表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
74/251

レベル73 仕事への使命感が打ち消せるほど憂鬱な気分は甘くありません

 大まかなやり方は決まった。

 細かい調整をしつつ、効率を改善していく。

 どうすれば更に数を稼げるのか。

 どうすれば手間を省いて消耗を抑える事が出来るのか。

 どうすれば危険を減らしていけるのか。

 それらを考えていく。

 単純に妖犬をどうやったら倒せるのかを。

 更に、休憩の入れ方なども含めて考えていく。

 動き続ければ疲れる。

 魔術も使えば精神力(いわゆるMP)が切れる。

 適度な休息を入れなければ、やがて動けなくなる。

 でなければ、一日中作業をする事はできない。

 押し寄せてくるのを制御はできないが。

 受け止める自分達が最適化できれば、幾分対応は出来る。

 それにも限界はあるが、出来る所で何かをしてればそれなりに何とかなる。

 今はまだ限界ギリギリで妖犬に対応せざるえない。

 出来ればそこにもっと余裕を作り出したかった。



(つっても、人数増やすか、レベルアップしかないんだよな)

 考えても結局はそこに行き着いてしまう。

 連携や攻撃の仕掛け方などを考えていっても、どうしても今以上にはなりそうもない。

 人数を増やして一人あたりの負担を減らすか、レベルを上げて対応できる能力を上げるしかない。

 分かってはいるが、こればかりは簡単にはいかなかった。

(新人は入ってくるけど)

 一月の終わりに近づき、予定していた新人の受入日が迫っている。

 それで人数は増やすことが出来る。

 そこからまた教育をして、慣れるのを待って、更にレベルアップを待つ。

 何の事はない、今までやってきた事の繰り返しだ。

 受け入れも三度目となると、さすがに余裕が出て来る。

 今回は人数も多いので、総勢八人になる希望者全員を一度に受け入れる事となっている。

 妖ネズミ相手なら、それだけ入れても余裕がある。

 その分、手狭になってしまう妖ネズミ用の陣地を拡張せねばならない。

 そういった手間はかかるが、人数が多いのでどうにかなると思えた。

(早く慣れてくれればいいけど)

 ついでにレベルアップも早くしてくれればと思う。

(まあ、三ヶ月は先か)

 これまでの経緯や経験からするとそれくらいはかかってしまう。

 ただ、実際にレベルアップしてるのかどうかは分からない。

 登録証によって現在の能力を把握する、という事が出来ないのだ。

 なんだかんだで便利な道具である。

 有れば、実力がどの程度か分かる。

 それを見て、ここまでやれる、これは無理、というのが分かる。

 似たような道具がないのかと思ってはいるのだが、今のところ見つかってない。

(その為だけに冒険者になってもらうってわけにはいかないよなあ……)

 世間的に、社会的に見て冒険者はそれ程良い地位にいるわけではない。

 食い詰め者や世間からあぶれた者達の集まりだという見方をされる。

 活躍してる一部は別格扱いだが、その他大勢は一般庶民の中でも下の方と見なされている。

 あると便利な登録証の機能であるが、そのために冒険者にするわけにはいかなかった。

 ただ、家族との衝突のこともある。

 何かしら分かりやすい形が、

『それはそれ、これはこれ』

という線引きはあった方が良いとも思える。

 新人達の稼ぎを家に入れるよう求める者は今もいる。

 だが、新人達が領主の配下という扱いになってからは、表だって請求するような事は無くなっている。

 かりそめであっても領主の配下という立場や地位が、家族達に違いを分からせているようだった。

(いっそこのまま領主の配下になっちまった方がいいのかもなあ)

 ただ単にモンスター退治を専らの仕事としていくなら、領主のお抱えになった方がよい。

 徴兵による兵士というべきか。

 その方が世間体も良い。

 当然ながら登録証は手に入らないが、新人達の今後を考えれば、その方が良いのかもしれない。

 若者達の今後の人生を考えれば、ちょっとした利便性のために冒険者にさせるわけにもいかなかった。

(…………つか、何でそんな事まで考えてんだか)

