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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
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レベル58 新人の受け入れは大変なものです

「それでまあ、皆と話しあってみたんですが」

 仕事が終わってから訪れたトモノリの部屋で、トオルはまとまった考えを口にした。

「まずは一人か二人を受け入れて、それで仕事に馴染んでもらいたいと。

 それでやり方をおぼえていってもらいたいんです」

 あれこれ話した結果、そういう所に落ち着いた。

 やり方をおぼえてもらう事に抵抗を示す者はいなかった。

「そうか」

 それだけ言ってトモノリは安堵の表情を浮かべる。

「やってくれるなら、こちらからあれこれ言うつもりはない。

 君の思うようにやってくれ」

「そう言ってもらえると助かります」

「君らに任せるんだ、一々口出しはしないようつとめるさ」

 横から口を出さない、というのはありがたい。

 後から色々口出しされて仕事が進まなくなるよりは。

 トモノリもそうなるかもしれないが、はっきりと明言してくれたのは助かる。

「それで、人を集めるとしていつからがいい?」

「いつでも。

 ただ、本当に最初は一人か二人でお願いします。

 あと、モンスターと戦うにしても、後ろで解体するにしても、必要な道具は用意しておいてください。

 そっちまで面倒は見られないんで」

「分かってる。

 兵役用の武器を出す事にする。

 久しく使ってなかったが、まあどうにかなるだろう」

「手入れはよろしくお願いします」

「もちろんだ」

 その他にも色々と話しあって、話しあいは終わった。



 ドタバタ続きではあるが、志願者の受け入れが始まった。

 その為にトオル達が示した条件は、おおよそ次のようなものとなった。

『必要な装備は領主であるトモノリが揃える事と、最低一週間ほどは研修を行う事』

『立地条件の都合もあり、最初は領主の館の周囲にある村の者からやっていく事』

『実施場所も、人が育つまでは領主の館のある、この場所この村でやっていく事』

 何よりも、

『駄目と判断したら、トオルの一存で辞めさせる事が出来る事』

 他にも細々としたものはあるが、めぼしい所はこのようなものとなっている。

 これらを条件で、とりあえずやってみる事となった。

 最初の一ヶ月は、実際にやってみてやり方をおぼえてもらう。

 余裕があれば、次の人間を受け入れる。

 そうやって少しずつ人間を増やしていくつもりだった。

 時間はかかるが、これが一番安全に確実に人に教えられるやり方だと思えた。

 ただ、人が増えるので今の場所だとどうしても手狭になる。

 その為、最初に入った者には、他の者が出来ない経験をする事になる。



「それじゃ、がんばってみようか」

 記念すべき最初の志願者に、トオルはスコップを渡してそう言った。

「まずは、穴堀りだ。

 これが出来ないと、死ぬからな」

 ポンポンと肩を叩いて相手を促す。

「じゃあ、やろう。

 とりあえず、今日中に十個は増やすから」

 その言葉に新人は、呆然としていた。

 無理もないだろう。

 モンスター退治に来たはずが、穴掘りをさせられてるのだから。

 だが、他の者達も穴を掘り始めてるのを見て、新人もそれに従っていった。



 トオルにとっての恒例常時である穴掘りは、今回は一日で終わった。

 人数が増えた事と、やり方を理解してる者が多いからだろう。

 新人も見よう見まねで穴を掘っていく。

「よーし、明日からモンスター退治を再開するぞ」

 トオルはそう宣言して、その日を終えた。



 次の日、宣言通りにモンスター退治が始まった。

「いくぞ、新人」

 そう言って新人を引っ張っていくトオルは、妖ネズミがひしめく穴の一つに向かっていく。

 キィキィと騒々しい妖ネズミは、近づいてくるトオルに向かって、威嚇のように吠えている。

 もちろん、深さがある穴から這い出てくる事はできないでいる。

 そんな妖ネズミ達を指して、

「いいか、こういう状態なら反撃はほとんどない。

 身を乗り出しすぎないように気をつけて、頭をかちわれ」

とやり方を説明する。

 言うだけではなく実践も示して。

「いいか、こうやって近くの奴からやってくんだ」

 言いながら、穴の中にいた五匹を瞬時に倒していく。

 レベル4に達した腕による一撃は、ほとんど一発で妖ネズミの頭を打ち砕いていく。

 通常の生物より強靱と言われるモンスターも、これではひとたまりもない。

 本当に一撃で絶命していく。

 それでもトオルは用心を重ねる。

「動かなくなっても油断はするな。

 出来ればもう一撃を入れて、確実にとどめを刺せ。

 万が一仕留め損なってたら、俺達の方が痛い目をみるからな」

 そう言って、更に一撃を見舞っていく。

「ここまでやったら、倒したモンスターを穴から取り出す。

 脇に置いておけば、回収に来た解体組が持っていってくれる。

 忘れるなよ」

「は、はい」

 固唾をのんでやり方を凝視していた新人が、乾いた声で返事をする。

 ここに至るまでのやり方を、しっかり見ていたようだった。

 言ってる事も、少しも聞き漏らすまいと耳を凝らしていただろう。

 それ故の緊張がトオルに伝わっていく。

「よし、そんじゃ次にいくぞ。

 今日も結構モンスターが引っかかってるからな。

 次々やっていかないと、追いつかなくなる」

「はい、分かりました!」

 元気の良い返事を危機ながら、トオルは次の穴へと向かっていく。

 それを指して、

「今度はお前がやってみろ。

 やり方はさっき見せた通りだ。

 上手くやろうなんて思わなくていい。

 とにかくやれ。

 やって感覚をおぼえろ」

と指示を出していく。

 尻込みをしながらも新人はそれに従っていった。



 一週間ほど基礎的な訓練を受けたとはいえ、素人と言って良いのは変わらない。

 そもそも訓練も、素振りと基礎的な形を行ったもの。

 あとは、木剣による立てた丸太への打ち込みである。

 やらないよりは良いが、それですぐにやり方が身につくというわけではない。

 新人はその割には頑張ってる方だろう。

 逃げ場を失ってるとはいえ、動き回る妖ネズミに剣を当ててるのだから。

 もちろん、頭に一撃とはいかない。

 手足や胴体、尻尾に当たるといった案配である。

 だが、二撃目三撃目で頭をたたき割る。

 レベルがつかない状態ならこんなものだった。

「そうだ、その調子だ」

 仕留め終わった所でそう言って、トオルは次を促す。

「あとは、中に入って死骸を外に出すんだ。

 それでこの穴は終わりだ」

「はい……」

 半ば呆然とした顔をしながら、新人は言われた通りに動いていった。

 その表情と声から、頭が動いてないのが分かる。

 さほど動いたわけではないが、気持ちの消耗が激しいのだろう。

 モンスターであろうと、倒した感触はそれほど心地良いものではない。

 呆然としてしまうのは、当たり前と言える。

 だから、指示を出して次の行動をさせる。

 でなければ次の行動に移れなくなる。

 それを繰り返す中で、慣れていってもらわなくてはならない。

 ただ単純に攻撃を当てるだけではなく、武器が相手に当たる手応えにも。

 でなければ、今後モンスター退治を続けていく事は難しい。

 黙々と死骸を穴の外に出す新人を見ながら、トオルは周りを見渡す。

 すぐ近くの穴で、妖ネズミがひしめいてるのが見えた。

「それじゃ、次はあっちだ。

 死骸を置いたら行くぞ」

 作業途中の新人に次の指示を出す。

 新人は「あ、はい」と返事をした。

 心ここにあらず、いった調子だった。

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