表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その3 懐かしきというほどでもない故郷のためというわけでもなく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/251

レベル44 いない方がよい人というのは、残念ながらいるようで

「そんじゃ、やるぞ」

「おう」

「はい」

「いつでもいいよ」

 外に出たトオル達は、モンスター退治を開始していく。

 いつも通りに餌をまいてモンスターをおびき寄せる。

 やり方は変わらない。

 ただ、昼を過ぎてからなのと、解体に人数を割けないのでどうしても数は限られてしまう。

 それでも、触媒の確保のために、どうしても必要だった。

「まったく、あいつらときたら」

 奥方と坊ちゃんと牢屋の連中。

 そいつらを眠らせておくためにトオル達は触媒の用意をしなくてはならなかった。



 仕事がはかどらないのは、ただただ奥方の邪魔があるからであった。

 サツキの魔術によって奥方と坊ちゃんが眠り続けていた間、作業が進んでいった事でそれが明らかになった。

「これなら、一日中眠っていてくれた方がありがたい」

とトモノリが口にするほどである。

 なので、可能な限りその願いを叶えようと、トオルは奥方達に魔術を使い続けた。

 牢屋の連中にも例外なく。

 脱獄を考えられたり暴れられたら面倒と考えたからだ。

 そのため、触媒に用いる素材は常に消費されていく。

 可能な限り調達するために、モンスター退治は欠かせなくなっていた。

 それが午後からなのは、昼間ではそれぞれの仕事を手伝ってるからである。

 トオルは書類の整理に。

 サトシは下男と補修作業を。

 サツキとレンはメイドとして家の中の清掃などに従事していた。

 それが本来の仕事であり、他の作業をしてる事のほうが異常である。

 トモノリが、

「それじゃ、モンスター退治を仕事の一つとしてお願いしよう」

と申し出てくれたから、こちらも業務の一つとして扱われる事にはなった。

 おかげでトオル達は触媒に必要なだけの素材を集める事が出来る事となった。

 採取した素材はトオル達で好きに処分してくれてかまわないとも言ってもらっている。

 なので、この作業による素材の採取は純然たるトオル達の利益となる。

 これについて、周旋屋から来てる他の作業員が文句を言わないか不安ではあった。

 だが、「モンスターを倒して手に入れてるんだから」というのを理解してくれた。

 通常業務とは違うが危険な作業を行ってるのは分かっているので、特に不満はないという。

 それよりも、奥方達を寝かしつけていてくれるのでありがたいと言ってくれる。

 奥方達がよほど邪魔だったのだろう。

 自分達の儲けだけでなく、他の者達からの期待のためにも、トオル達はモンスター退治に繰り出す事となっていた。



 戦闘そのものはいつも通りに進んでいく。

 トオルとサトシが穴に落ちたモンスターを倒し、数がおおくなればサツキが魔術を使う。

 レンは基本的に解体に専念してもらっているが、手が足りなくなったら投石器やナイフで戦ってもらう。

 素材回収にそれほどこだわらなくて良いから、解体はあと回しになっていった。

 戦闘と後処理の兼ね合いはなかなか上手くいかない。

 あらためて、いつも解体していてくれたマサルとコウジのありがたさを感じる。

 人手の必要性も。

(この仕事が終わったら、人手の募集をしないとな)

 そう思いつつ、穴にはまりこんだ妖ネズミを倒していく。

 本日も二百ほどの素材の回収が出来た。

 魔術に使う分を考えても、十分過ぎるお釣りがくる。



 ただ、こんな状況がいつまでも続くというわけではない。

 いずれ契約が切れたら町に帰る事になる。

 それから先はどうするのか?

 余計な心配ではあるが、奥方が普通に行動し始めるであろうその後について不安はあった。

 執事にその事を尋ねると、

「旦那様に何かお考えがあるらしい」

と答えが返ってきた。

 それがどういったものかは聞かせてもらえなかったが、それならそれで問題ないのかもとは思った。

 奥方の日記や手紙を見せた日からトモノリは変わった。

 領主としての執務をしっかり行ってるようだった。

 奥方と坊ちゃんが一日の大半を眠っているのも関わってるのかもしれない。

 そもそもその二人を眠らせ続けようとしてる所が変わっている。

 以前だったら、そんな事を決してしなかったかもしれないのだから。



「それでわざわざ聞きに来たと」

「ええ。

 余計な事とは思うんですが」

 乗りかかった船という事もあり、トオルは奥方達への対処を尋ねる事にした。

 このまま放置するのは気が引けた。

 何かしらきっかけを作ってしまった身としては、それだけは出来ないと思った。

 懸念される奥方と坊ちゃんと牢屋の連中は、既に寝かしつけてるので話しを聞かれる心配はない。

 なので、今後どうするのかを尋ねておきたかった。

「大した事はできないでしょうけど、やれる事があればやっておきたいので」

「ふむ」

 トモノリは微笑を浮かべる。

「そうだな、出来るなら証人となってもらいたいとは思う」

「証人ですか?」

「ああ。

 この前訴えた事についてね」

 それが役所まで送り届けた書状の事なのだとすぐに分かった。

「それはかまわないですけど。

 いつ頃になりますか」

「証人として必要になる時期かね?

