レベル170-1 少しずつ、本当に少しずつなんですよ、この歩み
「何もこっちで無理する必要もないですし。
町まで出る余裕がないなら仕方ないですが」
今だからそういう選択肢もある。
収容能力も町の方が高い。
周旋屋に寝泊まりするのは難しいが、宿も揃っている。
あとは冒険者達と一緒に活動してもらえばよい。
仕事となるので、周旋屋を仲介してもらう必要があるが、それくらいなら大した手間にはならないだろう。
「安上がりにもなりますし」
小屋を建てるより手軽ではある。
宿泊費用など、小屋を建築する事に比べれば何ほどでもない。
「まずはそちらをすすめてみてください」
その上で、どうしても余裕のない者達を、トモノリの領地で受け入れればよいと思った。
その一方で、トモノリの領地で受け入れるのも魅力はある。
食費などはかかるが、宿泊費がかからない。
多少の金は維持費としてとるにしても、町などで泊まり込むよりは安い。
財政に余裕が無いならこちらで受け入れるしかないだろう。
それと、トモノリの領地の近くにいる者達を対象にしていきたかった。
町の方が近いなら、そちらに行った方が効率的である。
どちらが良いかは相手に決めてもらうしかないが、トオルの方からはそういった提案をしていくつもりだった。
最初の出資者達は優先して受け入れていきたいが、それも状況次第となる。
金を出した分くらいは優先権をもたせないと、何の為の出資だったのかと思われかねない。
そうしたら次はない。
ある程度はごまをすっておくのも、今後の展開のために必要になる。
それを厭うつもりはなかった。
「では、そう伝えておく」
同意してトモノリはそう言ってくれた。
「これで催促も落ち着けばいいんですが」
「まあ、そのうち無くなるだろう。
それまでの辛抱だ」
「疲れますね」
「ああ、早く終わってほしいと思うよ」
受け入れるトモノリにも多少の負担はある。
トオル達とは違った形での苦労もあるのだろう。
他人事とは思えなかった。
(なるべく町の方で受け入れるようにしていこう)
相手があっての事なのでそうそう上手くはいかないが、なるべくそうしようと思った。
(しかし、町に展開してから楽になってもいるな)
館から家に戻る途中、そんな事を考える。
収容能力に余裕が出たおかげで、人数の拡大に余裕がもてるようになった。
周旋屋の宿泊施設も限界があるので、無制限というわけにはいかない。
それでも、今のトモノリの領地よりは数多く引き受けられる。
居住性は無いに等しいが、寝床があるだけマシというもの。
トオルにはそれがありがたい。
まだまだ続いてる参加者の増加に対応出来る。
依頼の方も順調に入ってきており、そちらの方も忙しい。
レベル2に上がってきた者も増えてるが、まだまだ対応しきれてない。
派遣先での態度や集団としてのまとまりなどが心許ない。
今度町に赴く予定なので、その時にその対応を求める事にするつもりだった。
最低限気をつけるべき、身につけるべき振る舞いについてを。
また、依頼を受けた村からも、苦情があれば聞き取るつもりでもいる。
聞きたくない事ではあるが、もし何かしら悪さをしてたならそれを糾弾しなくてはならない。
悪い事を黙認したり見逃すわけにはいかない。
それが締め付けとなるのはやむをえない。
仲間を大事にしたいが、事の善悪をわきまえた上でないと意味が無い。
自分達だけで仲良くやるのであれば、悪党となんら変わらないだろう。
そこから、各地に出向いた際に求められる姿勢を見いだしてもらわねばならない。
(本格的に、礼儀なんかを学ばせるかな)
一緒に行動させる者に一人はそういう者がいても良いかもしれない。
大げさに言えば、外交官のような者が。
もっとくだいて言えば、営業のようなものになるだろうか。
そう言う者も、相手との間の緩衝材として必要かもしれない。
(皆が納得すりゃいいけど)
さすがに抵抗はあると思えた。
面倒なしきたりをおぼえたくないのは分かる。
しかし、それで済ますわけにもいかない。
(上手くやらないと)
どうやって他の者にすすめようかを考えていく。
家に入るまでそんな事ばかりを考えていた。
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