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レベル66 ここをどうにか出来れば楽になるんですが

 解決しておきたい問題は他にもある。

 現状、戦力の方はそれなりに揃ってきている。

 だが、どうしても足りない部分もあった。

「うーん」

 唸って悩んではいるが、解決手段は見つからない。

 どうにかしたい問題ではあるが、それこそ簡単にはどうにもできない事である。

 目下、トオルが最も悩んでる事の一つであった。



 ────魔術師を増やせないか。



 簡単にできるわけがない。

 そもそも魔術師というのが少数しかいない。

 その少数は、貴重な技術と知識を用いて、それなりの地位や立場にいる事が多い。

 技術者や知識層に近い扱いを受けるのが普通だった。

 サツキのように修行も半ばで途切れてるような場合はともかく。

 ほとんどがそれなりの生活を手に入れている。

 わざわざ危険をおかして冒険に、モンスター退治に赴く事はない。

 よほど危機的な状況が生まれたり、研究がてら外に出向く事がなければ戦闘に関わる事はない。

 もちろん、例外は確かに存在していて、冒険者をやっている魔術師もいる。

 ただ、そんな者は本当に少なく、魔術師が存在しない冒険者の一行や一団の方が主流だ。

 トオルは、幸運な例外と言ってよい。

 なので、更に魔術師を増やしたいというのは贅沢な欲求と言える。

 しかし、可能であるなら増やしたい。

 サツキがいるだけでかなり戦闘を楽にこなせている。

 あと一人か二人増やせればという思いはどうしても抱いてしまう。

 せめて、育成ができれば、とも。

(簡単にはいかないだろうな……)

 魔術を使うためにどんな修行や訓練が必要なのか分からない。

 そもそも、誰でも使えるのかも不明だ。

 練習や学習が必要なのは当然として、それ以前に素質や才能が必要かもしれない。

 持って生まれた能力があるから使えるのだとすれば、戦闘技術や技能のように訓練ではどうにもならない。

(どうなってんのかな、そのあたり)

 悩んでいてもしょうがないので、知ってる者に聞きにいく事にした。

(明日あたり、サツキに聞いてみるか)



「そうですね……」

 質問にサツキはしばし考えこむ。

「素質とか才能は…………関係ないと思います。

 少なくとも血筋とかはあまり関わってないように思えます」

 それを聞いて少し安心できた。

 持ってうまれた才能が関わってくるなら、増員など無理になってしまう。

「でも、どうしたんですか。

 いきなりこんな事聞いてくるなんて」

「いやね、魔術師を増やしたいと思ってたもんで。

 もし練習とか訓練とかで身につくなら、やってみるのもいいと思って」

「そういう事ですか

 仕事が終わってすぐに話があると言うから、どんな事かと思ったんですが」

「くだらない事だったかな?

