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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その3 懐かしきというほどでもない故郷のためというわけでもなく
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レベル48 まだ終わったわけではないので今後の身の振り方を考えました

 聞き取り調査はその後も進んでいった。

 トモノリもそうだが、執事やメイド長、下男も対象となった。

 また、使用人達にも事情の聞き出しは行われていった。

 それだけでなく、かつて館にいた者達にもなされていく。

 領地内の村に住んでる者達には、館への招集がかけられもした。

 既に村にいない者には、日を置いて聞き取りにいくという徹底ぶりである。

 当然ながら、奥方と坊ちゃん、そして奥方が連れてきた使用人も対象となった。

 使用人達は呆気ないほど簡単に陥落したようで、知っている全ての情報を吐いたという。

 坊ちゃんも同様で、まだ子供と言って良い年頃ゆえに大人の迫力と質問の仕方に抗う事は出来なかったという。

 奥方はさすがに結構な抵抗を示したようだが、それでもいくつかの情報を聞き出す事が出来たという。

 その内容はトオル達にもたらされる事はない。

 領主であるトモノリにも全てが語られたわけではない。

 調査中だから、全容が分かるのは結果が出てからになるだろう。

 それとて、重要な部分について、機密として扱われる事は外部に漏らされる事はない。

 ただ、聞き取りを終えた貴族法院の者達が、奥方達を馬車にのせていくのは館にいた者達が目撃した。

 それが護送用だとトオルはその時になって知った。



「静かなもんだな」

 奥方達が消えた後の館は、実に快適なものとなった。

 余計な問題を起こす者がいない、それを黙らせていく手間もかからない。

 ただそれだけで、重く停滞していた空気が消えた。

(どんだけ影響してたんだよ)

 奥方がやっぱり原因だったのかと思ってしまう。

 少なくとも、仕事の流れが停滞する事はなくなった。

 また、雰囲気の改善が見て取れる光景も出て来てる。

 奥方が原因で去っていった者達が復帰してきてるのだ。

 貴族法院の調査によって、館の事が、奥方が訴えられてる事は周囲に知れ渡っている。

 護送されていった後にトモノリが奉公人の募集をかけたら、それに応じてくれる者が結構いたのだ。

 誰もが奥方を嫌ってたという良い事例であろうか。

(それを見計らってたトモノリ様も強かだよな)

 奥方がいる間は誰も来てくれないだろう、と何かの折りに口にしていた事がある。

 だから、奥方が消えるのを待っていたのかもしれない。

 人がよいのが取り柄と思っていたが、存外そうでもないのかもと思いもした。

 おかげで、村からの奉公人が何人か館で働いてる。

 万全には至ってないが、館の内外は少しずつととのいつつあった。



 とはいえ、これで終わりというわけではない。

 取り調べに裁判はこれからだし、必要に応じて呼び出しがかかる事になる。

 トモノリも使用人達もそれを避ける事はできない。

 トオルも関わってる以上、例外にはなれない。

 連絡先を常に報告する義務が生じるほどである。

 それは裁判が終わるまで続く事になる。

 物事をただすためではあるが、面倒であるのは間違いない。



「それでこんな事を?」

「そういうわけです」

 苦笑気味のトモノリに、トオルは真面目な顔をして頷いた。

「なるほどなあ」

「どうでしょうか?」

「いや、かまわんよ。

 部屋は空いてるし、人手がいるのは助かる。

 君がそうしてくれるのもありがたいしな」

「助かります」

「ま、事が落ち着くまでは君が連絡できる所にいてくれた方がいいしね」

「そっちの方も兼ねて考えてますから」

「ああ、分かった。

 そうなると、契約も変更した方がいいのかな」

「そこはどうしたらいいのか聞いてみないとわからないので。

 一度周旋屋に連絡してみます」

「よろしい。

 なら、こちらもその件で尋ねるとしよう」

 現状をこなしていくために考えた事を提案した結果は、トモノリの承諾で終わった。

 とりあえず無事に終わった事に安堵する。

(あとは……)

