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レベル57 皆に話をして、皆からも話を聞いてみます

「とまあ、そんな話があったんでね。

 この先、もしかしたら他の村に行くことがあるかもしれん」

 集まってもらった一同に、聞いた事を伝える。

 先々どうなるかは分からないが、そういう事があったというの知っておいてもらいたいかった。

 聞いてた一同は、程度の差はあるが全員が微妙な顔をしている。

 苦笑というか呆れというか。

 困惑と言った方が正解かもしれない。

「まあ、言いたい事は分かるけどさ」

 レンがため息混じりに漏らす。

「そう簡単にいくわけないじゃん」

「俺たち、レベルが上がってもこんだけ苦労してるんだぜ」

 サトシも続く。

「真っ正面からやりあったら、今でもヤバイてのに」

「レベルが上がって少しは楽になったけどね。

 でも、何匹もやってきたら、応戦しきれないよ」

 その通りだと思う。

 サトシが槍でレベル3になり、レンは刀剣がレベル2になっている。

 一対一でやれば、最初の一撃でほぼ確実に妖ネズミくらいは倒せるようになっている。

 しかし、同時に二匹以上を相手にするのは難しい。

 治療の為の回復薬はあるが、それを用いるにはそれなりに落ち着いた状況でないといけない。

 その点で、瞬時に効果をあげるという回復魔法と大きな違いがある。

 残念ながら、この一団で唯一の魔術師であるサツキは、治療や回復魔術を使えない。

 それが、モンスターと正面切って戦う事を躊躇させる事になっている。



「私も、魔術の狙いをつけるのが難しいので……。

 できれば、動きを止められてる今のような場合じゃないと。

 範囲を拡げると、巻き込んでしまう人も増えてしまいますし」

 サツキもサツキでそう言ってくる。

 彼女の場合、広範囲に影響を及ぼす魔術を用いてるのも大きいだろう。

 相手を睡眠状態におとしこむ『安息の闇』は存外有益な無力化手段であるが、動いてる敵には当てにくい。

 位置を指定して魔術を発動させるため、相手の動きを予測して仕掛ける必要がある。

 動きが読めればそれでいいが、それが出来ないと有効な支援とはなりにくい。

 レベルの上昇に伴って使えるようになった魔術もそれは同じである。

 なので、今やってるやり方ならともかく、遭遇戦などだとかなり使用を限定せざるえない。



「解体だって難しいし」

「今みたいに安全な所でないと作業は難しいよ」

 マサルとコウジの二人もやはり否定的な事を口にする。

 とはいえ、それももっともな事だった。

 解体専門でやってもらってる者達にとって、モンスターが襲いかかってこないのは最低限の条件である。

 死骸の回収とて、安全に出来る事が前提でやっている。

 もしモンスターが襲いかかってくるような状況でなら、とてもやってられないだろう。

 そもそも、倒したモンスターの解体なぞ、戦った冒険者がやるのが通例である。

 トオルのように、解体の人間を専門で用いてる方が少ないだろう。

 連れて歩くには手間がかかる。

 こうした者達を用いるなら、今やってるように安全地帯を確保しないとどうにもならない。

 あちこち移動しながら、というのはモンスターに対抗できる人間でないと難しい。

 その為には、どうしても今やってるような防備を考えた場所を作らねばならない。

 陣地といったら大げさであろうが、そういったものが必要となる。



 各自の意見を聞いて、トオルもあらためて困難さを実感した。

「こりゃ、人を相当増やさないと無理だな」

 やるにしても、それが絶対条件になるだろう。

 戦闘するにしても、解体するにしても、それなりの人間が必要となる。

 人数自体は、各村から人を募ればどうにかなるだろうが。

 だが、それらにやり方を教えてとなるとやはり手間がかかる。

 サトシ達は成り行きや流れで協力してもらう事になったが、それとて事前の準備あってこそだ。

 モンスターをおびき寄せるための穴は複数掘ったし、解体する場所を柵で囲ったりもした。

 それだけの準備をして、可能な限り危険をおさえての事である。

 全員に目が届いていたのも大きい。

 何かあれば飛んでいけた。

 それが出来たのは人数が少なかったからだが、今は違う。

 仲間全体を見渡す事が難しくなっている。

 そうしなくても済むくらいにはレベルも上がっているが、だからといって任せきりにもできない。

 目の届いてない所で何が起こるか分からないのは怖い事だった。

 モンスターを相手にしてるだけならともかく、人間関係でどんな問題が起こるか分からない。

 人を率いる事の難しさはそこにある。

 今の所そういった問題は起こってないが、今後もこのままいけるという保証はない。

 前世の記憶がそんな事を思い出させた。

 人間、何かしら陰口などを叩くものである。

 職場において、息抜きがてら、上司や他の部署の人間への文句を言っていた事を思い出す。

 それが冗談で言ってるうちならば良いが、えてしてそこでおさまったりはしない。

 だんだんと言ってる事を本気にしていき、部署の内外の雰囲気を悪くする。

 それはどうにかして避けたい所だった。



 ただ、村やトモノリの事を考えると、「やっぱり駄目です」とは言いにくい。

 税収が上がった方がいいのは確かだし、収入のない次男以下の者達に収入源を与えたい。

 田畑への被害も減らしたいし、それが出来る人間を揃えておきたい。

 やり方を覚えてもらえば、多少の事はどうにかなる。

 ただ、せめてレベル1になってもらわない事にはどうにもならない。

(さて、どうしたもんだか)

 その為に何をどうするか。

 上手くいってる今の調子を崩さずに事を進める手段がないかを考えていく。

「なんか良い手段はないもんかねぁ……」

 答えを求めたわけではないが、自然と口からそんな言葉が漏れる。

 それを聞いた仲間が、全員呆れた顔をする。

「兄貴、断る気は無いってことなの?」

「らしいって言えばらしいけどね」

「兄貴だからな」

 サトシ達三人がいつも通りの調子でため息を漏らす。

 他の者もそれに賛同するように頷いていった。

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