどうかを聞いてまわる。
いたなら、登録にいく日程を組まねばならない。
なるべく急ぐ必要があったので、おちおち寝てもいられなかった。
最終的に、領主の配下となる兵士に希望する者は十人。
二人に一人が採用されるという、なかなかに狭い門になってしまった。
次の休日にトモノリが面談をしてから決める事となったが、おかげで大変な事となった。
幸いだったのは、トオルが連れてきた者達は対象外だった事であろう。
まだ何も手をつけてなく、経験が全く無い。
どんな特性があるのか、どんな人間なのかが全然掴めていない。
そんな者を、兵士として採用するわけにはいかなかった。
入ってすぐにモンスター退治に駆り出される事になるので、未経験者を入れるわけにはいかない。
あくまで経験者が求められていた。
それとは別に、周旋屋に登録するという者もいた。
こちらは全部で三人。
さすがに人数は少ない。
領主からの募集が同時に行われているのだから当然である。
むしろ、そちらよりも冒険者を選ぶ者がいたという事に驚いた。
「もしかして、誰かに脅されたのか?」
心配でそんな事を聞いたりもした。
まさかとは思ったが、サトシあたりが強要したのではないかと。
信じられない事だが、そういうわけではないという。
一緒にやってきて、トオルの下でやっていきたいと思うようになったのだとか。
何がそんなに良いのか分からなかったが、そう言ってもらえるのは嬉しかった。
そのおかげで、彼らが登録に行くための日程を考える羽目になった。
それもまた、睡眠時間を圧迫する原因となっていった。
そして、どうすれば良いのかを決めかねている者も三人いた。
兵士であっても冒険者であっても、どちらも危険に従事する事となる。
周旋屋からの仕事であれば、安全な仕事もある。
その事はちゃんと伝えてもいる。
しかし、収入などを聞いて躊躇ってしまったようだ。
どれを選んでも何かしら問題がある。
他に選べる道もないが、与えられた選択肢がこれではどれも選べないのも無理はない。
それも当然の悩みなので、トオルは無理強いはしなかった。
「暫くは今のままでもいいから」
それがいつまでなのかは分からない。
ただ、いつまでも何も決めないでいるわけにもいかない。
このまま何も決めずにいたら、結局は道を誤る可能性もある。
これからについて、多少なりとも何かを考えるよう促しておいた。
それからもそれなりに大変な事になった。
面談を終えたら今度はトモノリの考えも加えて選別をせねばならない。
誰が良くて、誰は控えるのか。
半分を選べば残りは落選となる。
どうしたってそこに差が出てしまう。
これで顔をあわせる事もないならそれで良いが、ここで仕事をするならどうしても一緒にいる事になる。
なので、選別は結構困難を極めた。
基本的には誰もが横一列である。
特別優れてたり、酷く何かが劣るという事もない。
技術的にも、特に優劣があるわけではない。
先に始めた者達の方がレベルは高い(と予測される)が、それも特段優れてるというわけでもない。
となれば、あとは性格や人格的な部分となるが、これもそれ程悪いというのは見あたらない。
誰もが一長一短で、その優劣すらも「あえて言うならば」という程微々たるものである。
「どうしたらいいのかな」
トモノリの疑問に、トオルも答えを出す事が出来なかった。
「これだと、誰でもいいんじゃないかって思えますよ」
そうとしか言いようが無かった。
結局、最初に入ってきた者達から採用、という形になってしまった。
ほとんど同じなら先にやっていた者から、という事になった。
なんのための選別だったのか、と思ってしまう。
奉公人ともちょっと違う、正式な領主の配下としての採用なのだが。
(こんなんでいいのかな)
安直な所に落ち着いてしまったようで、疑問を感じてしまった。
ただ、秀でてもいなければ問題も抱えてない者達である。
無難に仕事をこなす分には問題はなかった。
後々の事となるが、トモノリも満足はしていく事となるので、これはこれで良い結果と言えるかもしれなかった。
それよりもトオルの方が問題だった。
冒険者希望の三人を町に連れて行かなくてはならない。
その間、モンスター退治を残る者達に任せる事になる。
行って帰って二週間ほど。
急げばもう少し短縮は出来るが、無理はしたくなかった。
その間、サトシ達には妖ネズミの相手をしてもらう事になった。
やはりトオルがいないと戦力として不安が出てきてしまう。
レベル3の戦闘技術を持ってる者があと二人ほどいれば良いのだが。
残念ながらそうはいかない。
安全を優先して、しばらくは稼ぎを落とす事にした。