 こればかりは何とも。

 審査を通して受理されるまでには三ヶ月はかかると言われてるからね」

「そんなに……」

 結構先の話になってしまう。

「その間、奥方…………ええっと、仕事の方とかどうするんですか。

 また邪魔が入ると思うんですけど」

「そこなんだよな」

 途端に辟易とした顔をする。

「どうしたらいいか私も悩んでるんだよ。

 できれば、このまま静かな方がいいんだがね。

 色々と助かる」

「仕事がはかどってるのは事実ですね」

「余計な動きをしないでくれるしな」

 何か含むところのある言い方であった。

 気にはなったが、あえてそこには触れないでおく事にした。

 トモノリから話してこないなら、こちらから尋ねるのも気が引ける。

 ただ、訴えたという事から考えて、あまり良いことではないとは思った。

(まあ、普通に動いてたら、何かしら妨害とかしてきそうだしね)

 証拠隠滅に、裏工作。

 どんな事をするかはわからなかったが、何かをしそうな気はした。

 悪知恵の働くような輩は、自分が不利になるような事を決してしようとしない。

 やったとしても痕跡を消そうとする。

 それが余計墓穴を掘る事もあるだろうが、下手に動かれると面倒になるのは予想できた。

「そうなると、それまでは皆さんに静かにしていてもらわないとまずいのでは」

「その通りだ。

 だが、どうすればいい?」

「そこなんですよね。

 一応、考えはあるんですが」

「ほう。

 聞かせてもらおうか」

 ありがたい申し出である。

 トオルは考えをそのまま伝えた。



 そして契約が完了する日。

「では、ひとまずこれで」

「ああ、待ってるぞ」

 トオルとトモノリはそう言葉を交わして別れた。

 帰るのはトオルだけ。

 サトシとサツキとレンはそのまま館に残していた。

 周旋屋から来てる他の作業員達も同じだ。

(早く帰ってこないとな)

 そのために駅馬車を使う必要がある。

 役所に行ったときのように、乗り継いでいかねばなるまい。

 荷物の中にある書状を渡すためにも。

 今回は周旋屋にそれを持って行く事になる。

 トオル達との新たな契約を記したそれを。

 当初の予定と状況が変わったので、契約を延長したい…………そういった内容になっているはずである。

 もちろん、奥方達の問題が片付くまでの措置として必要な事だからだ。

 いずれは各村から、奉公を再び募る事になるだろう。

 だが、それまでの繋ぎがどうしても必要となる。

 事が進むまで三ヶ月。

 その間、館での仕事を手伝う人間を欠かすわけにはいかない。

 契約延長はそのためだった。



 もちろん、これまで働いていた分の報酬も受け取らねばならない。

 それは周旋屋が預かっているので、一度は町に行かねばならない。

 全員が出向く事はできないので、交代で町に繰り出す事となる。

 その最初の一人としてトオルが町に向かう事になった。

 町に残してきた者達を連れてくる必要があったので、一番最初という事になった。

 新たに認められた仕事で人手がどうしても必要になるからだ。

(けど、モンスター退治まで認められるとはねえ)

 触媒確保をだけでなく、これで稼がせてもらえれば、と思っていた。

 それをトモノリはあっさりと認めてくれた。

 なので今回の仕事の延長による新たな契約には、モンスター退治も正式に加えられている。

 サトシの村でやったように、寝床と食事などの世話を報酬として用意してもらう事も契約に入っている。

 その代わり、事務作業などを行った場合は、規定の給金を出すという事にも。

 トオルとしては、モンスター退治に専念したかったのだが、片付けねばならない書類が多いから仕方ない。

 あとは素材の売却先であるが、これは何かと世話になってる行商人にお願いするつもりだった。

 それらの交渉もせねばならない。

(がんばってみるか)

 やろうと思ってもなかなかできなかった、依頼としてのモンスター退治。

 それが出来るという事に、トオルは胸を躍らせていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