レベル171-1 そんなつもりは無くても、こんな事になってきているようです
人の増大は別の所にも余波を与えていた。
トオル達の一団だけでも三十人・四十人と増えてきている。
十月にトモノリの領地に一部を移動させたが、その後も増加を続け、こんな人数になっていた。
加えて各地から集まる兵士見習いが数十人はいる。
人口一千人余りの町で、これは無視できない数である。
一時的な逗留がほとんどであるが、経済的な効果は大きい。
何せ、総勢で一百人に届く。
町の人口の一割だ。
逗留するだけでも、宿泊に食事で金が落ちる。
入手してくるモンスター素材と、それと引き替えに手に入れた金も利益となる。
町の周辺限定であるが、モンスターによる被害の減少にも多少はつながる。
とりあえず利益という事で言えば、町は冒険者による恩恵を受けていた。
商人達も安定して大量供給される素材に喜んでいた。
今までなかなか入手が出来なかったものである。
妖ネズミからとれる素材であっても、それらを倒してわざわざ持ち込んでくる者はいない。
簡単に倒せると言っても、安い素材である。
わざわざ狙って手に入れてくる者などほとんどいなかった。
それが解消された事で消耗品として扱えるようになった。
町に居る魔術師や冒険者に確実に売れる。
安いだけあって気軽に消費出来るし、使えば仕事の効率や効果が上がる。
潜在的にあった需要に供給が応えた形になる。
買う側も、在庫がさほどない事を知っていたため、手元にある素材をなるべく使わず取っておく事が多かった。
その心配が無くなったため、消費量は一気に上がった。
魔術師が少ないのでそれでも限界があるが、売れる数は今まで以上である。
新たな商品が増えれば儲けを出す道が増える。
そこが商人にとってありがたい所だった。
末端の消費者達も当然ながら喜んでいる。
危険や労力の割に得るものが少ないと思われてた弱小モンスター退治への見方も変わる。
数多く倒せばそれなりの成果は上がるものだと。
戦闘系技術レベルが低い者達にとっては、新たな可能性になった。
四千銅貨程度の日当よりも実入りのよい仕事は魅力的である。
潜在的失業者と言える低収入・貧困層にとって、これは起死回生の機会にも見えた。
だからこそ、他に道のない者達がやってきている。
奉公に出て来たはいいが、働き先が潰れた者。
兵役などから帰ってきたが潰しの効く技術がなくて立ち往生してる者。
さすがにそれほど多くはないが、村がモンスターに襲われて壊滅、行く当てもなく流れ着いてきた者。
周旋屋に登録してるそういった者達が、今より良い収入を求めていた。
戦闘技術があり、護衛やモンスター退治の依頼で食ってた者達も、空いてる時間の過ごし方として考え始めている。
それらの受け入れをレンが、やり方をサトシが示しているようなものだ。
安物として見向きもしなかったものが、今までと違う価値を持ち始めていた。
直接関わらない者達にもそれなりの影響はあった。
今まで周旋屋で扱ってた仕事が余るようになったのである。
作業員として働いていた者達で、体力に自信のある者がモンスター退治に赴いていった。
結果として人手が不足する。
その為、残って仕事を受けていた者達への需要が高まり、幾らか賃金が上昇していった。
余り気味だった人手が減っていったのだから当然の流れだろう。
おかげで人手を確保する為に周旋屋も近郊の村から人を集め始めた。
それは商会や工房も同じで、奉公人を求め始めた。
動きとしては少しずつではあるが、町にもそういった変化があらわれ始めていた。
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