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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
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レベル70 なんとか順序立てて進める事はできそうですが

 年内は結局あちこちに声をかける事で終わっていった。

 その年内に出来るだけ計画を練る事となった。

 日程の調整ができる部分は可能な限りして、動かす事ができない部分と重ならないようにしていく。

 魔術の修行は年明け早々に行う事となった。

 神社側の都合もあるので、これはあまり融通が利かなかった。

 他の二つの方はもうちょっとだけどうにかなった。

 特に新人の受け入れの方は一月の終わりの方にずらす事で対応する事となった。

 それまでに、妖犬相手の準備を進める事となる。

 時間も人手も稼ぎもギリギリなのは変わらないが、それでも全部を一度にやるよりは良い。



「それじゃ、行ってきます」

 魔術の修行に赴く二人は、そう言って神社へと向かっていった。

 これから六ヶ月に及ぶ修行がどういう結果になるのか分からない。

 もしかしたら途中で挫折するかもしれない。

(それは仕方ないか)

 出来るだけがんばってもらいたいが、どうしても合わないなら無理はしないでもらいたかった。

 神社にもそれは伝えていた。

 才能や素質がないなら無理はさせないでくれと。

 また、どうしても駄目なら早めに見切りをつけておいてくれとも伝えておいた。

 それならそれで、別の志願者を送り込めばよい。

 無理や無駄を重ねて、修行してる者も教えてる者も負担を背負う必要はない。

 何より、モンスター退治の方でも負担が増える。

 駄目なら駄目で戻ってくれば、モンスター退治で活動はできる。

 そちらに専念した方が、良い結果を生み出す事ができる。

 とはいえ、辛いからというだけで逃げ出してもらいたくもない。

 その見極めが難しい。

 そこはもう、教える神社側の裁量次第である。

(こればかりは任すしかないか)

 トオルの及ばない所である。

 なるようになるしかない。

 ただ、結果を受け入れるだけである。



 それに続いて妖犬相手の設備作りに入っていく。

 四人ほど下男の方に人をやり、作業の手伝いをしてもらう。

 作業は二週間もあれば終わるという。

 材料の有無も関わってくるので、多少は前後するとも。

 幸い、モンスター退治に関わるという事で、トモノリも多少は費用を負担してくれた。

「モンスター退治なら、経費として出すよ」

 そういうところにつけ込む人間が出てくるのだろう。

 だが、ありがたくそれを受け入れる事にした。

 思ったよりも材料が必要となり、結構な出費になってしまったのだ。

 その増加分をトモノリが負担してくれたおかげで、何とか備えは完成にこぎ着けていった。



「そんじゃ、行くぞ」

 選んだ仲間に声をかけていく。

 備えが完成し、いよいよ妖犬退治となる。

 それがどこまで機能するかは分からないが、やってみるしかない。

 おびき寄せるための餌として、朝一番で倒した妖ネズミをもっていく。

 素材は既に切り離してるので、あとは廃棄するだけとなる。

 それを十匹分持ち出して移動をしていく。

 行くのは、トオルとレンにアツシ、それとサツキ。

 他に、最初の頃に入った新人を二人ほど連れていく。

 サトシは、何かあった場合を考えて、妖ネズミの方に残しておいた。

 もし想定以上の数がやってきたり、妖犬などの強力なモンスターが来ても対処出来るようにするためである。

 解体の方も、五人ほど連れている。

 こちらは、マサルを妖ネズミの方に残して、コウジを連れていく事にした。

 チトセのような女子も妖ネズミの解体の方に残している。

 万が一備えが破られたり、トオル達戦闘担当の者達が突破されてもギリギリで対処出来るようにするためだった。

 トオル達が突破されたら生き残る可能性はまず無いだろうが。

 それでも、女よりは男の方が抵抗出来る。

 生存の可能性を考えての人選だった。

 レンは戦闘技術が高いので例外扱いである。

 ともあれ戦闘要員六人、解体に五人。

 これが対妖犬のために選んだ人員となる。

 レベルを考えれば十分であるとは思うが、上手くやれるかどうかは悩ましい。

 相手がどれだけの数でやってくるか分からないし、来た敵を倒せるかどうかも分からない。

 事前に考えてる作戦ややり方で対応できるかも分からない。

 そもそも、想定通りに体が動くのかも分からない。

 妖ネズミを相手にしてた時とは違う。

(まあ、やってみるしかないけど……)

