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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
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レベル72 毎度毎度、やり方を考えるのも一苦労です

「もうちょっと素早く動けりゃなあ」

「でも広いし」

「弓でもうちょっといければ」

「もう一つ弓があれば違ってくるよね」

「それでも全部は回れないし」

「魔術もそう何度も使えないしね」

 帰り道から続く話しは、そんな調子だった。

 妖犬を相手にしてみて思った事をレンやアツシ、解体に回っていた者達が口にしている。

 あそこをどうにか出来れば、こうしたら変わるのでは、という考えがどんどん出て来る。

 そして、それをやるには何が足りないのかという事も上がってくる。

「もうちょっと陣地が狭けりゃなあ」

「それだと中で作業出来なくなるよ」

 戦闘担当に解体の方からの意見も出てくる。

「解体が終わったものを置いておく場所が無いんだから。

 もっと広くてもいいくらいだ」

「でも、それだとあちこち動き回る事になるし。

 今より広くってのも難しいよ。

 投石器だって、端から端まで石を飛ばせるわけじゃないし」

 出来る事と出来ない事が次々に上がっていく。

 荷物置き場となってる小屋に戻り、素材の収納などをしてる時はさすがにそれは控えられたが。

 食事時には飯を食べるよりも、何が出来るかを語るために口を動かしてる事の方が多くなった。

 それでもすぐには考えがまとまらず、取り立てて何も決まる事無く就寝時間となっていった。



 二日三日と続けるうちに、問題点が更に見えるようになっていった。

 攻撃の仕掛け方や、魔術の使い時。

 倒したモンスターを解体に持って行く時期や、素材を抜き取った死骸の処理の仕方。

 その他、細かい所も含めて様々な荒が見えてきた。

 とにかく動き回る範囲が問題になってくる。

 二十メートル四方という距離は、やはり大きい。

 武器や防具を持って移動すると、体力の消耗が激しい。

 駆けずり回っていては、妖犬を倒すどころではなくなる。

 受け持つ場所を決めて、そこに人数を割り振る事で対処しているが、解決とまではいかない。

 受け持つ広さに対して、人数が少ない。

 六人しかいない戦闘員を分散してしまうので、どうしても火力が減ってしまう。

(どうしたらいいんだか)

 このままではどうにもならない。

 何かしら打開策が必要だった。



「人が増えないとどうしようもないよ」

 期間後の食卓で、レンははっきりとそう言った。

「あれだけの広さだからね。

 やり方をどうにかしたって、人数がいないと」

 それはその通りだった明らかに今は人数が足りない。

 だから、一人当たりの負担が大きくなってしまっている。

「できれば、一カ所に四人か五人は欲しいです」

「俺達じゃ全部は捌ききれないですし」

 新人二人も同意見だった。

 彼らの言う一カ所とは、四角い陣地の一辺を指す。

 そこに貼り付ける人数がそれだけ必要という事だ。

「となると、十五人以上になるな」

 戦闘に従事してる者達全員を用いる事になってしまう。

 あまり現実的とは言えなかった。

 妖ネズミも放置できない。

 また、それ以外にも問題がある。

「レベルも足りないし。

 皆を引っ張っていっても、たぶん攻撃もおぼつかないよ」

 一人一人の能力が必要な所にまで達してない。

 レベル1くらいにはなってるだろう新人達でも、二人でしかけてようやく攻撃が当たるくらいである。

 まだそこまで到達してない他の者を連れていっても、足手まといになる。

 相手がろくに回避もとれない状態で、こちらが複数であってもだ。

 当てる事はどうにか出来るかもしれない。

 しかし、有効となる打撃を加えられるかどうか。

(そこだよな……)

 どうもレベルによって命中率だけでなく、攻撃の威力も変わるらしい。

 確実な事は言えなかったが、実際にやってみた手応えからするとそう考えられる。

 以前、妖犬を相手にした時と今回の違い。

 また、レンとアツシと比べても、トオルの攻撃は威力が違う。

 トオルがほぼ一撃で妖犬の頭を粉砕するのに対して、二人はどうしても二撃三撃と攻撃を繰り出している。

 魔術で眠っているなら楽に一撃で倒しているが、多少なりとも動いてると狙いが鈍るらしい。

 その鈍りが、込めるべき力を霧散させてしまうのかもしれなかった。

 当てる事に意識を集中する事で、力を込められなくなってしまう。

 確実に当てる事ができると思えば、思い切り威力をのせる事も出来るだろう。

 それが出来るまで、もう少しレベルが必要なのだろう。

 新人二人については言わずもがなだった。

 眠ってる敵に対してでも、一撃で倒すというのは難しい。

 仕方ないので、頭ではなく足を狙うように言っている。

 それか、目を切るか。

 そのどちらかを潰しておけば、相手の動きは大幅に制限される。

 攻撃も当たりにくくなる。

 こちらからの攻撃は当たりやすくなる。

 それからならば、ある程度余裕をもって対処できる。

 そこからなら、レベル1でもどうにかなる。

 新人だとそれがせいぜい、とも言える。

(何にせよ、眠らせておかないといけないけど……)

 新人達のレベルだと、それが一番安全で確実だった。

 魔術で動きを止めてから攻撃をする。

 それが徹底できれば新人でもどうにかなる。

(やってみるか)

