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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その4 上に立つ者になっちゃったかもしれない気がする日々
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レベル53 考えは同じ所をぐるぐると回ります

「さてと……」

 寝床に横になる。

 それだけで体が楽になっていく。

 まだ眠るわけではないが、とにかく今はそうしていたかった。

 体もそうだが、頭も重い。

 何にしても疲れる。

 問題、というのもおかしいが、片付けねばならない事が解消されない。

 どうしてもつきまとう事が、解決出来ないまま放置状態になっている気がした。

 何とか取り繕ってこなしているが、その場しのぎにしかなってないとも思う。

「どうしたもんだか」

 なにか解決策はないかと考えるが、答えが出て来る事はない。



(とりあえず稼ぎがなあ)

 何につけ悩みはそこに行き着く。

 稼ぎたい。

 もっと収入を増やしたい。

 今の倍くらいは稼げるようになりたい。

 元々、それが理由で町に出て冒険者になったのだ。

 その願いは、残念ながらまだかなってない。

 収入が安定するようにはなったが、決して裕福になったわけではない。

 倒せるモンスターの数は増えているが、それは人数が増えたからだ。

 一人当たりの収入で考えれば、さして増えてるわけではない。

 素材の数で言うなら、一人あたり一日一百匹。

 税金を差し引いた手取りは一日五千六百銅貨あたりである。

 その倍となると、一日に一人当たり二百匹は倒さないといけない。

 現実的にそれは無理と言ってよい。

 レベルが上がったとは言っても、そこまで強くなったわけではない。

 最弱レベルの妖ネズミを、逃げられないように囲い、反撃できない位置から攻撃する。

 それだけ有利な状況を作り出しても、倒せる数にはどうしても限界が発生する。



 一番大きな理由は、モンスターをおびき寄せる間隔にあった。

 これには倒したモンスターの回収が絡んでくる。

 とどめを刺したモンスターが脅威になる事はない。

 だが、それを回収してる間は、作業中の者達を守る必要が出て来る。

 一番良いのは、モンスターが来ない事なので、その間は餌をまくのを止めている。

 それがどうしてもモンスターを呼び込む間を作ってしまう。

 今は同時に複数の穴に餌を放り込み、やってきた妖ネズミを順番に倒していっている。

 一度に倒せる数を極力増やす為だ。

 だが、それらを回収するのにかかる時間が、結局時間の浪費になってもいる。

 その部分をどうにか出来れば、更にモンスターを呼び込む事が出来るのだろうが。

(いや、無理か)

 どうしても必要な作業であるし、そこで無理をしたら大惨事を引き起こしかねない。

 回収してる者達に護衛をつければいいのかもしれないが、そちらに回す人間がいない。

 仮にいたとしても、その分の人数を増やすと人件費は更に増大する。

 やりくりを上手くするにしても、やはり限度があった。

 もしかしたら何かやり方があるのかもしれないが、今のトオルにはそれが思いつかない。



 また、人数を増やすとなると、今度は指揮や統率、管理の面での問題が出て来る。

 今だって全体を見渡せてるわけではないのだ。

(どうしたって、解体は任せっきりだしな)

 モンスターの相手と、解体とでは作業場所が違う。

 その両方を同時に面倒を見ることは出来ない。

 それどころか、モンスターを相手にしてる者達ですら、完全に把握出来てるとは言い難くなってきている。

(前に出ると見えなくなるからなあ……)

 モンスターを相手にしてる時は、他の場所まで見ていられない。

 目の前の妖ネズミにマシェットを当てる事だけ考えざるをえない。

 その為、どこの穴でモンスターが倒し終わり、どこがまだ片付いてないのかすら把握しかねている。

 全体を見渡せば、人が必要な所────まだ妖ネズミが生き残ってる所も分かるだろう。

 そうなれば、「そっちに行ってくれ」と指示を出すことも出来る。

 また、倒し終わった所から、モンスターを回収してくれるよう指示を出すことも出来るだろう。

 今、それがなかなか上手く出来ないでいる。

 全体の効率をそういう所で落としてるとは思った。

 それらが積もり積もって、捌ける量を落としてるかもしれない。

(かといってなあ。

 俺が外れるのも何だし)

 最もレベルが高く、それだけモンスターを倒せるトオルが抜けたら、効率が更に落ちる。

(全体を見渡せればな)

 その位置にいられれば、と思う。

 あるいは他の誰かに任せるか?

