表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生したけどやっぱり底辺ぽいので冒険者をやるしかなかった  作者: よぎそーと
その3 懐かしきというほどでもない故郷のためというわけでもなく
39/251

レベル38 何を優先するべきなんでしょうね

 翌日から行動がはじまった。

 執事やメイド長、下男への聞き込みから、奥方と坊ちゃんについての情報を得ていく。

 二人については、『最低最悪の屑』という事は分かったがそれ以上の事は不明なままである。

 普段、どんな事をしているのか、という基本的な事から、今まで何をしてきたのか、という部分についても。

 だが、四人はすぐに普段の行動について理解する事となる。

 何せ館のあちこちに出没し、余計な事を言ったり手を出したりしてくるのだ。

 仕事をしてる所にあらわれれば、

「こんな事もできないの」

と文句を言う。

 代わりに仕事をしようとすれば、余計に面倒を増やす。

 作業が終わった所にあらわれては、

「こんな中途半端な形で終わらすの」

と怒鳴りつける。

 それらのほとんどが見当違いのものなので、とりあう事も時間の無駄になる。

 しかし、言った事をやらないと延々と居座り続けるという面倒さ。

 相手が奥方だから、無視していく事も出来ない。

 台所に掃除してる場所に、帳簿を整理してる所にまで。

 それこそありとあらゆる所にやってきて文句をいう。

 それが仕事であるとでも思っているようだった。



 カズト坊ちゃんも似たようなもので、あちこちにあらわれては仕事の邪魔をする。

 下男が修復や修繕をやってる所にきては、道具を勝手に持ち出したりする。

 整理しておさめた帳簿や書類をひっくり返して散乱させる。

 特に被害を受けるのはメイド達で、体に触るセクハラというか痴漢行為は日常茶飯事だった。

 突き飛ばされた事もあってかレンには近寄ろうとしないが、大人しい性格のサツキは常に狙われる事となる。

 そのためレンはサツキと常に行動を共にする事となった。



 一緒に来ていた周旋屋の者達もそれは同じである。

 下男の所に入ったサトシと仲間は、いつも目を光らせる事となった。

 道具が盗まれないように、余計なところで破壊が行われないように。

 坊ちゃんが帰ってきてから、館のあちこちで何かしらが壊される事が続いていた。

 誰がやったのかは一目瞭然である。

 なので、常に坊ちゃんへの監視が必要となった。



 トオルも坊ちゃんが入ってこれないように注意をする必要があった。

 とにかく、作業中は部屋に鍵をかけて中に入れないようにし続けた。

 それでもドアを叩き、「開けろ、なんで閉じてる!」などと叫んだりしてくるが。

 この時面倒なのは、坊ちゃんだけでなく執事も相手にせねばならない事だった。

 入れれば作業が中断され、部屋の中を荒らされるのは分かっていても、ドアを開けようとする。

「やはり、主のお坊ちゃんだから」というのがその理由だった。

 だが、トオルはそんな執事を席に座らせ、

「仕事が先です」

と睨みつけていった。

 仕える身としては無視するわけにもいかないのかもしれないが、仕事を荒らされる理由にはならない。

 少なくともトオルは、自分がいる間は馬鹿坊ちゃんを仕事場に入れるような事はしなかった。

 …………目が届かない場合はさすがにどうしようもなかったが。



 そんなこんなで館の中で対立が発生していく。

 仕事をどうにか進めようとするトオル達と、何かにつけて邪魔をしてくる奥方達と。

 周旋屋から来た者達も含めて、仕事をしようとする者達は奥方達が何も出来ないようにあの手この手を使っていった。

 ここで面倒なのが執事やメイド長、下男であった。

 やはり仕える立場というのもあってか、何かにつけて奥方や坊ちゃんの言うことを聞こうとしてしまう。

 そんな事に付き合ってる事が時間の無駄になるのだが、そこはどうしようもないようだった。

 そこに留まらず、仕事をしようとするトオル達をたしなめようとする始末である。