 仲間にも声をかけていかねばならなかった。



「…………というわけだ」

 そう締めくくった言葉に、仲間は色々な反応を見せた。

 色々思う事があるのだろう。

 トオルの「ここでモンスター退治を継続する事にした」という発言に。

「じゃあ、ここにもう暫くいるってこと?」

「そうなるな」

 サトシの質問にあっさりと頷く。

「貴族法院からの呼び出しがいつあるか分からない。

 連絡先が統一されていた方が便利だと思うしな」

「だからって、ここでモンスター退治する必要ないんじゃないの?」

「ここに限定する必要はないかもな。

 どこでやっても同じだし。

 けどな、だったらここでやっても良いって事だろ」

「まあ、そうだけど」

 それだけなの、と言わんばかりの口調と表情である。

 他の者達も同じだった。

「…………あと、ここらの税収に多少は貢献しようと思ってな」

「なにそれ?」

「今まで浪費が激しかったから、結構大変らしいんだ。

 で、それだと俺の家にも負担がかかりかねない」

 理由の一つであった。

 支倉家の財政はかなり逼迫しており、何かしらの増収が必要だった。

 手っ取り早い手段として、年貢の増加がある。

 それは可能な限り避けていたトモノリであったが、帳簿を見ていたトオルにはそれがもう無理だと思えた。

 となれば、何かしらの手段で税収を上げるしかない。

 モンスター退治で得られる収入から税をおさめて少しは協力しようと考えていた。

 焼け石に水であるが、やらないよりはとも思っていた。

「そういうわけで、俺はこっちでやっていこうと思ってる。

 できれば、皆にも協力してもらいたい」

「そりゃあ、かまわないけどさ」

「どこでやっても同じだし」

「モンスターがいるならいいんじゃない?」

 サトシ・マサル・コウジの三人はすぐに賛同した。

「私もかまわない」

「俺も、村の近くなら」

 チトセとアツシも同じだった。

「でも、二人は村に戻ってもいいんじゃないか。

 ここで奉公してもいいんだし」

 当初の問題は無くなってるのだから、そうした方がいいとも思った。

 少なくともモンスター退治にまつわる危険は無い。

 だが二人は、

「ううん、トオル兄ちゃんについてく」

「俺も。一緒にやりたいんだ」

 そう言ってトオルと一緒にやろうとする。

「それに、店にも登録してるし。

 辞めるのも難しいんだろ」

「それもそうか」

 アツシの言うとおりだった。

 今は周旋屋に所属してるのだから、奉公に出るのも簡単ではないかもしれない。

 どうしても、周旋屋から人を派遣するという形になってしまう。

 そうなれば支倉家が周旋屋に金を払わなければならない。

 それはそれで負担が増えてしまう。

「しょうがないか」

 面倒な事に巻き込んだかな、と思ってしまう。

 そうせざるえない状況ではあったかもしれないが、もっと良いやり方があったのではないかとも。

 どの道、今からどうにか出来る事ではない。

「どうせなら、この機会に辞めてもいいんだぞ。

 無理してやる事もないし」

「ううん、私やる」

「俺も」

 意外な事に二人はそう言った。

「兄ちゃんと一緒でいい」

 チトセの声にアツシも頷く。

 何がそんなにいいのか分からないが、そう言ってくれるなら拒む理由もなかった。

「けど、もし無理だと思ったら遠慮無く言うんだぞ」

 そう念を押しながら。



 サツキとレンは、少しばかり待って欲しいという事になった。

「あの、町に預けてあるお金とか」

「道具とかを取りに行ってからでいいかな」

と思うところを口にした。

 まだ給金を取りに行ってないし、町に残してきた道具もある。

 それらを受け取ったり引き出してこないとどうにもならない。

「分かった。

 二人はまずそれをどうにかしないとな」

「ええ、すいません」

「ごめん、すぐに戻ってくるから」

「なら、かまわないよ。

 一緒にやってくれると助かるし」

 辞める意志がない事を聞いて安心した。

 これで終わりになったら戦力が激減する。

 モンスター退治という部分だけ見ても、それは避けたい所だった。

 性格や人格も悪くない。

 もちろん、見た目も。

 なので、一緒にやる気があるのは助かる。

 町に戻ってしまえば考えが変わるかもしれないが、その時はその時と覚悟をするしかない。

 それでも、全員が当面一緒にやる意志があるのがありがたい事だった。



 町から村に拠点をうつしての活動は、こんな感じで始まる事となった。

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これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


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