レベル169 どこにどう割り振るかを選べるから助かる
「三月ですか」
いつも通りに今後について話し合ってる中で、それを告げられた。
「随分先ですね」
「余裕があるのがその時期くらいだからな。
君だって分かるだろ」
「それはそうですけど」
自分自身がそうだったのだから言いたい事は分かる。
「準備も必要だからな。
連絡もとりあわねばならん。
招待しなけりゃならん者達もいる。
それらを調整してくとなると、三月あたりが無難なんだ」
「なるほど」
貴族だから色々としがらみもあるのだろう。
トオルの時以上に手間がかかってしまうのは簡単に予想ができる。
お祝い事ではあるが、手間を考えれば喜んでばかりもいられない。
「でも、ようやく結婚ですか」
感慨深いものがある。
「こっちは再婚だがな」
「いえ、前回は無かった事にしましょう。
勘定に入れない方向で」
トモノリもトオルも苦笑しながらそう言った。
先方の意志の確認と、同意を得た事で縁談は話しが進んだ。
躍進してるように見えるトモノリとの話に、相手の家も乗り気だったのが幸いしていた。
結婚する当事者となる相手も、異を唱えたりはしなかったという。
トントン拍子というほどではないかもしれないが、両者と両家は間を縮めていった。
貴族の事、両者の気持ちだけというわけではないだろうが、双方にとって良い出来事になるよう願った。
それはそれとして気になる事がある。
「しかし、目出度い話しですが、直接関係のない自分が聞いても良かったんですか?
村長さん達とかに先に話すべきだったんでは」
そもそもとして、トオルにわざわざ話す事なのだろうかとも思う。
もちろんお祝いをしたい気持ちはあるが、所詮は平民庶民である。
わざわざ説明をする必要がない。
少なくともトオルはそう考えてしまう。
だが、トモノリの考えは違う。
「それがそうでもなくてな」
とトオルの考えを制止する。
「こっちで訓練をしていた者達が各地で頑張ってるようでな。
おかげで要望がひっきりなしだ」
訓練を終えて戻った兵士達は、おぼえた通りのやり方で早速モンスター退治を始めた。
その結果、目に見えてモンスターによる被害が減少。
素材の売却益もあって、新たな収入源にもなっていっている。
トモノリの所で起こった事が、別の場所でも同じように発生していた。
その事を聞いた他の貴族達は、以前よりも熱心に兵士の養成に注目するようになっていった。
トモノリの所だけであるならば、まぐれであったと考えられる。
また、過剰に言い張ってるだけという事も考えられる。
しかし、二カ所で同様の事が起こってるとなると信憑性が上がる。
おかげで、訓練の順番待ちとなってしまっている。
最初に訓練を受けにきたご婦人の家も例外ではない。
既に訓練を終えた者達を抱えてるが、更に人員を増強しようとしている。
ただ、自分の所で訓練をする余裕がない。
兵士達も、やり方は分かってるがそれを教えるのは覚束ない。
それならば、短期間で良いから訓練を任せた方が手軽で安くつく。
ご婦人の人柄を見込み、縁を結べないかとトモノリが接近した事で相手はそういった話も持ち出してきていた。
「こっちも余裕が無いって言ったんだがな」
「押し切られたんですか?」
「いや。
さすがに事情を話せば理解はしてくれた」
「それは、ありがたいですが……それで終わりってわけではないんですね?」
「そうだ」
肩をすくめて頷いた。
「だが、それなら費用は出すって言われてな。
受け入れる余地を増やしてくれないかと言われてる」
「あらまあ……」
ありがたい申し出ではある。
しかし、そこまでする必要があるのかとも思う。
「いくら何でも、やり過ぎじゃないですかね」
「そう思うんだがな。
他の家もそれならって言い出してて」
「安くはないんですけどね」
「皆で出し合うつもりらしい」
それだけ切羽詰まってるのだろう。
だが、何も無理して村に受け入れる必要もない。
「いっそ、町で受け入れませんかね」
今ならその方法がある。
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