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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
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レベル77 就職の世話までする事になるとは思いませんでした

「そんじゃ行くぞ」

 返事を聞いて荷馬車を走らせる。

 来た時の倍くらいの人数になったトオル達は、村をあとにした。

 モンスター退治の希望者は、選別して六人。

 他の村よりは少ないが、使えそうな人間を選んだ結果こうなった。

 途中で何もなければ、昼前には領主の館に帰還。

 用意してあるはずの部屋に新人を連れていき、新たな生活の準備をさせる。

 新人研修は明日からとなる予定だった。

 更に人数が増えるが、それはどうにかなるとトオルは考えていた。

 もう三回目なので慣れてるし、先に入ってる者達も上達している。

 目を離していてもそれ程問題は無い。

 ただ、そろそろ次の段階を考えておかねばならない。

(どうすっかな……)

 毎度の事だが、新しい展開に向けて頭を使わねばならなくなってきていた。

 馬車を程よく走らせながら、この先について考えていく。



 父に言われた事でもあるが、そろそろモンスター退治の人材を他の村に送る必要が出て来ている。

 あと一ヶ月ほど経験をつませてから、とは考えている。

 ただ、「じゃあ行ってきて」で終わらせるわけにはいかない。

 最初の方は付き添いを一緒に送っておきたかった。

 派遣先の村で、今やってるような陣地を作るにしても、やり方が分かってないといけない。

 落とし穴と簡素な柵くらいだが、そんなものでもやり方を知ってないと戸惑う事もある。

 トオルとて最初から上手くやっていたわけではない。

 そもそも、色々と教えてくれたマサトがいなければ、今のようにはなれてなかっただろう。

 更にそれからあれこれと考え、積み重ねてきた工夫がある。

 それも教えてはいるつもりだが、どこまで伝えられてるかは分からない。

 教わる方も、どれほど吸収できてるのか、何が身についてないのかも分からない。

 そのまま放り出すという事は出来なかった。



 加えて、もう一つ解決しておきたい事もあった。

(登録、どうするかな)

 周旋屋への登録をどうするか。

 これもはっきりさせておきたかった。

 村に送り込んだら、登録しにいく余裕がなくなる。

 やるなら、今のこの時期しかない。

 町まで、往復で二週間ほどかかる。

 村に行ってしまったら、それだけの時間を取ることはできない。

 一緒にやってる者がいる、今この時しか機会はない。

 それはそれで、誰がどの順番で登録しにいくのか、と考えねばならないが。

(まあ、面倒なこって……)

 どっちにしろ、トオルが頭を悩ます事になる。



 館に戻ってからは、まさにその事で忙しくなった。

 連れてきた者達は他の者にまかせ、他の新人達と話しをしていく。

 周旋屋に登録するかどうかを。

 それだけではなく、新人達の今後についてトモノリにも訴えていく。

 可能であるならば、領主の配下として用いてくれないかと。

 周旋屋の従業員である冒険者よりは、そちらの方がマシである。

 彼らがこの先も、トモノリの領内でモンスター退治をしていくなら特に。

 トモノリにも直接の配下としての兵士がいれば、何かあった時に役立つ。

 抱える事で負担を負うことにはなるが、直接指揮を執れる兵士の存在は心強いものになる。

 特にモンスターによる被害を減らすならば、どうしたって兵士は必要になる。

 先々の事を考えれば、その都度冒険者を雇うよりは安くつく……はずだった。

 兵士を抱える負担は、モンスターから得られる素材の売却で賄える。

 聞いてるトモノリもそれについては前向きだった。

「希望する者がいるなら、兵士として抱えたいな」

 ありがたい言葉だった。

 冷や飯食いの部屋住みも、これで少しは報われる。

 最下級の兵士であっても、領主の直参だ。

 村の中ではそれなりの地位にあるとみなされる。

 それほど多くは抱えられないだろうが、これで新人達の将来に道が開けた。



 その事は翌日、モンスター退治から帰還した後にトモノリから発表された。

 新人達は突然の事に驚き、それから驚喜していった。

 予想もしてなかった事である。

 早速その事で新人達は語り合いはじめた。

 兵士となれば、この先危険な仕事を負うことになる。

 それでも、この機会を逃したくはない。

 二つの思いを誰もが抱き、どうすればいいのか、と悩んでいる。

「お前はどうする」「わからん。お前は?」といったやりとりがそこかしこでおこっていく。

 どういう結果になるかは分からないが、彼らがどうするかは彼らに任せる事にしていた。

 出来れば冒険者として一緒にやっていってもらいたいとは思った。

 経験も少しは積んでるし、いてくれれば助かる。

 しかし、そのために彼らの人生を無為にしたくもなかった。

 新人達の人生である。

 他の誰かが口や手を出してよいものではない。

 求められれば自分の希望も言ったが、それでも必ず次の言葉を口にした。

「領主様の下で兵士をやっていた方がいい」

 そうすれば、住居と食事は確保される。

 わずかであるが、俸禄もある。

 今後もモンスター相手の仕事が続くだろう。

 戦争があれば真っ先に駆り出される。

 それでも、部屋住みでいるよりは待遇は良くなるはずだった。

「色々悩みもあるだろうけど、機会があったら逃すな」

 自分が手に入れる事が出来なかったものを、新人達は手に入れる事が出来る。

 それをふいにしないで欲しかった。

(前世じゃ、公務員か正社員ってとこだしな)

 当てはまりそうなものを思い浮かべながら、トオルは彼らにそちらに進むよう促した。

「今回の募集は五人だ。

 上手くその中に入れよ。

 ただし、他の奴の足を引っ張ったりするな」

 注意を加えながら、そう言った。

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