 その方向で考えてみる事にした。



「じゃあ、頼むぞ」

「はい」

 頷くサツキは、振り返ると新人達の方へと向かっていった。

 今日は、サツキと新人二人が組むことになる。

 役目も少し変えた。

(上手くいくといいんだけど)

 毎度毎度新しいやり方を試す時に感じる不安。

 これで上手くいくかどうか、という疑問。

 今もそれを抱いてしまう。

 だが、やってみなければ分からない事の方が多い。

 死なないように、怪我をしないように気をつけながら、色々と試してみるしかない。

 その為にも、トオルは自分の役目を果たそうと思った。



 その日最初のモンスターが襲いかかってきて、トオルとレン、アツシはそちらに向かっていく。

 ある程度の距離でトオルとレンは止まり、弓と投石器で攻撃をしていく。

 それで弱ったモンスターにアツシが向かっていく。

 多少なりとも弱っていれば、アツシの腕でも一撃でほぼ倒せる。

 手がかかるとしても二撃でどうにかなる。

 そうしてもらってる間に、トオルとレンはさほど弱ってないモンスターに向かっていく。

 トオルならそんなモンスターでも一撃で倒していける。

 レンは少し手こずるが、アツシほどではない。

 そうやってトオル達は、朝一番のモンスターを片付けていった。

 ここまで、サツキと新人達の出番はない。



 モンスターへの対処はそんな調子で進んでいく。

 トオル達三人はやってくるモンスターを倒し、骸を中に引き込んでいく。

 それを解体の方で回収して、陣地の中央に持っていく。

 最初の方は、それでどうにか回っていった。

 しかし、時間と共にモンスターは増加し、三人では手が回らなくなっていく。

 トオル達が対処してる以外の場所に、妖犬が殺到し始めていった。

「サツキ、頼む!」

 ここでようやくトオルは指示を出した。

「はい」

 頷いたサツキは、静かに杖を構える。

 杖の先端に付いてる魔術の発動体に魔力が集まっていった。

 それを目標となる妖犬の群れに向ける。

 集中した意識が魔術となってあらわれ、妖犬に向かっていった。

 触媒も用いて威力と範囲を拡大した『安息の闇』が妖犬を包んでいく。

 十匹以上いる妖犬の全てが、柵にもたれかかるように眠っていった。

 それを見て新人二人が駆けだしていく。

「行くぞ」

「おう」

 剣を持って走っていく二人は、眠っている妖犬の前足や目を狙っていった。

 トオル達に比べれば狙いの甘い攻撃であるが、相手の目や腕を奪うには十分だった。

 その攻撃で妖犬は起き上がってくるが、動きは鈍っている。

 目が見えない、前足が動かないでは動きようがない。

 そこに手が空いたトオル達がやってくる。

「交代する!」

「はい!」

 それまでに新人達は妖犬の半分以上に、動きの阻害になるような攻撃を加えていた。

 それらにはレンとアツシが。

 ほぼ無傷と言ってよいものにはトオルがあたっていく。

 そうしてる間に、サツキは別の方面に来ている妖犬に向かっていった。

 やはり新しくやって来ていた妖犬が、十匹以上も柵に襲いかかってきている。

 それらに魔術を放ち、動きを止めていく。

 先ほどと同じように、新人達がそんな妖犬に斬りかかっていく。

 大半が行動に支障をきたしていく。

 それが、サツキ達の役目だった。



『倒さなくてもいいから、動きを止めてくれ』

 モンスター退治に出る前に言われたのは、そんな言葉だった。

 二人のレベルでは、モンスターを倒す事は難しい。

 だから、倒す事は考えなくて良い。

『倒す』よりも、

『倒しやすい状態にする』こと。

 それが求められた。

 ただ、そうであっても、動いてるモンスター相手では難しい。

 そのため、サツキによって眠らされたモンスターだけを相手にすれば良いとも言われた。

『それと、俺が言うまでは三人は戦闘に参加しなくていい』とも言われた。

『数が少ないうちは、俺達でどうにかする。

 三人は、俺達がいない場所に来たモンスターを相手にしていってくれ。

 後で俺達が片付けるから』

 どういう意味なのか分からず、サツキは首をかしげてしまった。

 だが、やってみて分かった。

 押し寄せる妖犬を倒せないまでも、行動不能にする。

 それだけで、随分と倒しやすくなる。

 柵にかかる負担も減り、突破される危険性も減る。

 倒せないまでも動けなくする事で、危険を大幅に減少させる事が出来た。

 おかげでレンとアツシでも、ほぼ一撃で妖犬を撃破できるようになっている。

 その事前準備をしていく事を、サツキと新人達は求められていた。

 それならば、とサツキはトオル達がいない場所の方に気を向けていく。

 どこにどれだけ妖犬が集まってきているのか。

 それを見極めて、魔術を使っていった。

 新人達も、魔術が使われてる方向を見定めて動いていく。

 特に指示を出さなくても、サツキが向いてる方に向かっていけばいいので、判断に困る事はない。

 そして、動いてない妖犬の足や目を狙っていく。

 それだけなら、それこそ一撃でどうにかなる。

 倒せずとも相手の戦闘力を奪う事で、新人達も活躍する事が出来た。



 そのおかげもあってか、この日の戦果は八百を超えた。

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