 レベルアップが分かりやすくなればと考えていたら、おかしな方向に思考が向かってしまった。

 重要な事ではあるが、今のトオルが考えるべき事とは言い難い。

 それよりも先に解決しなくてはならない問題がある。

(新人、どうしよっかな)



 最後になった、トオルの出身の村からの希望者受け入れ。

 その人員の選抜にはトオルが付き合う事になっている。

 希望者を受け入れるという事にはなってるが、誰彼かまわずというわけにはいかない。

 一緒にやっていけそうな人間を選ばないと、後々困る事になる。

 その為、希望者にはトオルが面談をして、その意見をトモノリに伝える事になっていた。

 他にも、サトシのように長くやってる者達も面談に参加する。

 人数が多くなった事で作業の分担がはっきりとしてきた。

 そのためトオルが接する事が出来る人間が減っている。

 代わりに、サトシ達の方が一緒にいる時間が長い。

 特に妖ネズミと妖犬で分かれて対応するようになってからは。

 三十人にも満たない人数なのに、そこははっきりと違いが出ていた。

 トオルよりもサトシ達との方が仲がよい者もいる。

 だから、サトシ達を連れていかないわけにはいかなかった。

 悪い事というわけではない。

 役割分担がはっきりし、トオルが全部を見回る必要がないという事でもある。

 サトシ達がそれぞれの場所でのリーダーとなってるなら、その分トオルの負担も減る。

 むしろサトシ達には、そういった役割を担っていってもらいたかった。

 選抜のための面談に同行させるのも、その為である。



 モンスター退治の休みの日、面談のために村へと向かっていく。

 三台の荷馬車に分乗したトオル達は、朝早く出発した。

 総勢八人。

 面談だけならここまで人数はいらない。

 途中でモンスターに襲われた時のための用心である。

 また、馬車が三台と多いのは、帰りに村から希望者を連れてくる時の為だった。

 最大で八人まで選ぶ予定だったので、その人数が乗れるだけの馬車が必要だった。

 村と村の間は歩いて到達できない距離ではないが、それだと一日がかりになってしまう。

 馬車ならそこを半日以下で移動できる。

 その馬車の上で、着々と近づいてくる故郷を前に、

「はあ…………」

 トオルは盛大にため息を吐いていた。



「兄貴、いくらなんでもそこまで嫌がらなくても」

 呆れたサトシの声にも、ため息が返る。

「そんなに嫌なのかよ」

「まあな」

「だって、兄貴の村だろ?」

「飛び出してきたからな。

 なんとなく、決まりが悪いんだよ」

「気にしすぎじゃねえの?」

「かもしれん。

 けど、家出したみたいなもんだし」

 それが気になる部分だった。

 事前にチトセには確認はしている。

 自分が出た後、親はどんな調子だったのかと。

(口に出す事はなかったけど、心配はしてるようだったらしいんだよなあ)

 それがどの程度の心配だったのかは分からない。

 だが、帰省を躊躇う理由にはなっていた。

 見捨てられてないのはありがたいが。



 そんなため息ばかりのトオルを見て、

「なんか、どうしようもねえな」

「兄貴らしくないっていうか」

「むしろ兄貴らしい気もするけど」

 などとサトシ・マサル・コウジの三人は呆れていた。



「大丈夫かな、トオルさん」

「まあ、死にはしないでしょ」

 別の馬車に乗ってるサツキとレンも、トオルを見てそんな事を言っていた。

「モンスターの相手をするわけじゃないんだから」

「それはそうだけど」

「まあ、ああいう姿を見るのは面白いけど。

 我らのリーダーらしからぬ、って感じで」

「レンちゃん、趣味悪いよ」

「いいじゃない、トオルさんなんだし」

「…………トオルさん、かわいそう」

 ため息、落ち込み、悩みと表情を変えるトオルを、レンは面白そうに見つめ。

 そんなレンにサツキは苦笑し、トオルに同情していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