レベル171-2 そんなつもりは無くても、こんな事になってきているようです
人が増えた事で出来そうな事も増えて来ている。
近隣から受け入れる事にしていた兵士見習い達であるが、わざわざ受け入れる必要もなくなっていく。
今までは人手が足りないからまとめて受け入れていたが、その理由が解消されている。
もうちょっと先の事になるが、レベル2が増えたら、トモノリの領地の近隣にも人を派遣出来るようになる。
そうなれば、宿舎の容量に左右されずに済む。
派遣される順番が後になりそうな所からは兵士見習いを受け入れるが、これで順番待ちは更に解消される。
町と村で受け入れを分散した事に加え、これで問題は更に解消されるようになった。
とはいえ、レベルアップを考えるとそう頻繁に派遣するわけにもいかない。
未だに経験値がどういった形で入ってくるのかも分かってない。
そもそも経験値という考え方で良いのかも分からないが、モンスターを多く倒せばその可能性は上がる。
これまでの体験や経験からして、そこは揺るぎがないと思われた。
とりあえず継続的な活動がレベルアップの近道である。
活動の断絶があれば、その分レベルアップは遅れる。
休憩休息は別としても、余所への派遣となると移動時間などでどうしても間が空いてしまう。
それがレベルアップを妨げる事になる。
誰を派遣するのかは悩む所である。
それでも、派遣はしていくつもりであった。
「それで素材が増えるって事か」
引き取った素材を見て行商人はため息を吐く。
「今でも限界だってのに」
「すんません」
「いや、売り物が増えるのはありがたいんだが……」
積み込んでる最中の荷馬車に目をやる。
「こりゃ、どうにもならんな」
「まずいですか?」
「ああ。
また素材が増えるんだろ?
だったら、もう今のままじゃ運ぶ事ができない」
目の前の問題に行商人はそう言うしかなかった。
各地の村に指導員を派遣する事になれば、当然ながら素材がこれまでより格段に増える事になる。
それらの買い取りもどうかと打診してみたところ、そのような返事になった。
扱える数が増えるのは行商人も喜んではいるのだが、今後更に増えるとなると問題も多くなる。
今でも買い取る量はかなり限界が来ている。
そこに加えて更に量が増えるとなれば、もう行商人一人では手におえない。
少なくとも、あちこちの村に回収しに行くという事は出来ない。
そんな余裕は無い。
町とトモノリの村の往復だけで手がいっぱいなのだ。
余所まで巡ってる余裕はない。
「そこは、村のほうでこっちにもって来てもらわないと」
「人を増やすってわけにはいかないか」
「いきなりそんな事はできんよ。
計算が出来て、交渉が出来なきゃならんし。
何より、信用が出来なければどうにもならん」
「金をチョロまかす奴とかが怖い?」
「ああ。
持ち逃げする奴なんて珍しくもない」
大量の金が目の前にあれば、それも考えてしまうのだろう。
そうなれば訴え出られて各所に手配されるのだが。
治安維持のための警察機構などが万全とはいいがたいこの世界、それも限界がある。
逃げ切ってしまう者もそれなりにいるのだ。
「まあ、人は増やすつもりだが。
さすがに村を巡るまでにはいかん」
こればかりはトオルにどうする事も出来ない事だった。
「村の方からこっちに持ってきてくれるなら、どうにか出来るがな」
行商人としては、それが出来るなら買い取りは可能だという。
ようは、トモノリの村から更に出歩く手間をかけられないというだけなのだ。
トモノリの村まで持ってきてくれるなら、買い取りも考える事が出来る。
運搬の手間を村の方で受け持ってくれるなら、行商人に不都合はない。
「それでも、人を増やさないといかんがな」
トモノリの村と町の間での運搬が頻繁になる。
対応出来るだけの人数を揃えないといけない。
「でも、毎週一回じゃ大変なんじゃ」
今のように週一回で運ぶのでは、かなり多くの人間が必要になる。
それだけの手間をかけるのは大変な労力にると思えた。
「まあ、これから毎日だからな」
予想外の言葉が返ってくる。
「毎日?」
「ああ。週一回、日にちを決めて受け取るんじゃ色々手間だ。
それなら毎日受け付けて、その都度発送した方がいい」
「でも、週一回しか来てないのに、そんな事出来るの?」
「まあ、何とかなるだろ」
肩をすくめて行商人は答えた。
「ここに店を開くことが出来ればな」
確かにその通りであろう。
店を構え、そこで買い取りをするなら、決まった日に集まる必要はない。
村の方から都合の良いときに物を運び、店に持っていけば良い。
店の方もある程度分散してくれれば、運び出す手間も省ける。
維持や運営の手間がかかるし、それはそれで手間も面倒もかかる。
だが、この先増えるであろう取り扱いの量を考えれば、そうせざるえなくもなるだろう。
トオルとしても助かる。
素材を自分達で管理するのも手間になってきている。
行商人に売り払う事が出来れば、それも軽減出来る。
是非ともお願いしたかっった。
とはいえ、店を開くのも簡単ではない。
店舗や在庫の為の倉庫も必要だし、運転資金も用意しなくてはいけない。
従業員も必要だし、毎日の出納を確認し、定期的な棚卸しもやらねばならなくなる。
一定以上の売り上げが確保出来ないなら、負担ばかりが大きくなってしまう。
また、場所を確保せねばならない。
トモノリの領地内なので、当然ながらトモノリの許可が必要になる。
土地の入手、あるいは賃貸による場所の確保。
何より一番の問題は、もっと別の所にある。
「商売の許可っておりるもんなのか?」
「はい?」
予想外の事を聞かれて、トオルは驚くしかなかった。
「許可ってなんの?」
「商売のだ。
ここの領主様が認可を出してくれなきゃどうにもならん」
それでようやく分かった。
この世界、商売にも免許が必要になる。
自動車免許の商売版と考えれば良いかもしれなかった。
「それはどうかな」
そういった事に無頓着だったし、関係もしてこなかったので全く分からない部分だった。
「一度聞いてみないと」
「頼む」
なぜか行商人に頭を下げられた。
「え?」
「領主様に顔が利くのはお前くらいしか知らん。
ちょっと、聞いてきてくれ」
「はい?」
色々と予想外な事になってしまった。
続きを明日の7:00に投稿予定