「相手は主の家族なのだから」

 口癖のようにそう言い続けていた。

 その度にトオル達も、

「仕事はどうするんだ」

と言い返していたが。

 また、奥方や坊ちゃんに呼び止められていたりすれば、

「すいません、こちらの仕事の事でお聞きしたい事があります」

と強引にその場から連れ出す事もあった。

 そうでもしないと仕事が進まない。



 口でたしなめようとする領主のトモノリも、役に立たないという点では同じだった。

 その場に居合わせれば奥方や息子をたしなめるが、二人に余計な事をさせないようにする努力はしてない。

 起こった事への対処だけで終わってしまっている。

 二人のやってる事についてあやまりはするが、そもそもそんな事をしないで澄むように何かをするというわけではなかった。

 だからこそトオルは見切りをつけたのだが。



 そんな事をしてるうちに、トオル達は仕事を外される事となった。

 奥方が、自分の連れてきた者達をねじ込んで来たせいである。

「生意気にも口答えをするような者達などいりません!」

 ヒステリックに怒鳴る奥方に押し切られたトモノリや執事達は、理をもってそれに反論をしていった。

 しかし、どんな正論も理由も意味はない。

 人間は正道正当な考えよりも、勢いに負けるものである。

 どれほど弁舌がたとうと、どれだけ正論を述べようと全く意味が無い。

 それが役立つと思ってるのは、人の善意を信じてるからなのかもしれない。

 必要なのは怒鳴り声であり、相手を言いくるめるつじつまの合わない話しであり、よく回る舌と開閉する口を叩いて閉じる腕力である。

 今回も例に漏れず、トモノリ達は奥方に押し切られ、トオル達を仕事から外す事となった。

「すまんな、あんなに手伝ってくれてたのに」

 執事達は口々にそう言って頭を下げてきた。

 トオルは呆れて何もいえなかった。

 仕事より邪魔を選ぶというのが理解できなかった。

(まあ、いいか)

 それを選んだというならそれは相手の勝手であろう。

 ただ、それはそれで利点があった。

 今まで手がつけられなかった事に着手する時間が出来る。

(こっちも勝手にやらせてもらうか)



 次の日。

 トオル達は今までの仕事のかわりに、草刈りや芝刈りを命じられた。

 契約があるのですぐには追い出せないし、かといって何もさせないわけにはいかない。

 そんなこんなで、こんな仕事をやらされる事となった。

「しっかり働いてきなさい」

 勝ち誇った顔でそんな事を言う奥方と、その横でニヤニヤと笑ってる坊ちゃんを見て、「はいはい」と適当な返事をする。

 それだけで奥方はご立腹になったらしく、何やら怒鳴り声をあげていった。

 相手にしてるほど暇もないので、トオルはさっさと外へと向かい、必要な道具を回収していく。

 草刈り芝刈りに必要な道具を大八車に乗せ、目的地へと向かっていく。

 指定された領主の館の庭ではなく。

 そこを通り過ぎて更に奥地へ。

 モンスターが出没するので危険と言われる方へと進んでいった。

 ある程度まで踏み込んだ所で、大きく息を吐く。

「…………そんじゃやるか」

 言いながら大八車にのせていた仕事道具────マシェットと盾と鉄板付き革上着を取り出す。

 ここ最近身につけてなかったので軽く懐かしさをおぼえた。

 サトシも、槍を手に取る。

 サツキも魔術を発動させるのに必要な道具を取り出し、レンも細長い紐とナイフを取り出す。

「よーし、やるぞー!」

 やたらと張り切ってるレンは、石を何個か詰めた袋を腰にぶら下げていく。

 そんな三人にトオルは、気持ちと顔を引き締めてスコップを手に取る。

「このあたりならモンスターも出て来るだろう。

 いつもどおり妖ネズミだろうけど、気を抜かないように」

「はいよ」

「分かりました」

「じゃ、さっさとやろう」

 四人はいつも通りのモンスター退治をはじめようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