レベル166 考えてみれば、これでも稼げてる方なんですよね
森と言っても、それほど密集して木々が生い茂ってるわけではない。
間には木々が生えてない平坦な部分が幾つかあるという。
とっていも十メートル四方程度の場所が点在してるというくらいである。
開けた空間というには少しばかり狭いかもしれない。
また、そこまで開けてなくても、茂みや藪といった程度の所もある。
行く手を阻んでいるのは確かだが、鬱蒼としてるわけではない。
そういった場所を経由して、可能な限り作業の負担を減らしていきたかった。
作業を進めるための資材置き場なども必要になる。
開けた場所があれば、それらを用意するためにわざわざ広い場所を切り開かなくて済む。
そのためにも、どこがどうなってるのかを調べる必要がある。
ただ、いつもの通りに問題がたちはだかる。
レベルと金だ。
「どうにもなんねえな、これは」
現在のレベルではネズミを倒すのが限界である。
順調にいっても、来年まで妖犬はお預けだった。
稼ぎの落ち込みはどうしようもない。
レベルの高い者が揃ってくるまでこの状態は続く。
来年の夏までには解消されるが、それまではどうにもならない。
それでも考える事だけはやめない。
それしか出来ない。
他にやる事がない以上、トオルに選択肢はない。
妖ネズミの稼ぎでは資金を捻出する事もままならない。
最低限の生活は出来るが、それ以上は難しい。
今も少しずつ皆から徴収はしてるが、残念ながらさほど増えてない。
小屋の購入で支払った分が響いてる。
また、トモノリに費用を立て替えてもらってるという形なので、今も少しずつ返済している。
おかげで一団の運営費はなかなか貯まらない。
本当に来年になるまで大きな動きは出来なくなっていた。
こんな状態で心配するのは、人が散る事である。
特に引きつけるような要素のない場合、大切なのは夢や希望だったりする。
将来ここまで行けるという明確な姿を示す必要があった。
強力なモンスターを倒して稼ぎを上げる事が出来れば良いのだが。
今のところ、そういった目立つような功績はない。
それがやる気を消滅させるのではないかと危惧していた。
幸いな事にそれは現在のところ杞憂になっている。
新人の誰もが、ネズミを倒す事で得られる報酬に満足していた。
トオルとしては全然足りないと思うのだが、彼らからすればそうでもない。
やはり、これでも稼ぎは良い方なのだ。
一日で六千銅貨あたりまで稼げるというのは大きい。
また、村に来てる者達の大半が、寝床と食事に金がかからないのを喜んでいる。
素材売却で得られる金は町の方が高いが、手元に残る分は大きい。
それらが彼らを引きつけている理由になっている。
町の方からの連絡によれば、参加者も確実に増加してるという。
今後も受け入れ続ければ、求める人数に到達出来ると思えた。
とりあえず五十人。
出来れば一百人以上。
一百二十人ほどは欲しいと思っている。
レベルも高くないとどうにもならないが、まずは人数である。
おそらく、来年辺りにはどうにかなると思えた。
だが、どれだけ順調でも危険と隣り合わせでもある。
簡単にできるだけに、自分達でもやれるんじゃないかと考える者も出て来るだろう。
ある程度の人数がいれば確かに簡単にできる。
ならば、自分達だけでやっていった方がいいんじゃないかとも思うだろう。
ただ、そこで留まらせないためにも、何か次の一手が必要だった。
分かりやすい何かが。
(さて、どうするか)
なるべく派手で、宣伝効果も高い事が望ましい。
成果がはっきり分かり、自分もそこを目指したいと思うようなものが。
それでいて、失敗の可能性の低いもの。
(あるわけないか)
楽天的な事を考えすぎたと自分でも思った。
だが、実現するかどうかはともかく、頭だけは使っていく。
どんな荒唐無稽な事でも、考えてるだけなら誰にも損害を与えないのだから。
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