 不安はどうしても隠せなかった。



「それじゃ、やるぞ。

 餌を中に入れるんだ」

 歩くこと数百メートル。

 妖ネズミを相手にしてる場所よりも、更に村から遠い場所。

 街道からも外れており、周囲に人影はない。

 そんな場所に設けた、対妖犬用の陣地。

 その中に入って、餌を大八車から放り出していく。

 それから全員を定位置に移動させ、様子を見る。

 今までの経験から、放り出した餌に妖犬がやってくるのは確実だった。

 解体が終わって、離れた所に捨てておいた妖ネズミの死骸は、一日もすれば完全に無くなる。

 そこから考えるに、放置しておけばいずれやってくるものと思えた。

 ただ、どれくらい時間でやってくるのかは分からない。

 こればかりは確かめようがなかったので、今ここで確認するしかない。

(まあ、本当に来てくれればいいけど)

 こればかりはモンスターの習性による。

 できれば、それなりに早くやってきてくれれば、という所だった。



 とかくモンスターの行動には謎が多い。

 妖ネズミの死骸を食っているらしいのだが、その割には行動が不可解である。

 血のにおいなどに引かれてやってくるなら、妖ネズミを倒してる場所に姿を見せてもよい。

 にも関わらず、妖ネズミを倒してる時にやってくる事はほとんどない。

 ごく希に突進してくる事もあるが、それも数えるほどしかない。

 トオルも今までやっていて、妖犬に襲われた事はほとんどなかった。

 特に、人が多くなってから襲われた事は皆無と言ってよい。

 奥方達を眠らせるために触媒を取りに来たときにやってきたが、あれが数少ない例外と言える。

 人間への警戒心を持ってるのか、と考えられるが、それもまた不明である。

 ただ、モンスターには分布地域というのがあると聞いた事がある。

 地域ごとに遭遇しやすいモンスターが変わるという。

 妖ネズミが多い地区には、他のモンスターは滅多にあらわれない。

 また、妖犬が多い場所では、他のモンスターはあまり見ない。

 例外も当然あるが、基本的にそういう線引きがなされてるようだとは言われている。

 確証はない。

 体験的な、体感的な事をすり合わせていった結果、そうなのではないかと考えられてるだけである。

 だが、そんなものがモンスターについて知られてる一般的な知識であった。

 酔狂な人間(学者や暇人)が、探索に出る事もあるが、本格的な研究調査などが行われたわけではない。

 知られてる事をつなぎ合わせた、うわさ話や推測の領域の話。

 人間が知ってるモンスターは、だいたいがそんなものである。



 妖犬についても、やはり分からない事の方が多い。

 遭遇例は妖ネズミなどと同じようにかなり多い方なのだが。

 なので、今回のおびき寄せについても、どれだけ上手くいくかは分からない。

 とにかく、出方を待つしかなかった。

「どれくらいで来るのかな」

 陣地の中でレンが聞いてくる。

 周囲の様子を確かめているのだが、一向にあらわれないので焦れてるのだろう。

「分かるかよ」

 正直な答えだった。

 妖犬をおびき寄せるのは、これが初めてである。

 どれくらい待てば良いのかすらも分からない。

「初めてだしな」

「ネズミのようにはいかないか」

「ま、暫くは平和だろうさ」

「だといいけど」

 その暫くがいつまでなのかが分からないから苛立つ。

 ある程度の時間が分かっていれば、待つのはそれほど苦痛ではない。

 だが、目安がつかないと一分と言えども苦痛になる。

「早く来ないかな」

 ある意味物騒なレンの言葉も、むべなるかな。

 本来なら避けるべき事ではあるのだが。



 願いはそれから二十分ほどした頃にかなった。

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