 だとしても上手く指示を出せるのか?

 それにはそれなりの知識と訓練、経験が必要だろう。

 今、それを頼めるような人間はいない。

(育てるべきなんだろうな)

 だが、その余裕がない。

 モンスターを相手にしてる所を見渡せる人間が欲しかった。

 出来れば、解体作業も見ていられる人間も。

 そんな事が出来るのは、現状ではおそらくトオルだけであろうが。

 そのトオルが、今の持ち場であるモンスターとの戦闘から外れる事が出来ない。

 にっちもさっちもいかない。



(もう少しレベルが上がってくれればな)

 贅沢な事であろうが、そう考えてしまう。

 サトシもレンも、あと少しレベルが上がってくれれば。

 そうなれば、トオルが前線から離れてもいいのだ。

 アツシがそこに加われば、捌ける数はそれほど落ち込む事もなくなるだろう。

 だが、それは何ヶ月も先の事になる。

 今すぐ問題を解決する事にはつながらない。



 解体の方も問題を抱えている。

 今は四人でやってもらっているが、どうしても手が遅い。

 レベルが上がれば解決する問題かもしれないが、レベルが上がるまではこのままとなる。

 また、解体と同時に、倒したモンスターの回収もやってるのも問題となってしまう。

 回収してる間はどうしても解体の手が止まる。

 また、回収に手間取ればその分解体も滞る。

 専門で回収の人間をあてがえればいいが、そんな余裕もない。

 今度やってくる予定の二人が入れば改善されるかもしれないが、それを宛にするわけにもいかない。

 何とかこのあたりも改善したいところだった。



 他にも、回収した素材を数えておいたり、保存がきくように燻したりと、やる事が多い。

 それらを四人で回しているのだから手が足りなくなる。

 戦闘と解体の人数が同数の今は、どうしても解体が追いつかないでいた。

(解体の人数が増やせればいいんだけど)

 その為には、更にモンスターを多く倒す必要が出て来る。

 目安として、一人当たり一百匹は欲しい。

 その分呼び込むモンスターを増やすとなると、負担はやはり大きくなってしまう。

 以前も考えた事だが、やはり同じ問題が出てきてしまう。

『稼ぎを増やす為に人が必要』

『増やした人をまかなうために、より多くの稼ぎが必要』

 これが交互に求められてしまう。



 レベルアップが救いになるのは確かだった。

 同じ人数でも、レベルが上がれば処理できる数は変わってくる。

 トオルもサトシもレベルが上がった事で、モンスターを倒すのが楽になった。

 解体の方でも同じ事が言えるのかもしれない。

 だからといってどこまで改善がはかれるかは分からないが。

 まだ解体の方の二人のレベルアップはなされてない。

 だからこれは予測が不可能な所だった。



(それになあ……)

 悩みは、一団の中の連携や動きだけではない。

 採取した素材の扱いも問題の一つになってきていた。

 なんだかんだ言いつつも、採取できる素材の数は増えている。

 一人当たりの稼ぎはそれほどではなくても、全体で採取できる量は増えているのだ。

 ただ、それが運搬や保管場所の問題を発生させてしまっていた。



 今は、使ってない小屋などを保管場所にしている。

 そこが手狭になってきてしまってるのが問題だった。

 一日に採取できる量が八百匹分ほどになっている。

 それが売却するまで貯まるのだ。

 保管保存するのも一苦労になってくる。

 在庫の数は、そのまま儲けになるが、手元にある間は負担になってしまう。

 売れて無くなった時にはありがたいが、それまでは置き場所を常に圧迫する。



 しかも量が多いと言うことは運ぶのにも苦労する。

 一個一個は小さくても、それを入れる容器も加えたら結構な大きさになる。

 大八車に乗せて、解体した所から保管場所の小屋まで移動するだけでも大変な事になる。

 何回か往復しなくてはならない。

 その手間も負担の一つだった。



(どうすりゃいいんだか)

 モンスターへの対処は?

 全体のやり方は?

 人を増やすだけでいいのか?

 誰をどこに割り振るのか?

 どんな仕事が必要で、誰にやらせるのか?

 それらの教育は?

(駄目だ、全然分かんねえ…………)

 抱える問題も、思い浮かぶ打開案も変わらない。

 だから同じ事を何度も考えて堂々巡りになる。

 横になったままあれこれ考えるが、解決策は出てこなかった。


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