 でも、聞いておきたくて。

 魔術とか、よく分からないし」

「いえ、そうじゃなくて。

 役に立たないから首になるのかなと思って」

「んなアホな…………」

 何がどうすればそんな事になるのかと思った。

「サツキがいないと困るよ」

 実際、いないと戦闘における危険が跳ね上がる。

 大量に妖ネズミが押し寄せた時など、サツキが魔術を使って眠らせてくれないと大変な事になる。

 直接的な打撃力はなくても、行動を阻害する魔術を広範囲で用いてくれるサツキは貴重な存在だった。

 それが決まれば、レベルが低い者でも多くのモンスターを倒す事ができる。

 こちらに損害をほとんど出す事もなく。

 戦力として貴重な存在であった。

 ついでに言えば、美人であるというのも捨てがたい大きな利点である。

 そんな下心が表に出ないように注意をしつつ、話を続けていく。



「でも、それなら誰でも身につける事ができるのかな」

「出来ると思います。

 修行は必要ですけど、基本的な事は身につけられるかと。

 その後、どういう風に魔術が開花していくかは分かりませんが」

「どうゆう事?」

「魔術自体は、誰でも身につけられると思うんです。

 でも、どんな魔術をおぼえていくかは人それぞれになると思います。

 どうしても得意や苦手が出てきますから」

「使える系統が違ってくるって事かな。

 攻撃とか防御とか」

「そういう事になるかと。

 素質や才能というなら、使える魔術の違いにあらわれると思います」

「なるほどね……」

「ある程度の魔術は誰でも使えるんですけどね。

 それでも、得意とするものの方が上達しやすいですから」

「それが違いになるんだ」

「はい」

「て事は、傷の治療とかをおぼえられない事もあるのか……」

 贅沢は言ってられないが、欲しいのはそこだった。

 攻撃も防御も必要だが、怪我の治療が出来る者が欲しかった。

 それだけで死亡率が下がる。

 多少の無茶も出来るようになる。

 だが、身につける魔術を選べないなら、そう簡単にはいかなくなる。

 幸いその懸念はすぐに消し飛ぶが。

「簡単なものだったら誰でもおぼえられると思いますよ。

 怪我の治療も、難しいものでなければ身につける事はできますから」

「本当に?」

「ええ。

 擦り傷とか、ちょっとした切り傷くらいなら」

「それは、たとえばモンスターに噛まれたり、骨を折られたらまずいのかな」

「それだと…………無理かもしれません。

 お婆ちゃんも、骨が折れた人とかの治療はできなかったみたいですし。

 でも、包丁で間違って切っちゃった人とかならすぐに治してました」

 つまりはその程度の治療しかできないという事なのだろう。

 薬とだいたい同じ程度の治癒力しか期待出来ないかもしれない。

 それでも、用いる事ができれば、怪我を怖がらなくて済むようになる。



「でも、そういうのを身につけるのって、どれくらいかかるの?」

 一番の懸念はそこだった。

 身につけるのに時間がかかり過ぎるのでは意味が無い。

 気長にじっくり育てる程の余裕は無い。

「それは何とも。

 私は子供の頃から暇を見てお婆ちゃんに教えてもらっていたので。

 話しを聞くと、一年くらいで基本的な魔術を身につけられるみたいなんですけど」

「詳しくは分からないか」

 そこは子供の頃から魔術が身近になった者には答えようがない事なのだろう。

「それに、身につけられたとしても、魔術の発動体がないと意味がありませんし」

「ああ、杖とかだっけ」

「そうです。

 前にも話した事があるかもしれませんが、これがないと魔術を使う事はできませんから」

 確かに以前聞いた事があった。

 意識の集中と、集中した魔力を魔術に変換するための道具が発動体である。

 それが、魔術という奇跡を発生させる。

「無くても使えないわけではないですけど。

 よほどレベルが上がらないと、無理だと言いますから」

「やっぱり、手に入れないと駄目か」

「意識の集中を助ける物があればいいんですけどね。

 水晶とか、古木とか」

「金で買えるならいいんだけど」

「結構高いですよ」

「…………すぐには無理か」

 ここでもやはり金が問題になってきた。

「それに、修行するにしても、ちゃんとした人から習った方がいいです」

「サツキじゃ無理なのか?」

「残念ですけど」

 そう言ってサツキは頭を下げた。

 素人ではないにしても、教えるとなるとそれなりの知識や経験も必要なのはトオルにも分かる。

 サツキはまだそのレベルに到達してないのだろう。

 だからトオルも無理強いは出来なかった。

(魔術を教える事ができる人がいればいいんだけど)

 そう都合良くそんな人間が見つかるとは思えなかった。



「それなら、神社の神主さんに聞いてみるよ」

 トオルの悩みに、トモノリはそんな言葉で答えてくれた。

「神主さんには、モンスターを追い払う魔術をかけてもらってるから」

「…………はい?」

 地元であるが、そんな話を聞くのは初めてだった。

 それよりも、今まで悩んでいた事をあっさりと解決されたようで拍子抜けしてしまう。

(俺の悩みっていったい……)

 喜ばしい事であるはずなのだが、釈然としない。

 そんな簡単でいいのかと思ってしまう。

 もちろん、事が簡単に片付いてくれればそれにこした事はない。

 ないのだが、納得しかねる何かがあった。

(いや、まあ、これでいいんだ……)

 もう少し面倒な問題じゃないのか、という疑問にそう言い聞かせていった。

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