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【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その3 懐かしきというほどでもない故郷のためというわけでもなく
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レベル43 何もしないでいてくれる事が最大の貢献になる事も

 町までの旅はそれほど大過なく終わった。

 歩き通しというわけではなかった。

 途中の宿場で馬車に乗ることが出来た。

 それだけの路銀は渡されている。

 それを乗り継いでいったおかげで、歩くより格段に早く町にたどり着く事ができた。

「なんか、久しぶりな気がするな」

 年末から新年にかけて、半月以上留守にしていた。

 そう思うのも無理はないのかもしれない。

 とはいえ郷愁にとらわれてるわけにもいかない。

 果たすべき役割のために、トオルはすぐに役所へと向かった。



 やるべき事は本当に簡単だった。

 書状をしかるべき窓口に持って行って渡す。

 基本的にはそれくらいで終わった。

 ただ、窓口で書状を見せたら役人が少し驚いていたりはした。

 その後、後ろの方で少し役人同士で顔を見せ合い、トオル達を専用と思われる窓口へと回していったが。

 やはり領主からの書状というのは重要だったようで、一般的な窓口とは別の所で受け渡しとなっていった。

 その他、トオルと領主との関係などを質問されたりもした。

 正直に周旋屋から仕事で回された事を伝え、その身元確認のために役所で待たされる事となった。

 無事に確認も終わって解放されるまで時間がかかったが、他は取り立てて何かがあるという程でもなかった。

 トオル達はその足で周旋屋へと向かっていった。



「よう、大変だったみたいだな」

 受付のおっさんが、帰ってきたトオル達に笑顔を向ける。

「誰のせいだよ」

 トオルはしっかりと言い返してやった。

 もとはと言えば、人手が足りないといってきたのはこのおっさんである。

 責任が全くないとは言わせたくなかった。

「まあ、元気だからいいじゃないか。

 モンスターを相手にするみたいに、怪我する危険があるわけじゃない」

 魔術の触媒欲しさにモンスターと戦っていた事をおっさんが知るよしもない。

 それは分かっているが、本当にむかついてしまう。

 また、死にはしないにしてもストレスのたまる仕事だった。

「それどころじゃなかったよ」

 言いたい事を極力押し殺して出て来たのはそんな言葉だった。

「だろうな。

 まあ、面倒な仕事だったろうし、それはご苦労さんと思うよ」

「分かってんなら支払いを多くしろ」

「出来たら苦労しないわな」

 だろうな、と思いつつもトオルは気がかりな事について確認をしておく。

「そっちは後で色々言わせてもらうけど。

 マサル達はどうしてる?」

「ああ、あいつらか。

 毎日マサト達が連れて行ってるようだぞ」

 それを聞いて懸念事項の一つが解消された。

 仕事に連れて行けない年少者をどうするか悩んでいたのだが。

 居合わせたマサトが、「だったらモンスター退治の手伝いに使わせてくれ」と申し出てくれた。

 戦闘には加わらず、解体作業だけやってもらえばいいという事だった。

 ありがたくその申し出を受け、マサルとコウジを預けた。

 更にはチトセとアツシまでお願いする事となった。

 不安がないではないが、トオルも町から離れるので、そうする以外になかった。

 周旋屋の仕事を回してもらうにしても、経験のない子供だとかなり難しい。

 トオルのように何かしら技能などがあれば対応も変わったが。

「ま、こっちは心配なさそうだな」

「ああ。マサトがいるからガキに絡む馬鹿もそんなにはいない」

「少しはいるってことか?」

「まあ、少しはな。

 あとでマサトににらまれるけどな」

 それは少しばかり怖い。

 熟練の戦士と喧嘩をしようなんて者は滅多にいないだろう。

 のほほんというか、穏和というか。

 激高した所を見た事はないが、あれでマサトは腕の確かな戦士である。

 そんな者を好んで敵に回そうなんて物好きはそう多くはないだろう。

「申し訳ないけど、もう少し預かっててもらうか」

「なんだ、まだ何かあるのか?」

「一応契約期間中だからね。

 戻って報告しなくちゃいけない事もあるし」

「そうか」

 それならばトオルを引き留める事はできない。

 周旋屋としては、期間中は契約先で仕事をさせるのも勤めである。

 余程の問題がないかぎりは。

「なら、がんばって仕事をしてきてくれ」

「分かってるよ。

 マサトとマサル達によろしく伝えておいてくれ」

「はいよ」



 行って帰っての往復で結局数日はかかってしまった。

 駅から駅へと馬車を乗り継いだのだが、やはりどうしても時間がかかってしまう。

 それでもトオルは、役所から渡された受理証書を持って帰らねばならない。

 これが終わるまでは仕事は完了しない。

 なるべく急いだ方がいいとも思ったので、多少強行軍で進んだ。



 帰還したトオルは、そのままトモノリの所へと向かった。

 執務中だったトモノリであるが、その手を休めて証書を受け取った。

「うん」

 内容を確認して頷く。

「これで少しはどうにかなるだろうな」

 内容がどういったものかは分からないが、そのとトモノリの言葉を信じたかった。

「ご苦労だった。

 おかげで助かるよ」

「それはどうも」

 礼の言葉に少し戸惑う。

 トオルのした事は誰にでも出来るようなものだ。

 特別ねぎらってもらうほどではない。

「それよりも、仕事の途中で申し訳ありません」

「ああ、気にしないでくれ。

 そっちはかなりはかどってるからね」

「そうなんですか?」

「ああ。

 言ってはなんだが、余計な仕事が増えたりしないからね。

 おかげで確実に仕事が進んでいる」

 奥方が連れてきた連中がいないからだろうか。

 だとしたら呆れるしかない。

 それでも、奥方がまだ残っているはずで、それが邪魔になってるのではと思ってしまう。

 カズトお坊ちゃんもしかり。

「まあ、それはそうなんだが」

 さすがにそこはどうにもならなくてね」

 トオルの指摘にトモノリは苦笑した。

 その二人がいなければ、もっと物事は上手く進む。

 分かってはいても、止めようがない。

 まさか牢屋に放り込むわけにもいかない。

「それでも、仕事が進むならって所ですね」

「仕事中に口出ししてこなければ、なお良いんだがな」

 それがあるから仕事が進まないのは誰もが理解していた。



 その夜。

「やってくれ」

「はい」

 トオルに頷いたサツキは、眠っている奥方に魔術を用いる。

 触媒を用いて最大限にまで効果を高めた『安息の闇』を。

 いつもどおり、薄い靄のような闇があらわれ、奥方を覆っていく。

「上手くいったっかな?」

「一応かかってるとは思うんです。

 でも、寝てる人にどれだけ効果があるか分からないですね」

「まあ、それでも多少は効果があればね」

 そう言ってトオルは扉を閉めて鍵をかけた。

 実際、効果があるかどうかは分からない。

 起きて活動してる者を眠りにつかせるのが基本である。

 既に寝てる対象への効果はさっぱり分からなかった。

 だが、丁度良いから試してみようと思った。

 もしかしたら、睡眠時間が延長されるかもしれないと思って。

「それじゃ次に行こう。

 今度はお坊ちゃんだ」

「はい」

 トオルについていくサツキは、どこか嬉々とした調子で従った。

 妙に協力的である。

(そんなに嫌ってたのかな)

 坊ちゃんの日頃の行いを考えれば、そうであっても不思議はなかった。



 翌日、二人は昼を過ぎても起きてこなかった。

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