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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
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レベル55 人が増えて成果も上がるが悩みも増えるという

 翌月。

 サトシの村から新たに二人加わった事で、トオルの一団は十人となった。

 結構な人数である。

「よう!」

「久しぶり」

「元気かよ」

 そんな声をかけあう同じ村出身の者達を見てて、あらためて思う。

 人数が増えたなあ、と。

(まさかこうなるとはなあ……)

 一年前には考えもしなかった。

 これだけの人数を率いるなどとは。

 レベルは低い、やってる事も微々たるもの。

 でも、冒険者の一団がここにある。

 一人でやっていた頃にはこうなるとは思ってもいなかった。

 けど、これで一段落というわけにはいかない。

 これを率いて今後もやっていかねばならない。

 出来る事なら、死人を出さずに。

 そんな上手くいくわけもないが、なるたけ危険には触れないようにしていきたかった。



「そんじゃ、始めるぞ」

 そう言ってトオルはスコップを手に取る。

「人数が増えたんで、もうちょっと穴をひろげたい。

 今日明日は穴掘りでいくぞ」

 それを聞いてサトシ達はうんざりした顔をする。

「またかよ」

「好きだよね、穴堀り」

「モグラが友達なんだろうね」

 いつもの三人が辟易した顔でぼやいている。

 同じ村出身の二人も、いきなりの穴掘りに驚いたのか目を見開いていた。

 そんな二人にサトシは、

「これがうちの兄貴だから。

 よーくおぼえておけ」

と忠告を放つ。

 それについて思うところはあったが、トオルは口をつぐんだ。

 やるべき事はそこではない。

「十個は穴を作るぞ」

 うんざりした声が、あらためてあがった。



 既に出来上がっていた穴の更に外周に穴を掘っていく。

 大八車が通れるように通路を確保し、それでいて内側にモンスターが入りにくくなるように。

 穴を掘る、というだけでも位置や大きさについては頭を使う。

 モンスターを陥れるだけではなく、攻撃のしやすさや移動のしやすさも考えねばならない。

 無闇に掘ればいいというわけにはいかなかった。

 事前に位置は決めてはいたのだが、それでも実際にやってみると色々と難航した。

 実際に現地で試してみたら、大八車を動かすには狭すぎたり、遠く離れすぎたりという問題が出て来た。

 移動にかかる時間がどうしても増える事になるし、魔術の射程からも外れていく。

 それらはある程度諦めなければならない事ではあったが。

 ただ、穴から穴への移動は簡単にできるようにしておきたかった。

 そのための通路をどう通していくかは誰もが頭を使う事になった。

 事前の想定と実際の着工が違う事はよくある事。

 それがこうも大きいとは思わなかった。



 それでも作業はどうにか進んでいき、穴は完成していった。

 途中、どうしても邪魔になるので穴を幾つか埋める事もあった。

 大きさを変更したり、更に追加した方がよいと思えるものもあった。

 二日で作る予定が、結局四日もかかってしまった。

「なあ、兄貴」

「なんだ?」

「俺、穴堀りでレベルがとれそう」

「俺もだ」

 作業が終わった時に、そんな馬鹿げた事も口にした。



 その甲斐あってか、作業効率はかなり良くなっていた。

「六番と八番の穴にモンスターがいます」

「はいよ。

 サトシ、レン、一人ずつ穴についてくれ」

 穴にそれぞれつけている立て札の番号をサツキが読み上げ、トオルが指示を出す。

 それに従って二人がモンスターを片付けていった。

 トオルもアツシを連れて穴を回り、モンスターを片付けていく。

 やり方を教えながらなので、モンスターを倒す速度はそれほどでもない。

 だが、アツシがやり方をおぼえるまではこんな調子でやっていかねばならない。

 一ヶ月ほどはトオルがつきっきりで教え、それからサトシやレンと組ませていこうと考えていた。 

 モンスターを倒し、それを穴から回収して外に出しておく。

 それから次の穴に向かっていく。

 全部が終わったら餌をまいて次に来るモンスターを待つ。

 その繰り返しをアツシに教えていく。

 教わるアツシも、渡されたマシェットを懸命に振り、ぶかぶかの鎧に詰め物をして励む。

 動き回るのも大変そうだったが、へばりながらもアツシはトオルについていった。

「とにかく繰り返せ。

 繰り返さなくちゃ何もおぼえない」

 そう言い聞かせてアツシを連れ回す。

 あっちの穴からこっちの穴へ。

 ここのモンスターが終わったら次は隣へ。

 そんな調子でモンスターを倒し続けていく。

 昼が来るまで二人はそんな調子でモンスターを相手にしていった。



 意外な事に倒したモンスターの数はそれほど落ち込んだりはしなかった。

 トオルが動けない分は下がると思っていたのだが。

(意外といけるもんだな)

 思わぬ結果に驚いてしまう。

「倒してもすぐ次があるからね」

「とりあえず餌をばらまいておけば、穴に入ってくるし」

 サトシとレンは午前中を思い出しながらそう言う。

 穴が増えた事によって、次々にモンスターを相手にする事が出来るようになったのだろう。

 モンスターをおびきよせる穴も、どれか一つにはモンスターがいるような状況である。

 穴の稼働率、という言い方はおかしいかもしれないが、それが一定値より下がる事はなかった。

 回収と解体の人数が増えた事も大きい。

 誰か一人か二人が回収に回っても、解体に専念する人間が確実に一人は残る。

 それが解体を進めていく事につながっていた。

「そしたら、回収を専門でやってくれるのを作った方がいいのかな」

 そんな事も考えていった。

 ある程度は別の作業もこなしてもらわないといけないが、一つに専念する事の意義も大きい。

 この人数に増えた事で出来るようになった事をあらためて考えていく。



 同時に、この人数だからこそ上手くまわさないといけない事も感じていった。

 どうしても無駄が発生するのは仕方ないが、無駄だらけというわけにもいかない。

 無理なく確実に動いていけるように、それぞれの動きが相手の作業を助けるようにかみ合わせていかねばならない。

 もし何かが止まったり滞れば、その分別の場所を止める事にもなりかねない。

 回収解体が遅れれば、それだけ穴がふさがる事になる。

 戦闘と言い難いモンスターとの戦闘も、手間取ればその後に控える回収解体を遅らせる事にもなる。

 両方を上手く動かしていく必要があった。

(どうすっかな……)

 思案はまだまだ続きそうだった。


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